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【なぜノルウェーと日本の育児政策は異なる発展を遂げ、どのように「男女平等」と結びついてきたのか?】本研究は、この問いに答えるために、ノルウェーと日本の育児政策の歴史的変遷を比較し、その背後にある「男女平等」の到達点を明らかにすることを目的としました。従来は「北欧モデル」として一括りにされがちなノルウェーを独立に捉え、日本との共通点・相違点を分析しました。方法としては、両国における女性運動、福祉国家形成、少子化・労働力不足といった社会状況の変化に注目し、政策史を整理しました。 その結果、ノルウェーでは20世紀初頭から母性を強調する女性運動が展開し、戦後も児童手当や育児休暇は「母親」を基盤に発展しました。しかし1960年代以降の福祉国家拡大による労働力不足を契機に、公的保育園や父親の育児休暇(ダディ・クオータ)が急速に整備され、育児の社会化と男女平等が進展しました。一方、日本でも戦後は男女平等が憲法で保障されたものの、1950年代以降「母性」や「三歳児神話」が強調され、育児は母親の役割とされ続けました。政策が本格化したのは1990年代の「1.57ショック」以降であり、少子化への危機感から育児支援が拡充しましたが、高齢者対策が優先され十分とはいえませんでした。 以上より、両国に共通するのは「男女平等」そのものからではなく、労働力不足や少子化といった外在的社会変化が育児政策を推進した点です。ただし、ノルウェーでは労働市場の即時的要請が迅速な制度改革を導いたのに対し、日本では少子化の影響が直ちに表れにくく、育児政策は後手に回ったことが明らかになりました。本研究は、社会的課題が「男女平等」の進展を左右する重要な契機となることを示しました。
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