14 勝者は一人

 俺の【強化付与】は魔術ではなく、『天』と呼ばれる根源的な存在の力――。

 その説明を受け、俺は以前に燐光竜帝剣を取りに行ったときのことを思い出した。


 あのとき剣が封じられていた遺跡のモンスターはこう言っていたんだ。




『ば、馬鹿な……お前の力は人間に許された領域を……こ、超えている……神や魔王の領域に……ぐうっ……』




 神や魔王の領域に到達した力。

 あるいはそれを超える領域にある力。


 それが『天の遺産』ということなのか?


「どうだ? 楽しくなってきたんじゃないか、レイン?」


 ゴルドレッドが両手を掲げ、芝居がかった様子で告げた。


「俺たちの力は人知をはるかに超えている。この力があれば、なんでもできるだろう。王になることだって容易いぞ。ん?」

「俺は……国をどうこうとか、そんな大それたことを考えたことはない。望んだことも――」


 そう、俺が望むのはもっと小さなことだ。


「『青の水晶』の仲間たちと――あの気のいい人たちと一緒に冒険ができれば、それで十分満足だ。平和に、穏やかに、ささやかな幸せを得られたら、それだけで満たされる」

「君は野心を持たないのだな。俺は違う」


 ゴルドレッドが言った。


「誰よりも強大な力を得たのは、俺自身の運命だと感じている。その運命を受け入れ、従い、俺はこの力をさらに極めたい――」

「極める……?」

「『星の心臓』にたどり着けば、それが叶う。今のままの『天の遺産』でも、まさしく神や魔王の領域といっていい力を持つが……その『さらに先』の領域が存在するのだ」


 ゴルドレッドの目がぎらついた。


「だから、あんたたちは『星の心臓』を目指しているわけか? もっと大きな力を得るために――」

「そうだ。力を求める理由はそれぞれだが、目的は一つ。最初に『星の心臓』にたどり着くこと」


 俺の問いにゴルドレッドがうなずく。


「力を得られるのは、『星の心臓』に最初にたどり着いた一人だけだからな」

「一人だけ……」

「俺は、星からそう聞かされた。この星は随分と弱っている。力を与えられるのは一人が限度だと――」

「弱っている……?」


 俺は眉を寄せた。


「だからこそ、ここから先は競争であり――ルール無用の殺し合いと知れ」


 ごくりと喉を鳴らす俺。


 周囲の空気が、重さを増した気がする。


「俺は、俺を虐げた者を許さない。追放された屈辱を忘れない。今までの人生の汚点すべてを覆すために――俺は誰よりも上に立つ。そのためなら他の保持者との殺し合いも辞さないさ」


 こいつは、危険だ。


 最初は知性的で理性的な人間だと感じた。

 実際、高い知性や理性を持ち合わせているのかもしれない。


 けれど――その内面には、おぞましい闇を飼っている。


 俺とは、人生において求めるものも、望むものも全然違うんだろう。


「保持者同士の争いを経て、ただ一人の勝者は『星の心臓』から力を得て、『天の遺産』が更なる段階へと引き上げられる」


 ゴルドレッドは謡うように告げた。


「おそらくそれは、『天の遺産』の最終段階だ――」


 ごごごご……。


 ふいに、周囲に震動が走った。


 地震だろうか?


「そろそろ『時間制限』も近いか……さて、と。名残惜しいが講義はここで終わりだ、レイン」


 ゴルドレッドが言った。


「そろそろ決着をつけるとしようか。俺か、君か。『星の心臓』に行くためには、他の遺産保持者を脱落させていくしかない。『星の心臓』の正確な場所をつかむまでは、他の遺産保持者と協力していたが……それも、もう必要ない」

「えっ」


 どういう意味だ……?


「――『星の心臓』の場所をつかんだ、っていうのか?」

「君たちのおかげでつかめるのだ、レイン――そして、この後はヴィクターの元へ行けば、な」


 ゴルドレッドがニヤリと笑う。


「後は――他の『天の遺産』保持者をすべて打ち倒し、俺が『星の心臓』に到達する」

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