目に「歯」を移植する手術に成功した男性、20年ぶりに視力を取り戻す

削ったうえでプラスチック製光学シリンダーを埋め込んだ犬歯/Courtesy Greg Moloney

削ったうえでプラスチック製光学シリンダーを埋め込んだ犬歯/Courtesy Greg Moloney

目に歯を

健康な目であれば、角膜は風よけのように働き、光は水晶体、網膜へと透過し、そこで電気信号に変換されて脳へと送られる。角膜の透明性は、適切なうるおいと角膜周辺の幹細胞による安定した細胞再生に依存している。

角膜が永久的に濁り、角膜移植が拒絶される場合にトゥース・イン・アイ手術が適用されることがある。

人間の歯の中で最も長い犬歯を、歯の周囲の薄い骨膜とともにあごから抜き取る。この骨膜は歯を支え、血液を供給し、歯を生き続けさせる。歯を4ミリの厚さに削ったら、プラスチック製の光学シリンダーを固定するための穴を開けるという。

レンズを埋め込んだ歯を、患者の頬やまぶたに数カ月間埋め込むと、周囲に軟組織が成長する。

「歯は、焦点を合わせるための要素を固定するのに理想的な構造をしている」とモロニー氏は話す。「硬く、剛性があり、劣悪な環境に耐えることができるうえ、体は自分の一部なので受け入れる」

次の段階では、患者の眼球前面に穴を開け、この新たな複合物のためのスペースを作る。

歯とレンズの複合物が生体組織と一体化したら、手術で眼球前面に取り付け、損傷した角膜の機能と入れ替える。患者の口腔内の組織を用いて歯の部分を覆うことで、新たな角膜はピンク色になる。角膜の後ろにある網膜と視神経が健全であれば、光は透明なレンズを通って網膜に到達し、視覚を取り戻すことができる。

モロニー氏によると、この手術を受ける患者は2通りいるという。チャップマンさんのように他のあらゆる処置を試した人、そして元の病気の影響が重く、医師が最初から他の治療法が効かないと分かっている人だ。

手術は2段階を通じて12時間以上かかることもある。まれで、世界でもほんの一握りの専門医しか行っていない。しかし、条件に当てはまる人なら、成功すればほぼ正常な視力を取り戻せる。

チャップマンさんは2月に抜歯し、6月に眼に埋め込んだ。最後の手術は8月5日に行われ、レンズをまっすぐにして視覚のゆがみを矯正した。

人とのつながりを取り戻す

ブレント・チャップマンさんと父のフィル・チャップマンさん。左がグレッグ・モロニー医師/Courtesy Ann Gibbon
ブレント・チャップマンさんと父のフィル・チャップマンさん。左がグレッグ・モロニー医師/Courtesy Ann Gibbon

チャップマンさんの今の視力は20/30だ。つまり、視力の正常な人が30フィート(約9メートル)の距離で見えるものを、20フィート(約6メートル)の距離で見ることができる。

手術後のチャップマンさんが16階にあるモロニー氏のオフィスから最初に目にしたのは、街全体の景観だった。「モロニー先生と初めて目を合わせたとき、二人とも感極まった。20年も目を合わせることができていなかったから」

チャップマンさんは今、旅行を楽しみにしている。一番行きたい場所は日本だが、「とにかく世界を見て、すべてを吸収したい」と思っているという。

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