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【中間層の婚姻激減の真相】中央値の年収では結婚できなくなった日本「若者から安心を奪い続けたツケ」

荒川和久独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター
提供:イメージマート

急激な婚姻減の要因

婚姻減と言われているが、その要因のほぼ全てが年収中間層帯の婚姻減であることに尽き、そして、その現象は2013年以降のここ約10年間で急速に進んだことは、繰り返しお伝えしてきた。

逆に言えば、2003年から2013年の10年間では、そこまで中間層の婚姻減はなかったのである。

参照→「結婚もできない、子どもも持てない」的外れな少子化対策の果てに生まれた「600万円の壁」

なぜ、この10年間でそうなってしまったか。

この期間にあったコロナ禍という特殊事情もあるのだが、それを除外したとしても、確実に起きたのが「結婚に必要な年収意識のインフレ」である。

2013年頃までは、若者自身が「年収300万円台あれば結婚できる」と思っていたし、実際結婚していた。20-30代の男性の結婚は300万円台はもっとも多かった。そのため「結婚年収300万円の壁」と言われていたものである。

ところが、2014年以降、「結婚に必要な年収意識」が急激にインフレし、2024年時点では若者は「約540万円ないと結婚できない」という意識に変わってしまっている。

実態として若者の年収が増えているならともかく、この10年で300万円台から500万円台に増えているわけではない。実態が伴わないのに、意識だけが高騰しているのだから婚姻が激減するのは当然なのである。

中央値年収における未婚率

具体的に数字を見ていこう。

就業構造基本調査から30~39歳の有業男性全体の未婚率を見ると、2012年では37%だったが、2022年は41%へと上昇している。10年間で4%の増加である。

それでも、過半数は39歳までに結婚しているじゃないかと思われるかもしれないが、これは年収関係なく全体の数字である。

周知の通り、男性の場合、年収が低ければ低いほど未婚率は高まる。年収700万円以上の男性の未婚率は2割を切るが、年収200万未満では7割を超える。

よって、未婚男性の中央値の年収で未婚率がどれくらいあるかを計算してみることにする。平均値だと一部の高年収層に全体が引っ張られるので中央値年収における未婚率を計算する。

それによれば、中央値年収未婚率は、2012年48%だったものが、2022年には55%へと7%も上昇していた。前述した全体の未婚率と比べれば、全体より中央値における未婚率の上昇の方が大きい。

言いかえれば、2012年頃までは中央値の年収があれば、半分以上の52%は結婚できていたのに、2022年には45%しか結婚できなくなっている。つまり、結婚の年収ハードルがあがっているということになる。

都道府県別の10年比較

さらに、都道府県別に、中央値年収未婚率を2012年と2022年で比較してみる。

絶対値では、東京と地方とでそもそもの年収分布が異なるが、それぞれの地域での中央値年収での未婚率であれば比較が可能である。

結果を見ると、いかにこの10年間で「全国的に中央値年収では結婚できなくなった」かが一目瞭然である。

図表上、白い部分が中央値未婚率40-50%未満、赤が50%超だが、この10年間で全国的に白から真っ赤に変わっていることがわかる。青い40%未満は2022年には消滅してしまった。

2012年時点では、中央値未婚率50%未満が47都道府県中30もあったが、2022年にはわずか7つに減少。かわって、未婚率60%超が2012年のゼロから2022年には14に増えた。

元々、東京圏や愛知、大阪などの大都市では、中央値年収では結婚ができない問題があったが、その傾向が地方に波及したと言えるだろう。特に、宮城、福井、滋賀、徳島などは10年前より中央値未婚率は20%ポイントも大幅に増えた。

中央値の年収で未婚率が50%を超えるのが、この10年で2.4倍にも増えた。

かつて結婚できていた中央値年収では結婚が難しくなったことを如実に示している。

しかし、これは結構深刻で、中央値とは全体の真ん中である。その年収を境に半々に人口が分かれるのだが、中央値で結婚できないのなら、それはやがて男の生涯未婚率50%になりかねないということだ(2020年時点で約28%)。

給料あがっても使えるお金が増えない

決して世の未婚男性の中央値年収が増えていないわけではない。

2012-2022年比で全国的には13%も増えている。しかし、昨今の物価高などを勘案して、物価指数を考慮するとわずか5%弱しか増えていないことにもなる。加えて、税・社保料などの負担はこの期間2%程度チマチマ増えている。この期間に消費税も5%あがっている。なんだかんだ「使えるお金は10年前とたいして増えていない」のだ。

提供:イメージマート

若者が殊更「コスパ」などという事に対し「価値観の変化だ」などと悠長なことを言う大人がいるが、若者がそういう意識にならざるを得ないほど経済的不安を抱えているという視点が必要だ。

本来、中央値の年収があれば不安なく結婚できていた若者を「それでは足りない」という意識にさせてしまったのは「給料増えても生活が楽にならない」という困惑・混乱の結果だろう。

手持ちのお金は全然増えていないのに、「結婚の値札」だけはどんどん高騰している。これでは、「結婚は手の届かない贅沢品」とみなされ、そもそも検討することすらしなくなる。「望んでもどうせ無理だ」という諦観である。

いずれにせよ、「結婚はしない」という選択的非婚は男女ともに20%になっている。これらの選択は尊重するべきだが、一方で「結婚したいのにできない」という不本意未婚がもはや6割にならんとする状況は異常である。

奪い続ける政府

政府は賃上げとしか言わないが、賃上げされてもその分税・社保料などの負担で巻き上げられるのでは意味がない。給付もその分後で巻き上げられるのであれば「配らなくていいから取るな」と言いたくもなるだろう。

2026年からは新たに「子育て支援金」なる税負担が付加され、若者には新たな不安と絶望にしかならない。

この10年に限らず、若者から安心を奪い続けた「失われた30年」を反省し、税制含めた抜本的見直しが必要なのではないだろうか。

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独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター

広告会社において、数多くの企業のマーケティング戦略立案やクリエイティブ実務を担当した後、「ソロ経済・文化研究所」を立ち上げ独立。ソロ社会論および非婚化する独身生活者研究の第一人者としてメディアに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』『結婚滅亡』『ソロエコノミーの襲来』『超ソロ社会』『結婚しない男たち』『「一人で生きる」が当たり前になる社会』などがある。

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