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記者が走り回るのは取材現場だけじゃない! ニュース番組の裏側お見せします

みなさんは「記者」という仕事にどんなイメージがありますか?災害現場で中継リポート、記者会見で質問、政治家やスポーツ選手にインタビューなど、現場を走り回っている印象を持つ方が多いのではないでしょうか?

が、しかし。

NHKでは、記者という仕事に“もうひとつの顔”があるんです。「テレビ局の中」を主な仕事場とし、「おはよう日本」や「ニュース7」、「ニュースウオッチ9」などのニュース番組を作り、出し続ける記者=“制作記者”という顔です。今回は、なかなか世に知られない制作記者の仕事をご紹介できればと思います。

NHK報道の心臓部で働く“制作記者”って?

はじめまして!制作記者の浅井俊輔です。
NHKに入局して10年目。山形局・松江局で取材記者として現場を走り回ったあと、去年8月にニュース制作部という部署に異動。制作記者としては1年目の新人です。現在は正午ニュースや「ニュース7」などを担当しています。

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私の所属するニュース制作部は、ざっくり言うと「現場が集めてきた情報のうち、何をニュースとして伝えるのか取捨選択し、視聴者にどう伝えるか切り口を決める部署」です。働く場所は、東京・渋谷にあるNHK放送センターのニュースセンター。ニュース番組を出す、まさに“NHK報道の心臓部”が制作記者の主戦場です。

ニュースセンターには、取材記者の書いた原稿や映像取材者が撮った映像などが日々、全国各局から集まってきます。この膨大な素材・情報の中から、ニュースの本質を見極めて、時には現場とは違う視点も取り入れながら、より視聴者にわかりやすく、より理解が深まるように、ひとつひとつのニュースの構成や演出を決めていく。それが、私たち制作記者の役割です。

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何がニュース?どこがニュース?を見極める

4月上旬、私が担当したニュースは「春の荒れた天気」でした。
この日は、全国の広い範囲で気温が20度以上となった前日から一転、冬に逆戻りしたのではないか、というくらい寒い1日でした。強風や雨により各地に影響があったため、ニュースで取り上げることにしました。

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2024年4月9日「ニュース7」

放送に向けて、最も大切なのが、打ち合わせです。
CP(チーフ・プロデューサー)や編責(編集責任者=雑誌の編集長のようなポジション)、それにキャスターと意見を出し合いながら、「今日のニュースのポイントはどこか」「どうわかりやすく伝えるか」を検討します。

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打ち合わせの様子

この日、各地から届く原稿や映像は“天気が荒れている”という情報がメインでしたが、より多くの視聴者に関心を持ってもらおうと、この季節ならではの“桜”の話題と関連付けようと考えました。
ただ、桜と関連付けられた原稿や映像は、ニュースセンターに届いていません。
そこでキャスターとともに桜の名所に出向いて、「ニュース7」独自の取材をすることにしました。

声で、表情で伝える

おおよそのイメージができたら、ニュースセンターに集まってくる情報を”組み立てる”段階です。
私たち制作記者の一番の腕の見せどころと言ってもいいかもしれません。

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まず行うのが映像のチェックです。
この日は、山梨や福島など全国各地から10本近い映像が集まりました。中には1時間を超えるものもありますが、編集担当者とともに、“現場ならではの要素”がないか丁寧に見ていきます。

独自の取材で出向いた東京・墨田区でのインタビューを聞いていると、女性が「つぼみから散るところまでが花なので・・・」と話していました。
「荒れた天気で桜が散って残念」という直接的な感想だけでなく、“移ろいゆく季節への情感”も伝わる生の声だと思い、放送で使うことを決めました。

映像におさめられた人の言葉や表情と、コメントを効果的に紡いでいくことが、テレビでニュースを伝える際に大事なことだと考えています。

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放送1時間前くらいになると、その日に放送するニュースの試写が次々に行われます。
項目も多いため、入れ代わり立ち代わりでバタバタです。

こうした作業と並行して考えていくのが、番組内での演出です。
限られた時間内で、視聴者に“わかりやすく”、“理解を深めてもらえる”ニュースをお届けするために、重要なポイントです。
今回のニュースでは、VTRでお伝えする前に、以下のようなキャスターの掛け合いを入れることにしました。

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2024年4月9日「ニュース7」

糸井アナ:「激しい雨風で目が覚めたという方もいらっしゃるんじゃないでしょうか?東日本や北日本で荒れた天気になりまして、私も今朝、風が強くて、電車が遅れました」
副島アナ:「そうですか。大きな傘をさしていても、れるくらいの雨が降っていましたもんね」

視聴者の思いや実感に寄せた会話を取り入れることで、共感しながら、このニュースを見てもらえるような演出を目指しました。

ことばも表情も。
みなさんに届けるニュースを、より意味のあるものにしたいと考えています。

ニュースをみなさんのもとへ“送り出す”

内容や演出が仕上がったら、いよいよ放送です。
ニュースを「送り出す」ことから、私たちの間では「送出」と呼んでいます。

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視聴者にニュースを届けるための最後の仕事。
「コントローラー」と呼ばれる専用の端末を使って、映像の切り替えや字幕スーパーの表示、アナウンサーがしゃべり出すタイミングなど、あらゆる指示を出します。

今回は北海道、宮城、福島、神奈川・・・と7地域のVTRを使っているため、切り替え作業がたくさん!字幕を出すタイミングやVTRを切り替える場所を間違えると、アナウンサーが読む原稿と合わなくなってしまうため、高い緊張感の中で、冷静に操作しなければなりません。

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歴代の先輩が使ってきたコントローラー
汗ではがれている?

“春の荒れた天気”のニュースの放送時間は3分15秒ですが、実際の時間よりとても長く感じます。
手に汗をかきながらコントローラーを操作し、無事に放送終了。

こうして、私の制作記者としての1日が終わります。

ひとつのニュースがみなさんのもとにどうやって届くのか、少しでも伝わったらうれしいです。

制作記者の強い味方!フルバーチャルスタジオ

さて、私たちの仕事には、「字幕スーパー」を作ることも含まれます。
また、背景が複雑な事件などは、全体像を整理した図や表を作ったり、イラストやCGを作画したりもします。

そんななか、最近、私たち制作記者にとって、新たな強い味方が登場しました。生放送中のスタジオで展開するフルバーチャルのCG演出です。

これまでリアルのセットを組んでニュースをお伝えしていた「ニュース7」。去年、NHKの基幹番組として初めてフルバーチャルのスタジオに一新、リアルではできない演出に取り組んでいます。

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2024年1月29日「ニュース7」
月と探査機のバーチャル

例えば、こちら!
“日本の月探査機SLIM”のニュースです。
まるで月の上でキャスターがプレゼンしているかのように見えませんか?
フルバーチャルの導入を進めてきた坂野祐介記者に、こうした演出をどのように行っているのか聞いてみました。

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「ニュース7」のキャスター2人と話す坂野記者(右)

坂野:実際のニューススタジオというのは、奥行きがなく、平面的なものが多いです。さらに天井には照明があり、表現できることに制限があります。

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そこで導入したのが、バーチャルシステムです。

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なんと言っても、視覚的にわかりやすくなることがフルバーチャルのメリットです。
例えば、日経平均株価の推移について示したこちらのグラフ。

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2024年2月22日 ニュース7

アニメーションで動きをつけ、さらに人の身長を超えるような演出にすることで、昨今の株価の伸び具合を効果的に表現しました。

また、スタジオに持ち込めないものの説明にも役立ちます。
例えば、2023年4月、沖縄県宮古島沖で陸上自衛隊のヘリコプターが墜落した事故のニュース。ヘリコプターをCGで立体的に表現することで、具体的な形や位置関係などを可視化しました。

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2023年4月7日「ニュース7」

さらに、フルバーチャルには、リアルのスタジオセットを作らない分、制作費が削減できたり、作業が短時間で済んだりするメリットもあります。

一方で、視聴者に‟仮想空間での出来事“だと感じさせてはいけない、ということは常に心に留めています。

リアルなニュースであることを感じ取れるよう、アナウンサーの身振り手振りと連動させるなど、毎日、試行錯誤をしながら制作を行っています。
わかりやすさだけではなく、人が伝える“温度感”も大切にしたニュースを作りたいと思っています。

事件や災害・・・緊急報道で試されるチームワーク

最後に触れたいのが「緊急報道」です。

「テレビを見ていないで、逃げてください」。

年明けに起きた能登半島地震での呼びかけを覚えている方もいらっしゃるかもしれません。
命と暮らしを守る「緊急報道」は、近年、特に重要性を増しています。

ニュース番組の場合、放送中に地震などの災害が発生したり、重大な事件の一報が入ったりすることも多々あります。
そんな時、私たちは、台本や打ち合わせがなくても、即座に内容を切り替えて数時間にわたって伝え続けます。
そうしたNHKの緊急報道は、日々の訓練によって支えられています。

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ニュースセンターの副調整室

定期的に行われる、地震を想定した災害報道の訓練。
ニュース送出の中心部・副調整室でひときわ大きな声を出しているのが、佐々真梨恵記者です。

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佐々記者

緊急報道の経験を積んできた佐々記者に心構えを尋ねました。

佐々:地震などの緊急事態が発生し、ひとたび特設ニュースが始まると、原稿が出ていなくても放送を出し続けることがあります。制作記者はその時、放送に出すべき情報や画面・映像を判断し、指示する司令塔の役割を果たすことが多いです。次々といろんな情報が入ってきて、副調整室は大声が飛び交う場となりますが、そうした中でも冷静かつ的確に放送を出せるよう心がけています。そのためには日ごろのシミュレーションがとても重要で、訓練が欠かせません。

浅井:刻一刻と状況が変わる中で、何を心がけていますか?

佐々:何よりも大切なのは、命を守るための正確な情報を迅速に伝えること。たとえば、津波警報が出ているときには、状況がわかるように海を映した映像に切り替えると同時に、安全な場所に速やかに避難するよう、繰り返し呼びかけを行います。
すべての人に情報が届くように、手話での呼びかけや、英語だけでなく中国語やポルトガル語など多言語での発信を行うシステムもあります。これらを的確に選択、送出して、より多くの人に命を守る行動につなげてほしい、という思いで取り組んでいます。
また、緊急報道には、送出だけでなく、字幕スーパーを制作する担当者やリソースを切り替えるTD(テクニカル・ディレクター/スイッチャー・カメラ・音声・照明といった技術的な司令塔)、各地との中継連絡にあたるコーディネーション担当など、さまざまな立場の人が関わります。それぞれの役割が、放送にどう結びついているのかを把握し、円滑に指示を出せるよう俯瞰ふかん的な視点を持つことを心がけています。
緊急報道を行うのは、ニュース番組中に限った話ではありません。重大ニュースが入ったら、すぐにアナウンサーがスタジオに入って特設ニュースを立ち上げます。地震・津波などの災害だけでなく、国際的な重要な動き、事件や政治の動き、株価や為替など、次々と飛び込んで来る世界中の出来事に対応しています。

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浅井:24時間体制でスタンバイしているんですか?

佐々:NHKのニュースには、責任時間帯というものがあって、「おはよう日本」「ニュース7」「ニュースウオッチ9」の3つの番組の担当者が、それぞれの時間帯に何か起きたら放送を出すことになっています。
私が所属する「おはよう日本」の責任時間帯は、平日は「ニュースウオッチ9」終了後から。その時間帯は、ニュースセンターで朝の番組に向けたニュースなどの制作をしつつ、緊急報道が発生した場合、いつでも放送を出せるようスタンバイしています。

浅井:迅速な緊急報道は、明確なシフトを敷いているからこそ成り立つものなんですね。緊急報道に対応するにあたって、佐々さんがしている工夫などあれば教えてください。

佐々:送出卓に、とにかくすぐ駆けつけられるようにしておくことです。私が担当している「おはよう日本」の責任時間帯は、日中に比べ、限られた人数で放送を出しています。緊急報道は一分一秒を争うため、自分が離席している時に何か起きれば一大事。パンプスを履いていた取材記者時代とは違って、ダッシュしやすいスニーカーで過ごすようになりました。

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また、緊急報道の送出ではたくさんの人の大声が飛び交います。ミスにつながりかねない場面があれば、語気が強まることもしばしば。そんな中でも送出担当者は決して気圧されず、その中に飛び込んでいくことが必要だと思います。私も最初は声が小さいと叱られました。先輩や上司からよく言われるのは、指示を出しただけで“伝えたつもり”になっていないかということ。時には指示したい相手の目を見て、名前を呼んで、確実に“伝わる”よう努めています。

制作記者は取材現場と視聴者の懸け橋

ここまで、制作記者の1日の仕事の流れや緊急報道に対する取り組みをつづってきました。

多くの人がイメージする“記者”は、取材に応じてくれた人と現場で向き合い、情報を集めるのが仕事です。その情報がないことには、ニュースは成り立ちません。

一方で、現場の情報すべてが視聴者のわかりやすさや興味・関心と合致するわけではない面もあります。
そんな時こそ、私たち“制作記者”の出番です。
テレビの前の人を想像して、「何を知りたいのか」「どうすればわかってもらえるか」を考える。そんな取材現場とお茶の間の「懸け橋」のような役割を担いたいと思っています。

「テレビのニュース」と一口に言っても、扱う内容や放送する時間帯、緊急性などによってスタイルはさまざま。わたしたち制作記者は、日々昼夜問わず、どうすれば伝わるか、たくさんの試行錯誤をしています。NHKのニュースを目にした際には、そんな制作記者の姿を少し思い浮かべてもらえたら、うれしいです。

メディアに接する環境も大きく変わり、ニュースをインターネットの文字情報だけで入手するという人も多いと思います。そうした環境の中で、デジタルとの融合も大切ですし、テレビで伝えるとは何か、皆さんにどうお届けできるか考え続けることも私たちの課題だと思っています。
これからも新しい表現方法にチャレンジしていきます。ぜひお楽しみに!

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