無職転生 ─ 弟に寄生して生きていく ─


メニュー

お気に入り

しおり
作:ニート最高
▼ページ最下部へ


13/15 

第10話



これから投稿頻度が下がります。
よろしくお願いします。



 

 

side:ナナホシ

 

 

ルーデウスがベガリット大陸へ行って、はや二か月。

 

 

ルーデウス不在の影響は、ナナホシにとって無視出来ない程大きい。

 

魔力が借りられないので、召喚魔術の研究が進まなくなる。

研究が進まない状況は、ナナホシの精神をじわじわと疲弊させていく。

 

同郷のルーデウスがいないと、日本語で話せる人がいない。

ナナホシは孤独だ。その孤独は、同郷の者との語らいでしか癒されない。

 

ルーデウスは強い。

オルステッドは呼んでも一瞬で駆けつけてくれるわけじゃない。無力なナナホシにとって、身近に協力的な強者がいるのは心強かった。

 

世代は違えど、日本の話も出来て。

少々女にだらしないところはあるが、意外と誠実で義理堅い。

 

……純粋に、心配な気持ちもあった。

研究に行き詰まり、心がぽっきり折れたナナホシを支え、立ち直らせてくれた恩人でもある。無事に帰って来てほしいと思うのは、当然のことだ。

 

 

そのルーデウスが旅に出てしまった。

 

 

ナナホシの生活は以前に逆戻り。

 

研究室に引き籠り、他人と会話することもなく。

一日の全てを召喚魔術の研究に没頭するだけの毎日。

 

 

陰鬱で、暗い日常に戻った───

 

 

「お腹空いた~」

 

 

───わけではなかった!

 

 

そこには、だらしない一人の女子高生の姿があった。

 

暖炉前の一番大きなソファを占領して寝転がっている。

しかも、可愛い女の子の膝枕付き。甲斐甲斐しく世話を焼かれ、完全にリラックスした様子だ。

 

ナナホシの気の抜けた言葉に応えるように、膝枕をしている女の子……リディスがナナホシの頭を撫でながら口を開いた。

 

「すぐ出来ると思うから、もうちょっと待っててね」

 

「ポテトチップスは~?」

 

「後でちゃんと作るわよ。でも、ご飯はご飯で、きちんと食べなきゃだめなんだからね。ポテトチップスは寮に帰ってから食べなさい。わかった?」

 

「はーい」

 

外見上は、二人は同年代の筈なのだが……。

 

一方的に甘えるナナホシと、一方的に可愛がるリディス。

今のやり取りを傍から見れば、親子のようにしか思えないだろう。

 

 

 

 

 

●〇●〇●〇●〇●

 

 

 

 

 

どうしてこうなったのか。

 

初めはこうではなかったはずなのだ。

ナナホシにとって、リディスは友人でも何でもなかった。

知り合いの姉。それ以上でも以下でもない。ただの他人。

 

ナナホシは、この世界の人間と深い仲になるつもりはない。

倫理観も常識も違う現地の人間と、本当の意味で友人同士になれるとは思っていなかったから。

 

それに、ナナホシは最終的に地球へ帰るのだ。

下手に深い関係になったら帰る時が辛くなるし、関わり過ぎて世界の修正力的なナニカに排除されるのも怖かった。

 

 

だから、同郷のルーデウス以外にはわざとツンケンした態度をとる。

 

そこに、背後に龍神オルステッドがいることを匂わせれば、大抵の相手は及び腰になったり、空気を読んで割り切った対応をするようになる。

 

実際、この家の住人もそうだった。

フィッツ……シルフィ、アイシャ、ノルン。三人共察しの良いタイプだったみたいで、ナナホシに対しては一歩引いた態度をとる。それが正しい。

 

 

……しかし、リディスは違った。

ナナホシの素っ気ない態度にもまったく怯まず、この家に来るたびに何かと構って来た。それこそ、鬱陶しいくらいに。

 

ナナホシには、強く拒絶することが出来なかった。

 

風呂はルーデウスの厚意で使わせてもらっている。

ルーデウスにはシスコンの()があるし、双子の姉に対しては過保護なところもある。拒絶すれば機嫌を損ねてしまうかもしれない。そうなったら、この家に来ることは難しくなるだろう。

 

風呂はナナホシにとっての癒しだ。

入れなくなるのは受け入れ難い。

 

だから、リディスの対応には目を瞑った。

その内飽きてやめるだろうと思ったからだ。

 

しかし、ナナホシの予想に反して、リディスの世話焼きは止まらなかった。

 

一緒に風呂に入って、体や髪を洗ったり。

ナナホシ好みの食事を作ってくれたり。

頑張るナナホシを褒めてくれたり。

 

医者としての心得もあるのか、慣れない環境もあってちょくちょく体調を崩すナナホシを、定期的に診察してくれた。

 

 

この世界の医療は、地球に比べてかなり劣っている。

魔術という便利なものがあるせいか、衛生面から怪我や病気の対応まで、この世界の住人は大雑把で適当なところがあるのだ。

 

リディスにも期待していなかった。

他の医者と同じく、適当に診察して、後は魔術でどうにかするのだろうと。

 

しかし違った。

リディスは、魔力を持たず、歳をとらず、生理すら来ないナナホシの特殊な体質を鑑みて、慎重な対応をした。

 

 

 

 

 

ある日のことだった。

 

咳き込むことが増えた、と。

ナナホシがポロっと零した言葉を拾い、リディスはナナホシを自室に連れ込んで、念入りに診察を始めた。

 

生活環境や衛生状態。

普段の食事内容から睡眠時間まで。

 

とにかく細かく質問して来た。

ここまで丁寧に診察する医者は、ナナホシの知る限り、この世界にはいなかったように思う。

 

一通りの問診と触診を終え、最後に解毒魔術を使って治療してくれた。

 

咳も止まり、ほっと息を吐いたナナホシ。

対して、先ほどから熱心に手帳に何かを書き込んでいたリディスが、唐突に顔を上げて語り始めた。

 

「体調は問題なかったわ。けど……」

 

「けど…なによ?」

 

「……いえ、ごめんなさい。まだ考えがまとまってないの。申し訳ないけど、明日も来てもらっていいかしら」

 

その言葉を最後に、その日の診察は終わった。

ナナホシは不思議に思いながらも、明日も来いと言うのなら、その時にまた風呂に入ってもいいだろう、と。ご機嫌で寮に帰宅した。

 

 

 

 

 

そして次の日。問題が起きた。

 

「まだ憶測に過ぎないけど……ナナホシちゃんは『魔力がなくても平気』なのではなく、『魔力がない状態が正常』なんじゃないかしら」

 

「……それってもしかして、魔力が私にとって害になりうる、ってこと?」

 

「その可能性はあると思うわ。だって、本来生きていく上で必要のないものを取り込んでいるんだもの。そして、魔術…というより、魔力を扱えないナナホシちゃんは、取り込んだ魔力を排出することが出来ない」

 

「………」

 

「もちろん、誰もが空気や水、食べ物から毎日のように魔力を取り込んで生きているわ。けど、元々魔力を貯蓄して生成する機能を持った人間と、その機能を元来持ち得ない人間。前者はともかく、後者の方は、体に魔力を溜め込み続けて体にどんな影響が起きるか……予想がつかないわ」

 

 

……考えたことがなかったわけではない。

むしろ、その可能性については随分前に考えていた。

 

ナナホシにとって、この世界の物は異物が多い。

この世界特有の病気にでもかかったりしたら、自分は助からない可能性がある。

 

治癒魔術も解毒魔術もあるとはいえ、異世界人のナナホシに対して、いつも正常に効果を発揮すると思ってはいけないだろう。

 

だからこそ、触れるもの…特に、口にする物には気を付けてきた。

 

しかし、魔力はどうしようもない。

リディスが言う通り、空気にも水にも含まれているのだ。

避けようがない。どうしたって取り込んでしまう。

 

 

「……それはあなたの憶測でしょ?何の根拠もないじゃない」

 

いつものように強気な態度でナナホシは言った。

言った…はずだが、よく聞けばその声が震えていることに気が付いただろう。

 

リディスは……気づいたのかどうか。

しかし、いつもの穏やかな雰囲気が、少しだけ鋭くなっているようにナナホシは感じた。

 

「そうね。けど、昔よりも体調を崩しやすくなったのは本当なんでしょう?魔力を溜め込んだ影響が出ているのかもしれないわ」

 

本当だった。

ここ数年の間に、しょっちゅう風邪気味になった。

 

その度に治療院や知り合いの治癒術師に治してもらっているが、頻度が明らかに多すぎた。昔よりも……地球にいた頃よりも、体調を崩しやすくなっている。

 

しかし、ナナホシはその事実から目を逸らした。

 

「それは……環境に慣れていないだけよ」

 

「そうなの?」

 

「そうよ。それに、元々体が頑丈な方じゃなかった。毎年一回は風邪引いてたし、季節の変わり目とか、寒暖差とか……とにかく、昔から体調を崩しやすい方だったの。だから、大丈夫よ」

 

早口で、まくし立てるように語った。

 

言い訳がましい言葉だった。

まるで、まだ大丈夫だと、自分に言い聞かせているような。

 

だが、リディスには通じなかった。

……自分自身すら騙せないのだから、当然と言えば当然だが。

 

「……そうね、そうかもしれないわ。私の考えすぎかも」

 

「え、ええ。そう───」

 

「───でも念のために。魔術で治療するのは、ちょっと控え目にしましょう。代わりにお薬を出してあげる」

 

「薬…?」

 

「そう、薬。でも常備してるわけじゃないから、今度来るときに渡すわね」

 

 

 

 

 

●〇●〇●〇●〇●

 

 

 

 

 

あれがきっかけだったのかもしれない。

ナナホシがリディスに精神的に寄り掛かるようになったのは。

 

 

 

後日、再び訪れた際に、ナナホシは薬をもらった。

 

漢方薬のようなものだ。

ミリシオンで医療を学んだリディスと、狩人であった父親から毒や薬について学んだというシルフィ。二人の専門家が協力して作ってくれたもの。

 

原材料も全て説明された。

ナナホシが見知った物もあり、口にするのにそれほど抵抗はなかった。

味は……まぁ、良薬は口に苦し、というやつだ。

 

効果はしっかりあった。

解毒魔術を使った時ほどではないが、お茶と一緒に呑むと症状が和らぐ。

 

しかし、薬にだって魔力はある。

解毒魔術を使うのと大差ないのではないかと思ったが───

 

『治癒も解毒も、相手の体内を魔力で治療するものだから…治癒術師の腕にもよるけど、余分な魔力は相手の体内に残って、吸収されるのよ。微々たるものだけど、飲み物や食べ物を口に含むよりも、ずっと多くの魔力を取り込むことになるわ』

 

───と、いうことらしい。

 

やはり、魔術を使った治療の方がリスクが大きいのだと言う。

 

薬は魔力に類する成分に頼ったものではなく、その人が持つ免疫機能を補助するものだ。魔力で直接干渉する魔術に比べれば、体に残る魔力はほとんどない。

 

今後も経過観察を続ける必要はあると言われたが、ナナホシはひとまず安心した。

 

近くに頼れる医者がいるのは良いことだ。

 

 

 

 

 

その後もナナホシは、ルーデウス邸に行くたびにリディスに診てもらった。

その辺の見知らぬ医者に診てもらうよりは、信用している人の身内に診てもらった方が遥かに安心出来る。

 

 

リディスは他の医者とは違う。

安易に魔術に頼らないし、衛生面もしっかりしている。

彼女の部屋はいつも整理整頓されていて、掃除も行き届いていて清潔だ。

 

治療費は取られない。

ルーデウスのベガリット行きを支援してくれたから、そのお礼だと言って無料で診てくれる。

 

さすがに申し訳ないので、薬の材料代は払わせてもらっているが。

 

……あとは、料理の材料代もか。

風呂上がりに料理をご馳走してくれるのだが、味付けがとてもナナホシ好みなのだ。特に、ナナホシはケリースープがお気に入りだった。

 

ナナホシが前世の知識を元にこの世界に齎したものの一つ。

ケリースープ……すなわち、カレーである。

 

資産を稼ぐ手段の一つとして提供したものの、完成度はあまり高くなかった。

ナナホシ自身が料理が凄く得意、というわけでもなかったし、この世界の調味料に関してあまり詳しくないからだ。

 

変な物を食べたりして、病気になった場合のリスクが大きすぎる。

手当たり次第に口に入れて味を確かめる、ということが出来なかった。

 

 

しかし、リディスが作ってくれたカレーは美味しかった。

 

日本で市販されているものや、有名チェーン店で提供されているようなものとは違ったが……それでも、ナナホシが再現したものよりは、よっぽど『カレーっぽい』味付けだった。

 

初めて食べた時は、思わず涙ぐんでしまったものだ。

満腹になるまでおかわりしてしまい、一緒に食事していたシルフィとアイシャの生暖かい視線が恥ずかしかったのを覚えている。

 

 

 

 

 

●〇●〇●〇●〇●

 

 

 

 

 

そんなこんなで、ナナホシはリディスにすっかり甘えるようになってしまった。

 

 

これは仕方のないことだ。

ナナホシは飢えているのだから。

 

ナナホシはまだ女子高生だ。

この世界で数年過ごしたが、容姿が変わらないせいか。あるいは、この世界に馴染めず、真っ当に成長することが出来なかったせいか。

 

精神面があまり成長していない。

むしろ、家が…家族が恋しくて、どうしようもなく寂しくなったり、癇癪を起こして不機嫌になってしまうことがある。

 

情緒不安定なのだ。

そんな時に、リディスが甘やかしてくれるようになった。

 

食事をしている時のナナホシを見る眼差し。

風呂上がりに髪を乾かしてくれる時の手つき。

 

時折ナナホシを抱きしめて、あやすように、後頭部から背中にかけて優しく撫でてくれる。そうすると、不思議なことにナナホシの中にある不安や焦燥が薄れていくのだ。

 

……母性、だろうか。

 

彼女といると、母親を思い出す。

幼い頃、まだ母親に甘えてばかりだった昔が蘇り、甘えたくなってしまう。

 

 

 

 

 

「ご飯出来たよー」

 

「!?」

 

ソファの上でリディスの柔らかい膝を堪能していると、声と共に足音が近づいて来た。

 

「ふっ……っと!」

 

素早く起き上がり、隣にある一人用のソファに座った。

足を組んで手帳を開き、体裁を整える。

 

リディスに甘えるのは二人きりの時だけだ。

さすがにシルフィ達の前では弁えている。

 

ていうか恥ずかしい。

同年代のシルフィに見られるのも、年下のアイシャやノルンに見られるのも、ナナホシのプライドが許さない。

 

そんなナナホシを、リディスは微笑ましいものを見る目で眺めていた。

 

間もなく、扉を開けて一人の少女が入って来る。

小さな体に、元気いっぱいな陽のオーラを纏った少女。

 

「今日はチーズが安かったので、私オリジナルのチーズ入りケリースープにしてみました。辛さ控え目、チーズの風味がとっても優しい自信作です」

 

ふんすっ、とアイシャは胸を張った。

 

ナナホシは胸が高鳴った。

アイシャは料理が上手い。リディスに味付けを教わったのか、ナナホシ好みの料理を高いクオリティで毎回提供してくれるのだ。

 

「シルフィはまだ寝てる?」

 

「うん。シルフィ姉、最近いっつも眠いんだって。大丈夫かな…?」

 

「そうねぇ、今は一番辛い時期だろうから…悪阻も眠気も、もうしばらく続くと思うわ。眠いなら、ゆっくり休ませてあげましょう。起きた時のために、何か用意しておいた方がいいかしらね……」

 

リディスの言葉を聞いて、ナナホシは咄嗟に荷物からある物を取り出した。

 

「あ、これ……よかったらどうぞ」

 

学校から来る際に、道中で買って来た果物だ。

シルフィとは初対面の際に色々あったが、今ではリディスが間に入ってくれたこともあって普通の友人関係を築けている。

 

妊娠のことはあまり詳しくないが、最近のシルフィが大変なことは知っている。

妊娠も出産も何かと入用だろう。さすがに直接お金を渡すのはアレだが、こうして食べ物を持って来るくらいはする。

 

「あら、いつもありがとう。それじゃ、シルフィには悪いけど、私達は先に頂きましょうか」

 

リディスに連れられ、ナナホシはダイニングへ向かった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

どうも皆さんこんにちは。

最近のマイブームは、女子高生を誑かすこと。

妊娠してるシルフィより母性があると評判のリディスです。

 

シルフィもね。包容力はある方なんだけどね。

彼女の母性は、基本的にルーデウスとお腹の子供に向けられてるから。仕方ないね。

 

 

 

 

 

さて、俺がどうしてこの子を甘やかすのか。

今、俺の目の前で必死にカレーをパクついているこの少女。

 

七星静香(ナナホシシズカ)。通称ナナホシ。

地球から転移して来た転移者(トリッパ―)

サイレント・セブンスター、とかいうクソださな偽名を名乗ることもある現役JKを。

 

 

甘やかす理由は色々あるが、簡単に言えば金のためだ。

 

金!金!金!世の中金が全てだぜ!

恥ずかしいとは……思わん!俺は金が大好きだから!

 

知ってるか?ナナホシってすんげぇ金持ちなんだぜ。

一生遊んで暮らしてもなお余るくらいの資産があるんだ。この町で一番の金持ち……いや、もしかしたらラノア王国で一番の金持ちかもしれない。

 

媚びるのは当たり前だよなぁ?

 

これからシルフィも出産するしな。

ルーデウス達が帰ってくれば住人も増える。パウロは当分無職だろうし。シルフィの子供、リーリャ、ゼニス、あと……ロキシーもか?とにかく人が増えるんだよ。

 

今はまだルーデウスが冒険者稼業で稼いだ金があるし、シルフィだってアリエルの護衛として給金を貰ってはいるが……金はいくらあっても足りないのだ。

 

だから俺はナナホシに取り入った。

いざという時に金を無心するためだ。

 

ナナホシはチョロい。

幼少の頃のシルフィを思い出して笑っちゃいそうになるぜ。

 

 

ナナホシの精神状態を予測するのは簡単すぎた。

 

だってこいつは女子高生……日本ではまだ子供だ。

そんな子供がある日突然、住んでいた家どころか世界から引き離され、何もかも見知らぬ世界で一人孤独に生きていかなければならなくなった。

 

文明の利器など存在せず。元居た世界の常識も通用せず。

人攫いや魔物が、当たり前のように蔓延る危険な世界。

 

ナナホシには魔力がない。

 

魔力がなければ魔術は使えない。闘気もないので戦えない。

身体能力は普通の十代女子。戦いの心得も当然ない。

物語にありがちな、異世界人特有の特殊能力(チート)もない。

 

……いや、一応あったか。

 

髪や爪が伸びない、生理が来ない、歳をとらない。

凄いことだが、しかし、それらは必ずしもプラスに働く要素ではないし、特殊能力(チート)と呼ぶには地味でショボすぎる。

 

 

考えれば考えるほど悲惨な境遇である。

発狂してないだけ大したもんだ。

 

まぁ、ここまで考えればわかるだろう。

ナナホシは飢えているのだ。人肌の温もりってやつにな。

 

ルーデウスは同郷だが、異性だから素直に甘えることは出来まい。

 

俺にも最初は素っ気ない態度だったが、構い倒す内にコロっと落ちやがった。

 

 

ほら、今も見てみろよ。

 

「……むぐ」

 

俺がカレーで汚れた口元を拭ってやっても、ナナホシはそれを当たり前のように受け入れている。対面のアイシャが感心した様子で、手帳に何かを書いているのが気になるが……まぁいい。

 

 

か、簡単すぎる……呆気なさすぎる……。

 

これなら、ミリシオンにいた難民のケアの方が大変だった。

あっちは精神崩壊してる奴とか、幼児退行してる奴とか、もう完全に精神が逝っちゃってる奴がそれなりにいたからね。

 

あの連中と比べたら、ナナホシ攻略なんてイージーすぎた。

 

 

 

 

 

あ、そうそう。

診察の内容についてだけど、あれは半分適当なものだ。

 

ナナホシが何かの病気になる、ってのは覚えてるんだけど、具体的な症状とか病名は覚えてないんだよね。

 

最終的にルーデウスが何とかしたと思うんだけど……。

 

だから、俺の診察は半分くらいは推測が混じったものだ。

魔力を溜め込んで発症する病気なんて聞いたことないし。

 

とはいえ、治癒や解毒を使った時の魔力の通りがおかしいし、そんなに見当外れなものじゃないと思うんだけどね。

 

今は軽度の症状だけど、これから先どうなるかはわからない。

 

薬に関しては……まぁ、時間稼ぎにしかならないだろうな。

この世界、魔術に頼っているところはあるが、治癒術師がいないような地方や田舎では、今回作ったような薬はちょくちょく存在する。

 

効果はそれほど高くない。

高いものも作れるんだが、その場合は魔力を多く含んだ材料を使うことになるので、ナナホシには使えない。

 

……ナナホシって、最後はどうなるんだろうな。

病気で亡くなるのか。地球に帰るのか。帰れずに定住するのか。

 

 

いずれにせよ、だ。

亡くなるにしても、地球に帰るにしても、溜め込んだ資産はルーデウスに譲り渡してくれないかな。ルーデウスが金持ちになれば、俺もさらに楽な生活が出来るわけだし。

 

定住するんだったら、今後も貢いでくれると嬉しい。

スパイス系の調味料は高いんだよ。カレー一杯の材料費が尋常じゃない。

 

いっそのこと、ナナホシがルーデウスの嫁になってくれればいいんだけどなぁ。

 

ルーデウスの嫁って最終的には三人なんでしょ?

じゃあ一人くらい増えてもよくない?

 

ロキシー…無。

シルフィ…微。

ナナホシ…並。

エリス…巨。

 

ほら、バランスもいいじゃん。

 

 

……え、何のバランスかって?

 

乳のバランスだよ。

バリエーション豊かで素晴らしいね。

 

 

 

 

 




精神的には年下(年上)の少女に甘えるJK、ナナホシ。
二人きりの時だけ、とか言ってるけどシルフィ達には普通にバレてる。
シルフィとリディスの成人組と一緒に女子会したり、買い物したりして普通に仲良くなってます。

三人はマブダチ。
なので、シルフィとリディスに何かあったら、ナナホシの精神状態は一気に悪化する。

え、老デウスルート?
いやぁ、そんなまさか……リディスもシルフィも死ぬなんてそんな馬鹿なことあるはずが……。


アイシャは『バブみ』を勉強中。
今後の子育てとか対人関係で活かすのかもしれない。

ノルンちゃんは、ナナホシには転移魔法陣のことで感謝してるけど、それはそれとしてちょっと引いてる。

13/15 



メニュー

お気に入り

しおり

▲ページ最上部へ
Xで読了報告
この作品に感想を書く
この作品を評価する