side:ルーデウス
「ルディ!無事だったのね!」
パウロとルーデウスが談笑している最中。
二人の姉妹が散歩から帰還し、姉のリディスは弟の無事を涙ながらに喜んでいた。
「会いたかった…!」
そう言ってルーデウスを抱きしめるリディス。
男女の成長期の違いか、今はリディスの方がルーデウスより少し背が高い。
そのせいか、ルーデウスの頭はリディスの胸にぎゅうぎゅうと押し付けられていた。
「(そ、育っている!まだ11歳だというのに…リディス、恐ろしい子!)」
「ルディ……大きくなったわねぇ」
「成長期ですから。姉様こそ、しばらく見ないうちにご立派になられて…ぐへへ」
まだまだ控え目だがしっかりとした膨らみがある。
ゼニスに似てご立派に育つのだろう。ルーデウスの中のおっぱい仙人も保証してくれている。
胸だけじゃない。
見た目はまだまだ子供だが、雰囲気が凄く大人っぽくなっていた。年上のエリスよりもよっぽど女性らしい柔らかな空気を纏っている。
所作に関してはルーデウスよりもしっかりしている。
リーリャから教わった成果だろう。
笑顔も昔とは変わった。
何と言うか……ちょっと具体的にどう変わったかはわからないが。
これも成長した証なのだろう。
その後、リディスとノルンも交えて今までの旅の経緯を簡単に説明した。
さすがにパウロにやったようにふざけた感じではなく、楽しかったことも辛かったこともほどほどに混ぜた説明である。
そこそこ長い話だったせいか、ノルンは途中でウトウトし始めたので、先に部屋に戻っておねんねしている。
「それにしても、ノルンの反応は少しショックでしたね……」
ルーデウスは大きくなったノルンと再会したのだが、ノルンの反応が予想外のもので結構ショックを受けていたのだ。
端的に言えば、ルーデウスはノルンに嫌われていた。
「ほ、ほんとにごめんね。後で言い聞かせておくから…」
申し訳なさそうにリディスが言う……が、原因はリディスである。
仕事で忙しいパウロの代わりに、リディスはノルンの世話をしていた。
もはや母親代わりのようなものであり、ノルン自身もまだ幼いこともあってか、時折リディスをゼニスだと思って接している節があったという。
普段から引っ付いているし、リディスが捜索団本部に預けられている子供達の相手をしている時も、ノルンはよく不機嫌になる。
そして、リディスはルーデウスのことをノルンによく話してあげた。
ルーデウスのことを忘れてしまわないように『ノルンのお兄ちゃんは強くて優しくて賢くてかっこいい人なんだよ』と普段から語って聞かせてあげたようだ。
それ自体はリディスなりの気遣いであり、ルーデウスとしても嬉しく思った。
しかし、最初のうちは興味深そうに聞いてくれたそうだが、いつからか、ルーデウスの話題を出すとしかめっ面をするようになったという。
先ほども、ルーデウスの精一杯の紳士的な挨拶に対して「おにいちゃんなんてしらない!」と言ってリディスの背中に隠れるという塩対応をされている。あれだけ可愛がっていた妹にこんな対応をされたので、ルーデウスは思わず床に膝をついて悲しんだ。
つまりは───。
「……嫉妬、だな。大好きなお姉ちゃんが、会ったこともない兄貴に取られちまうんじゃないか、って不安なんだろう」
「姉様。褒めてくれるのは嬉しいのですが、その代わりに妹に嫌われるのは困りますよ」
「はい……反省してます」
「今度からはほどほどにしてくださいね」
まさか妹に嫉妬されるとは、さすがに予想外であった。
●〇●〇●〇●〇●
和やかに三人で話していたのだが、ちょっとした問題が起きた。
ノルンが部屋に戻った後。
ちょうど、ルーデウスがドルディア族の村でのことを話した時だった。
冤罪で捕らえられ、ドルディア族の村で全裸に剥かれて牢屋に入れられ、冷水を浴びせられたこと。その後、村を襲撃しに来た密輸業者達と戦いを繰り広げたことを話した。
そしたら、急にパウロが慌て出した。
「全裸で……牢屋!?冷水っておま、さっきはそんなこと言ってなかったじゃねぇか!」
そう言えばそうだ。
密輸業者の北聖と戦ったことは事前に伝えていたのだが、牢屋に入れられたことはパウロに言ってなかったことを思い出した。
だって、あっさり捕まって全裸で牢屋生活なんて情けないと思ったのだ。
それに、数日の間、ルイジェルドとエリスから連絡がなかったという点で不安はあったものの、牢屋での生活そのものはそれほど酷くなかった。見張りの女性が美人だったこともある。
少なくともルーデウスの主観はそうである。
むしろ、何もすることがなくて暇だったことの方がきつかったかもしれない。ギースが話し相手になってくれなければ、力づくで脱走して後々大事に発展した可能性もある。
結果的にはドルディア族の人々とは友好関係になれたし、ルーデウスの中では既に思い出の一つに過ぎなかった。
「そんなに慌てなくとも……魔術は使えたので、牢屋の中を快適に過ごすことも出来ました。食事もおいしいし、頼めばおかわりも出るし。そもそも、逃げようと思えばいつでも逃げられましたしね。精神的にも余裕があったんです。別に強がってるわけじゃありませんよ?」
「いや、まぁ、お前が言うならそうかもしれないが……」
「いいんですよ。今では良い思い出ですから………?」
慌てるパウロとは反対に、冷静に説明するルーデウス。
しかし、ふと違和感に気づいた。
「───」
リディスがおかしい。
先ほどまで、ハラハラしたり笑ったりしつつもルーデウスの話を真剣に聞いてくれていたのだが、今は虚ろな目でテーブルをジッと見つめて動かない。
「牢屋………うっ…!」
「姉様!?」
今度は急に頭を抱えだした。
困惑するルーデウスの前で、パウロはリディスの肩に優しく手を置いた。
「今日はもう休め。ルディとはまた明日話そう、な?」
「……うん、そうするね。ごめんなさい……またね、ルディ」
「あ、はい。おやすみなさい」
パウロに付き添われ、リディスはふらふらと宿へ戻って行った。
「(……急にどうしたんだ?治癒魔術は使ってなかったから、発作ではないよな?)」
治癒魔術で治せないとなると、精神的な不調か?
パウロが戻って来るまで、先ほどのリディスの変化の原因について考える。
タイミングは……そう、ドルディア族の村での話をしたことだ。
その前までは普通だった。では、どの言葉が原因だろうか?
全裸で冷水……あり得る。
弟が受けた仕打ちにショックを受けた可能性。
あるいは、ガルスとの戦いだろうか?
足を負傷したし、ギースと聖獣がいなければ結構危うい場面だった。心配性な姉のことだ、ハラハラしすぎて具合が悪くなったのかもしれない。
どれもあり得そうで答えが絞れない。
考えている内にパウロが戻って来た。
「…さっきは悪かったな」
「あ、いえ。姉様は大丈夫でしたか?」
「今は大丈夫だ。ノルンと一緒に寝てるよ」
「そうでしたか」
しかし、パウロは何だか複雑そうな顔をしている。
一体何が………いや、待てよ?そういえば、自分はリディスのことで何か聞こうとしていなかっただろうか?
「(……あ、そうだ!)父様?」
「なんだ?」
「さっき聞きそびれたんですが、父様はノルンと一緒に転移したんですよね。姉様も一緒だったということでいいんでしょうか?」
そうだ、これを聞きたかったんだ。
まぁ、どうせパウロが言い忘れただけだろうが。
「───いや、違う」
………あれ?否定された?
じゃあなんでリディスはここにいるんだ?
一緒に転移したからここにいるんじゃないのか?
そんな疑問が顔に出ていたのか、パウロは何かを躊躇うようにしつつも口を開いた。
「リディスを見つけたのは1年前だ。それから俺達と合流して、今は一緒に暮らしてる」
「見つけたって……どこでですか?」
「………」
───そして、パウロは語ってくれた。
リディスが一人で転移していたこと。
人攫いに捕まり、半年間、奴隷のような扱いを受けたこと。
治癒術師として、毎日朝から晩まで働かされたことを。
「もう随分と元気になったがな。当時のことは、今も根強いトラウマになってる」
「じゃあ、さっきのは…」
「たぶん、牢屋って単語に反応したんだろうな。偶にああなるんだ」
……前世のルーデウスと同じだ。
自分をいじめていた連中が口に出していた特定の単語を聞くと、かつてのルーデウスも似たような状態になっていた。
体が竦み、どうしようもなく気分が悪くなる。
リディスも、きっと似たような状態なのだろう。
「体に異常はなかったんだが、心の方がまだ…ちょっとな」
「そう、ですか…」
「しかも、あの頃の生活が染みついちまったみたいでな。働いてないと落ち着かないそうだ」
何たることか。
10歳なのに社畜として馬車馬のように働かされたなんて。
ボレアス家で家庭教師をやっていたルーデウスにも気持ちはある程度わかる。最初の頃は休みがなかったし、目上の人間に囲まれた環境で働くのは色々と気を遣うのだ。
まぁ、リディスはコミュ力が強いし、パウロが来るまでうまく切り抜けたのだろう。さっきリディスを見て思ったが、雰囲気が変わったことや笑顔の質が変わったのは、きっとそのあたりが影響しているに違いない。
ルーデウスが魔大陸からの旅で成長したように、リディスもまた、過酷な労働環境下で成長したということだ。
しかし、トラウマになるのは仕方がないか。
リディスは体も弱いし、治癒魔術が使えるとはいえ、精神的に大きな負担がかかったことは想像に難くない。
ここは、半年で済んでよかったというべきだろう。
「あいつも当時のことはあまり話さないんだ。お前もあまり、その辺は突っ込まないようにしてやってくれ」
「わかりました」
リディスは気弱なところはあるが、根はしっかりとしている。今は辛いかもしれないが、いつか自力で乗り越えることが出来るだろう。前世のルーデウスとは違うのだ。
その後、今後の予定について軽く話し合いをして、その日は何事もなく解散となった。
………ルーデウスは、パウロの言うことを信じた。
双子の姉が、本当は何をされたのか、知ることはなかった。
あるいは、パウロがもっと深刻な顔をしていれば、深く突っ込んで聞いたのかもしれないが。
少なくとも、この話をした時のパウロは多少暗い程度であり、ルーデウスが危機感を覚えることはなかったのだ。
だから、頭の片隅にチラリとよぎった
それが当たっていたなんて。
当時のルーデウスには知る由もなかったのである。
真実を知るのは、これから数年後のことだった。
●〇●〇●〇●〇●
家族と再会してからの一週間は楽しく、賑やかな日々だった。
エリス、ルイジェルドも交えた顔合わせ、会食と、どれも順調だった。
まぁ、エリスに転移事件の真相を伝えた際は、さすがに心が痛んだが。
エリスは以前から覚悟はしていたというが、実際の内心はわからない。もしかしたらショックを受けている可能性もある。要注意だ。
さて、パウロ達との顔合わせはうまく行った。
ルイジェルドがリディスとノルンに前日に会っていたらしい。
なんでも、通行人をパウロと勘違いしてノルンが急に走り出したのだが、途中で転びそうになったところをルイジェルドが助けてくれたそうだ。
その際にリンゴを貰ったという。
そういえば、昨日は二人ともなぜかリンゴを持っていた。
妹を助けてくれたルイジェルドには兄として礼を言ったが、しかし、姉妹二人から好感度高めだったのでルーデウスはちょっと嫉妬した。
「先日は妹がお世話になりました。ほら、ノルンも」
「……こ、こんにちは。きのうはおせわになりました」
「気にするなと言っただろう。だが、礼は受け取っておく」
特に、ルイジェルドと会った際のノルンの反応は顕著だった。
片手でリディスの服を掴みながらも、しっかりと正面から向き合っている。
嬉しそうな顔をしていた。
自分には塩対応だったのに。
しかめっ面しか見せなかったのに。
「(くそっ、ルイジェルドめ……兄貴の俺を差し置いてノルンと仲良くなりやがって!お前のような子供好きの変態のロリコンに妹はやらんからな!)」
と、心の中で嫉妬の炎を燃やしたものだ。
無論、ルイジェルドがロリコン云々は冗談であったし、ロリコンの変態というのはどちらかというとルーデウスのことであったが。
いや、正確には、ロリコンでもある、というべきか。
あと、いつもは堂々としているエリスが、何だか妙に畏まった様子で自己紹介をしたのは面白かった。
「え、エリス・ボレアス・グレイラット…ですわ!」
カーテシーを披露しようとして、スカートでなかったことを思い出したのか、ロボットみたいな動きで直角にお辞儀をしていた。
狂犬のエリスにしては礼儀を弁えた挨拶だった。
いつもなら腕組みをしてふんぞり返るところだが、さすがにルーデウスの身内が相手となるとエリスも態度が変わるらしい。
……なお、これは将来を見据えてルーデウスの家族には出来るだけ気に入られたいという、彼女なりの理由があって精一杯丁寧な挨拶をしたのだが……この時のルーデウスにはわかっていなかった。
会食も楽しかった。
エリスは参加を希望したので、5人での食事だ。
ルイジェルドに関しては、後でパウロが飲みに誘って親睦を深め、改めてお礼をすると言っていた。
食事の会場もそれほど格式ばったところではなく、前世で言うなら精々ファミレスみたいな感じだ。ここならエリスの雑な食い方でも文句は言われまい。
それでも問題が起きたのは、さすがはエリスというべきか。
盛り上げ役としては中々優秀だったのだが、話題が偏りまくっていた。
「ルーデウスは凄いのよ!この前だって北聖を倒しちゃったんだから!」
エリスはちょっと暴走気味だった。
ルーデウスの話をすることが多く、その大半が褒め称えるもの。
妙に張り切って、今までのルーデウスの活躍を語った。
その大半はルーデウスが既に話したことなので、真新しいエピソードはなかったが、パウロとリディスは楽しそうに聞いてくれた。
しかし、我が家の小さなお姫様は面白くないだろう。
嫌いな兄の活躍など聞きたくない。
そう言わんばかりに、頬をぷくっと膨らませ、口に食べかすをつけたままプイっと顔を背けた。
「……おにいちゃんなんてきらいだもん」
「ルーデウスのどこが嫌いなのよ!」
「おしえないもん!」
「教えなさいよ!」
「いや!」
「(エリスさんちょっと勘弁して!これ以上嫌われたらお兄ちゃん死んじゃうから!)」
…残念ながらノルンとの仲はあまり改善されなかった。
まぁ、ルイジェルド人形をプレゼントしてからは、しかめっ面でもきちんと会話してくれるようにはなった。
無視されないだけマシと思っておこう。あとは姉と父に任せるしかない。
●〇●〇●〇●〇●
そして、出立の日を迎えた。
見送りには、パウロ、リディス、ノルン、そして捜索団のメンバーが幾人か集まっている。
まずは初志貫徹。
エリスをフィットア領まで送り届け、その後に捜索団の手が行き届いていない北方へ行って残りの家族を探すことになっている。
「…ルディ。このままミリシオンに残ってもいいんだぞ?」
と、パウロからは妙に引き留められたが、そのたびに冷静に諭した。
今のパウロは昔と違う。ルーデウスのことを守るべき子供と認識している父親だ。
ルーデウスは強く、魔大陸からの旅で経験も積んだ。
人族の領域でなら大概のピンチは切り抜けられるだろう。だが、それでも万が一がある。ここで行かせるよりは、手元に置いておきたいというのが親心なのだろう。
自分を心配するパウロの姿が前世の両親とダブって見えて、ルーデウスは少ししんみりとした気分を味わったものだ。
だが、結局パウロは折れた。
パウロは捜索団の指揮があるのでミリス大陸からは動けない。ミリスにもまだまだ難民が残っているし、その中に残りの家族がいる可能性は十分にある。
だったら、戦えないリディスとノルンをパウロに任せ、身軽なルーデウスが探しに行った方がいい。もしここで探しに行かずに留まったら、ルーデウスは一生後悔する。
そう言われてしまったら、パウロも強くは言えない。
探しに行きたいのはパウロも同じ気持ちなのだ。ルーデウスの気持ちがわかる分、無理に止めることは出来なかった。
パウロとの別れの挨拶を済ませ、小声で「……またね」と言うノルンに好感度が上がったことを察して内心でガッツポーズをしつつ、最後にリディスとの会話を交わす。
「行ってしまうのね……」
「はい。確約は出来ませんが、母様達は全力で探します。だからその間、父様とノルンをお願いします」
「ノルンはともかく、お父さんもお願いするの?」
「ええ。父様が頑張れているのは、きっと姉様が傍で支えているおかげでもあると思いますから。それに、もしも誰か他の女性に手を出したりしたら、また家庭崩壊の危機ですからね。しっかり見張っておいてください」
「フフッ、そういうことならわかったわ。ちゃんと見ておくわね」
そう言って微笑むリディスであったが、すぐに真剣な顔をして懐から何かを取り出した。
「ルディ、手を出して」
「?はい、どうぞ」
反射的に右手を出してしまったが、問題はなかったらしい。
ルーデウスの手首に何かを装着しているようだ。
「これは…?」
「これはお守り。ルディが無事でいますようにって、いっぱい祈ったから」
それは、紐を編んで作られたブレスレットだった。
ミサンガのようなものだろうか。
白と灰色がメインの地味な色合いだが、灰色を基調とした服を着ているルーデウスにはちょうどいいかもしれない。
「ただのお守りじゃないのよ?魔力を込めれば私の『治癒』の力が発動するわ」
「じゃあ、魔道具ってことですか?」
「うーん……魔法陣は刻んでないから、
魔道具は内部に刻まれた魔法陣に魔力を送ることで動く。
これには魔法陣が刻まれていないが、使用には魔力が必要だ。
魔道具と
「込めた魔力の量に関係なく、魔力を込めれば中級の治癒と同程度の効果を発揮するの。まだ試作品だから、一回だけの使い切りだけどね」
「す、凄い!凄くありがたいですよこれ!」
本心だった。
ルーデウスは治癒魔術を無詠唱で使えない。一回きりとはいえ、いざという時に魔力さえあれば回復出来るのは非常にありがたい。
お守りとしてはこれ以上ない逸品だ。
「ありがとうございます、姉様」
リディスは確かに成長した。
変わった所もある。昔の純粋さが薄れて来たのかもしれない。
だが、優しい所は昔のままだ。
いつもルーデウスのことを、家族のことを想って献身的に支えてくれる。
「無理だけはしないでね……いってらっしゃい、ルディ」
そうしてルーデウスは別れを告げ、フィットア領を目指して旅を再開したのであった。
遠ざかるルーデウス一行の背中を見送りながら、俺は面白くない気分を味わっていた。
だってさ、原作と流れ違うじゃん。
ノルンとの散歩中に白い肌のハゲマッチョ……ルイジェルドに会って、ルーデウス達がミリシオンに来ていることを俺は知った。
だから、少し時間をかけて散歩してから帰ろうと思った。
親子喧嘩は放置だ。
ノルンに喧嘩の様子を見せたくない。俺がやらかしたせいで現時点でもちょっと微妙だし、これ以上ルーデウスがノルンに嫌われるようなことは避けたい。
そして、後は仲直りする際にちょこっと協力してやればいい。それだけで二人からの評価はうなぎ登りになるだろう。
完璧な計画だった。
あっさりと失敗したんだけど。
……いや、そもそも始まってすらいなかったと言うべきか。
酒場に帰ったら、二人とも仲良く談笑なんかしちゃってさ。
すっげー和やかな感じ。
団員の皆さまも温かく見守ってるし。
どう見ても喧嘩なんてしてません。本当にありがとうございました。
……あ、あれれ~?原作と流れが違うよ~?(コ並感)
何が原因でどうしてこうなった?
パウロの心境に変化があったのか、ルーデウスがうまく切り抜けたのか。あるいはその両方か。
なんにせよ、『喧嘩を仲裁して好感度爆上がり作戦!』が、始まる前に終わっていたことを俺は悟った。
ま、まぁ仕方ない。こういうこともあるさ。
そもそも俺の存在がイレギュラーだし、流れが多少変わることだってある。
逆に考えるんだ。
喧嘩なんてしなくてもいいじゃないか、って。
そう考えた俺は、とりあえずルーデウスが滞在中に好感度を地道に稼ぐ方針へ切り替えたのだ。
……しかし、牢屋と聞いた時は頭痛がしたぜ。
思わず、人攫い共の所で暮らしていた頃を思い出し、連鎖的に前世の社畜時代を思い出して鬱になってしまった。すぐに戻ったけど。
そんで、後は大体原作と同じ流れだったと思う。
ルーデウスとパウロが喧嘩しなかったせいか、ギスギスした空気も流れず、大体はほのぼのとした平和な滞在になっただろう。
ルイジェルドは浪〇大輔ボイスだったし、エリスは見た目だけなら可愛いお嬢様だった。
ノルンの件は申し訳ないが、おっぱいを堪能させたからチャラでいいだろう。
それにお守りもあげたし。
万が一、イレギュラーが起きてルーデウスが死亡したら大変なので、以前から頑張って製作していたうちの、唯一の成功品だ。
将来的にはフェニックスの尾みたいな、蘇生出来るレベルのものを作ることを目標にしている。
いやマジで、お前に死んでもらったら困るんだよこっちは。
頼むから死なないでくれ。
俺を養ってくれ。
でもこれ、作ると滅茶苦茶疲れるんだよなぁ。
寿命を削り過ぎないように注意して作らないと。