side:シルフィエット
シルフィエット……シルフィはいじめられっ子であった。
髪色が緑だからという理由だけで、村の同年代の子達から何度もいじめを受けた。まだ幼いシルフィには、どうして自分だけがこんな酷い目に遭うのかがよくわからず、ただひたすらに悲惨な日々を送っていたのだ。
自分は一生こんな扱いを受けて生きていくのか。
そう思い、5歳にして夢も希望も見えない絶望の中にあったシルフィ。
しかし、ある時から全てが変わる。
いじめられることもなくなり、毎日を笑顔で過ごせるようになったのだ。
その変化に両親も喜んだ。
いつも俯いて暗い顔をしていた愛娘が、花の咲いたような笑みを浮かべるようになったのだから。
シルフィに変化を齎したのは、とある姉弟。
一人はルーデウス。
いじめっ子のソマル達を追い返して、対抗できるだけの力……魔術を教えてくれた少年。子供とは思えないほどの知識量を誇る少年は、狭い村の一部しか知らないシルフィに、計り知れない知恵を授けてくれた。
当時のシルフィにとっては、まるで神様のような人。
そして、初めて淡い恋心を抱いた、初恋の人でもある。
そしてもう一人。
泥玉を投げ付けられ、蹲るばかりだったシルフィを庇ってくれた。
当時は体格に差はほとんどなかった。自分と同じ小さい体だったけど、しかしその背中はとても広く、頼もしく感じたものだ。
お互いに同年代の異性との接し方がわからず、ぎこちない会話しか出来なかったルーデウスとシルフィの間に立ち、仲を取り持ってくれた人。
初めての同性の友達。
諸事情によりルーデウスが村を出てからは、唯一無二の友としてシルフィと親交を深めることとなった。
それが、リディスという少女である。
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実を言うと、ルーデウスが村を出るまでは、リディスと話したり遊んだりすることはそれほど多くはなかった。
出会ってすぐの頃は、よく三人で過ごしていた。
一緒に魔術の練習をしたり、遊んだり、お昼ご飯を外で食べたり、いじめっ子達を追い返したり。間違いなく楽しい毎日だった。
だが、ルーデウスとシルフィの間のぎこちなさが取れると、リディスが遊びに来ることはガクッと減った。
聞くところによると、リディスは家でメイドから家事炊事や礼儀作法、診療所の手伝いをして医療を学んだり、母親から治癒と解毒魔術について教えてもらったりと、中々に忙しい日々を送っていたらしい。
最初こそ寂しく感じたものの、いなくなったわけではないし、頻度は減ったが普通に会って話すことはある。だからあまり気にしていなかった。
そうして過ごす内に、二度目の大きな変化が訪れた。
ルーデウスが村を出てしまったのである。
当時は大きなショックを受けたものの、父に発破をかけられたシルフィは、ルーデウスを守れるくらい強くなろうと決意した。
強くなって、立派になって、あのルーデウスの隣にいられるような自分になろうと。
ある日、がむしゃらに体を鍛え始めたシルフィのもとにリディスはやって来た。
「強くなるのもいいけど、ルディと結婚するなら勉強も大事よ」
結婚という言葉を聞いて、思わず赤面してしまったシルフィの腕を掴み、少女は色んな所へ連れ出した。
診療所の手伝いをした。
「もしもルディが怪我をした時に動揺しないためにも、慣れておかないとね。もちろん、シルフィが怪我をした時にも」そう言われた。
姉弟の母親、診療所に勤めているゼニスは、何もわからないシルフィにあれこれと世話を焼いてくれた。
礼儀作法の勉強をした。
教えてくれたのはメイドのリーリャ。
真面目な人で、とても丁寧に教えてくれた。
貧乏な家に生まれたシルフィは礼儀作法なんてさっぱりわからなくて、苦戦することも多かった。
けど、隣で一緒に頑張るリディスが応援してくれたので、何とかなった。
剣術を学んだ。
ルーデウスを誘拐同然の手口で送り出す場面を目撃していたシルフィは、父親のパウロを怖がっていた。けど、実際に話してみると気さくでいい人だとわかった。
女の子に剣術を教えるのはちょっと……と渋るパウロをリディスが説得し、シルフィは無事剣術を学ぶことが出来た。
他にも、「今の内に赤ん坊のお世話に慣れておかないと」と言われ、数日泊まり込みで生まれて間もない赤ん坊、ノルンとアイシャのお世話をすることもあった。
狭い村で、可能な限り様々なことを経験した。
……シルフィはリディスに依存していた。
ルーデウスとは違う方向で頼り切りになっていた。
何もわからない自分を導いてくれる。わからないことがあったら、何をすればいいか迷ったらリディスに頼ればいいと。
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リディスへの認識が大きく変わったのは、ルーデウスがいなくなってから半年が過ぎた頃。
その日は暑い日だった。
いつもの丘の木の傍で魔術の修行をした後、リディスと共にお昼ご飯を食べてから、横になって休んでいた。
「ん……」
丘の上にはいつも爽やかな風が吹いている。
ついウトウトしてしまったシルフィは、そのまま寝てしまっていた。
シルフィは空を見上げ、それなりの時間眠ってしまったことを自覚した。
「(うわ、もうこんな時間だ。そろそろ帰らないと)」
シルフィの家は遠い。
まだ少し時間に余裕はあるとはいえ、何があるかわからない。暗くなる前には帰る、というのが、シルフィの家での暗黙のルールだった。
シルフィは隣で横を向いて寝転んでいるリディスに顔を向けた。
「ごめんリディス。ボクそろそろ帰らなきゃ」
「………」
「リディス?」
反応がない。
まだ寝ているのだろうか。
「まだ寝てるの?」
回りこんで顔を覗き込んでみる……シルフィは仰天した。
「う……ぁ……」
「リディス!?」
いつも太陽のような笑みを浮かべている顔が、今は苦し気に歪んでいる。
額には玉のような汗が浮かんでいるが、寝汗でないのはすぐにわかった。
顔は赤く、息も浅い。
シルフィは咄嗟に手のひらで額に触れてみたが、そこで感じた熱は尋常じゃなかった。
「(か、体が弱いってほんとだったんだ!)」
リディスの体が弱いのは知っていた。
よく咳をするし、自分の胸に手を当てて治癒魔術を使っているところを何度も見たことがある。
ただ、それだけだった。
激しい運動は出来ないけど、日常生活に支障はないようだった。
いつもシルフィの手を引っ張ってくれるその姿からは、不調で寝込む姿なんて想像も出来なかったのだ。
「リディス!しっかりして!」
何度か声をかけてみるが、リディスは唸るばかり。
意識があるのかないのか、微かに開いた目は焦点が合っていないように見えた。
意識がなければ、自力で魔術は使えない。
ならば、シルフィが治癒魔術を使えばいい。そう判断するのに時間はかからなかった。
「えっとえっと……初級のヒーリングでいいんだよね」
ヒーリングで症状を抑えている、ということは知っている。
シルフィはリディスの胸に手を当て、ヒーリングを無詠唱で使った。
ここで一つ、シルフィは知らなかったことがある。
確かに、リディスは普段からヒーリングを自身に使うことで発作を抑えている。ただし、これは症状が比較的軽い場合に限る。
眠っている間に発作を起こしてから、既にそれなりの時間が経過している。
今は『軽い』の段階をとっくに過ぎて、『重い』の段階に入っていたのだ。
ヒーリングでは対処できない状態に。
「な、なんで?なんで効かないの!?」
案の定、ヒーリングはほとんど効かなかった。
先ほどよりも呼吸が安定したように見えるが、気のせいと言われればその通り、という程度にしか効果がなかったのである。
その後も何度かヒーリングを使ったが効き目は薄く、中級のエクスヒーリングを使ってようやく少しだけ落ち着いて来た。
まだ意識は戻ってないようだが、あと何回かエクスヒーリングを使えば治まりそうだ。
だが、シルフィにはそれが出来なかった。
「(だ、だめ。これ以上使ったら倒れちゃう……)」
魔術を教わってから1年と少し。
ルーデウスの教えもあってシルフィの魔力量は急激に増えていたものの、それでも2歳から魔術を使っているルーデウスにはまったく及ばない。
おまけに、今日は魔術の修行をしていた。
今の内に魔力量を増やすため、ルーデウスの教え通りに魔術が使えなくなる限界ギリギリまで魔術を使用している。
眠ったことで多少は回復したとはいえ、もう限界だった。
仮に、無理してもう一度エクスヒーリングを使った場合、シルフィは間違いなく動けなくなってしまう。
その一回でリディスが意識を取り戻せば問題ない。
が、それはあまりにも分の悪い賭けだった。
かと言って、背負ってリディスの家まで行くのは難しい。
シルフィの家よりは近いとはいえ、シルフィが体を鍛え始めたのはつい最近だ。同年代の子を背負って行ける自信はなかった。
シルフィだけで行って、メイドのリーリャを連れて来るか。
しかし、その間リディスを放置することにある。
この辺は魔物なんて出ないが、可能性はゼロではない。
万が一があったし、一人にしている間に容態が悪化するかもしれない。
自分の判断一つで、友達の命が失われるかもしれない状況。
「(ど、どうしよう!どうすればいいの!?)」
シルフィはパニックに陥った。
冷静に考えれば、他にも対処法はあった。
もしもの時は火魔術を空に放って知らせるようになっていると、ルーデウスから聞いたことがあった。
診療所では、魔術を使わない応急処置の方法を学んでいる。
近くにも村人の家はある。
そこで事情を話して協力して貰えばいい。
村の子供達はともかく、大人の人達はシルフィを嫌ったりなんてしてない。快く協力してくれるだろう。
方法はいくらでもあったのだ。
だが、混乱したシルフィにはそれらのことが頭に思い浮かばなかった。
当然と言えば当然である。
シルフィはまだ7歳だ。まだまだ幼い子供が、意識のない友達を前にして冷静でいられるかというと……個人差はあるだろうが、少なくともシルフィには無理だった。
苦しむ友達を前にし、へたり込むことしか出来なかったのである。
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リディスが助かったのは運が良かったからだ。
あの後、たまたまリーリャが様子を見に来てくれた。
リーリャの足はすっかり治り、昔ほどではないがそれなりの身体能力を取り戻している。
リディスを背負ってあっという間に家に戻れたために、いち早く治療することが出来た。
ゼニスもそうだ。
今日はたまたま仕事が休みで、リーリャと共に自宅でノルンとアイシャの面倒を見ていた。
運び込まれたリディスを見てもゼニスは取り乱すことはなく、シルフィの目には至極冷静に対処しているように見えた。
「母なる慈愛の女神よ、彼の者の傷を塞ぎ、健やかなる体を取り戻さん『エクスヒーリング』」
ゼニスが中級の治癒を一度唱えると、リディスの容態は程なくして落ち着いた。
同じ治癒でも、シルフィの時とは効き目がまったく違う。
これも当然のことで、魔術というのは同階級のものでも術者の実力によって効果に差が出るのだ。
ゼニスの治癒術師としての腕前は、魔術を覚えて1年程度のシルフィでは及ぶべくもないものだった。
その後、目を覚ましたリディスはゼニスにこってりと叱られた。
元々、外出を許可したのはリディスが自分の体調を自己管理出来ていたからだ。今回はそれを怠ってしまった。
おまけに、一緒に居た友達にも大きな心配と迷惑をかけてしまった。
叱られている間、リディスは終始俯いたままだった。
ただ、自分が悪かったことは自覚しているようで、小さな声で「ごめんなさい」と謝っていた。
「ごめんね、シルフィ」
シルフィにも謝られたが、それにどう返したか、シルフィはよく覚えていない。
ただ、この件をきっかけとして、シルフィはリディスに依存することをやめたということだけは確かだ。
いつも元気に自分を引っ張ってくれていた人が、実は自分よりもずっとか弱い女の子だったと改めて認識したのである。
シルフィのように体を鍛えることも出来ない。
今はまだ同年代の中ではギリギリ平均的な体力ではあるが、このまま成長していけば他とは差が開いていくだろう。
治癒を使って誤魔化しているだけで、症状は改善されていないのだ。
シルフィが一方的に寄り掛かっていい相手じゃない。
むしろ逆だ。
リディスはルーデウスと同じく、シルフィを暗い日々から解放してくれた恩人である。同時に初めて出来た同性の友達……いや、親友と言っても過言ではない。将来的には義理の姉になるかもしれない人だし、もはや家族も同然だ。
「(ルディだけじゃない。リディスも守るんだ。ボクが二人を守れるくらい、助けられるくらい強くならなきゃ……!)」
シルフィは誓いを新たにし、より一層修練を積むようになった。
俺が助かったのは必然である。
ゼニスが診療所の仕事が休みなのは知っていた。
いつもはシルフィが帰ったら俺もすぐに家に帰っていたので、いつもより帰るのが少し遅かったら、ゼニスかリーリャのどちらかが様子を見に来る可能性は高かった。家族の皆は俺に対しては昔から過保護気味だからな。
というか、そもそも俺は意識を失ってなどいない。
その気になればいつでも自分で治癒を使えたのだ。
ゼニスとリーリャの目を誤魔化すのは難しいと思うかもしれないが、俺には自信があった。
まず、俺はここ最近ずっと元気だった。
寝込むことはなく、家事手伝いに勉強、診療所の手伝いと精力的に動いていた。ノルンとアイシャが生まれてからは張り切って妹の世話をしていたし、みんなすっかり安心していただろう。
体が弱いのは変わらないけど、きっと大丈夫。
しっかりしてるし、普通の人と変わらない人生を送ることが出来るはず。
そんな時に起きたのが今回の事件だ。
みんなさぞや慌てたことだろう。
実際、リーリャは意識のない(ことになっている)俺を、すぐさま抱えて家へ向かった。
意識のない人をすぐに動かすのは少々軽率と言わざるを得ない。移動の際も結構揺れたし、余程焦っていたのだろう。俺はリーリャのくそでかおっぱいを堪能出来て楽しかったけど。
そしてゼニス。
シルフィは後で「ゼニスさんはすごく冷静だったよ」と言っていた。
傍目には確かにそう見えたのかもしれない。
だが、今回のゼニスの対応は少しおかしかった。
俺の症状は見慣れているとはいえ、いつもなら必ず軽い触診をした後に治癒魔術を使う。
だが、今回はそれがなかった。
運び込まれた俺を見てすぐさま中級の治癒を使った。初級のヒーリングで様子見をすることもなく、最初から全力だ。
目を覚ました際に一瞬見えた不安げな顔。
内心は間違いなく穏やかではなかったはずだ。
普段明るい美人の曇り顔ってなんかこう……そそるよね!
そんなこんなで、俺はシルフィの懐に入り、彼女の庇護対象となることが出来た。
いやー、楽なもんだよ。
本来なら、シルフィは俺が何もせずとも様々な努力をする。
そこに敢えて俺が手を出し、依存に近い状況を作り出した。
散々頼れる人間を演じておき、今回は弱いところを見せた。
交友関係の狭いシルフィは、一度身内と認識した相手には甘いところがある。
俺に頼りきりになっていたことを後悔し、これからは俺を守り、助ける対象として認識するようになるだろう。恐らくはルーデウスに次ぐ優先順位にあるはずだ。
あとは、10歳までの約3年間。
より交友を深めていけば問題ない。
これでシルフィは攻略完了というわけだ。やったぜ。
頼むぜ、未来の義理の妹よ。
ルーデウスと共に俺を甘やかし、養ってくれ。
君には大きく期待しているぞ。
胸には期待してないけどな!
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あれからあっという間に日々は過ぎ、俺は9歳になっていた。
いつもの丘の木の傍で、独自に戦闘訓練をするシルフィをぼっーと眺めつつ、次のイベントについて考える。
『無職転生』作中最大のイベントがもうすぐ起きる。
いや、イベントっていうか、災害というか、悲劇というか事故みたいなものなのだが。
フィットア領転移事件。
甲龍歴417年。
ルーデウスの10歳の誕生日の翌日に起きる一大事件だ。
今、俺がいるブエナ村はアスラ王国という国のフィットア領にあるのだが、このフィットア領そのものが消えてなくなるのである。
文字通り、消える。
人も物も、建造物も、何もかもが消える。
とはいえ、『転移』事件というように、完全に消滅するわけじゃない。物は消えるが、人や馬などの生物は世界中に散り散りに転移させられるのだ。
まぁ、消滅しないから安全というわけじゃない。
むしろ、死んだ方がマシ、という目に遭う人がたくさん出て来る。
ある者は遥か上空へ。
ある者は紛争地帯へ。
ある者は迷宮の中へ。
飛ばされる場所は様々だ。
当たり前だが領内の人間は戦えない者の方が圧倒的に多い。自力で生き延びることが出来る者はほとんどいないだろう。
実際、原作でも多くの人が亡くなっている。
マジでヤバいイベントだ。
もしも俺がルーデウスのように魔大陸なんかに飛ばされたら、わけもわからぬまま死ぬだろう。戦えないし、魔神語も話せないしな。
転移場所もランダムとかいうクソオブクソなイベント。
だが俺には、この最悪のイベントを乗り切る必勝法がある。
転移の特性を利用するのだ。
転移というのは、転移する人に触れている人や物も、同じ場所に転移するという特性がある。これを知っていれば、このイベントを乗り切ることはそう難しいものじゃない。
転移を生き延びた人にくっついていればよいのだ。
では、誰についていくべきか。我が家の面子から考えよう。
まずはゼニス。
ゼニスはベガリット大陸の転移の迷宮に飛ばされる。
迷宮の奥で6年間も囚われの身となり、助け出された後も心神喪失状態となる。
次に、リーリャとアイシャ。
二人はシーローン王国に転移し、後に王宮で囚われの身となる。
転移から2年後、ルーデウスに助け出される。
そして、義妹(予定)のシルフィ。
アスラ王宮の遥か上空に転移して、色々あってアスラ王国第二王女のアリエルの護衛となる。
彼女達にはついていけない。
迷宮に転移とか死ぬ未来しか見えない。
ゼニスと同じように迷宮に囚われて心神喪失とか御免被る。
シーローン王国は安全かもしれないけど、第七王子のパックスが(性的な意味で)何するかわかんないからなぁ。安定しているとは言い難いよね。
アスラ王宮も却下。
転移直後はシルフィも余裕がなかったっぽいし、着地に失敗して二人揃って死ぬかもしれない。当然、俺一人で着地するのも不可能。だから駄目。
すると、選択肢は自ずと一つになる。
パウロだ。
パウロの転移場所はアスラ王国南部の草原。
着地で死ぬようなこともない。転移直後に魔物に襲われるようなこともなかったはずだ。
そしてパウロは強い。
三大流派全てを上級まで修め、S級冒険者として活動していた彼は旅慣れしている。幼いノルンを守りつつ、それなりの距離を旅することが出来るんだからな。
パウロに守られ続けたノルンは、少なくとも転移から6年後にルーデウスのもとに来るまで、危険な目に遭うことはほぼなかったはず。彼についていけば身の安全は保障されたようなもの。
勝ったなガハハ。
この戦い、我々の勝利だ!
なんで負けたか、明日までに考えといてください。