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DO MORE NAGASAKI 被爆80年、今できることを ~キャッチコピーとキービジュアルに込めたNHK長崎放送局の思い

1945年8月9日、午前11時2分。

長崎市上空で原子爆弾「ファットマン」がさく裂し、約7万4千人もの尊い命が奪われました。

あの日から80年。

長崎でも、被爆者の言葉を視聴者に届けることが年々難しくなっているという厳しい現実に直面しています。
“被爆者なき時代”が迫る中、被爆地にある放送局にできることは何か。NHK長崎放送局では多くの議論を交わし、一つの考えを定めました。

それは、長崎の人たちと一緒に世界平和に向けて行動し、核や戦争のない世界の実現を目指すこと。

NHK長崎では、これまで被爆者の方々の証言や体験をニュースや番組で放送し、記録してきました。
しかし、被爆者なき時代が近づく今、証言の記録だけではNHKの使命が果たせなくなる。核廃絶と世界平和の実現に向けて、若い世代のアクションにつながる発信が必要だと考えました。

そのためには、視聴者一人ひとりに訴えかける、心に突き刺すような強いメッセージが必要だと感じ、被爆80年の取り組みを象徴するキャッチコピー・キービジュアルの制作に取りかかることにしました。

この記事では、NHK長崎が打ち出した被爆80年キャッチコピー「DO MORE NAGASAKI 被爆80年、今できることを」に込めた思い、完成に至るまでの葛藤などについて紹介します。

松永 譲
2014年入局。事業・編成・営業・経理などさまざまな業務を経験。
現在は長崎放送局企画編成のデスクとして、部内の取りまとめ役を担っているほか、被爆80年広報プロジェクトを担当。

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平和記念公園への通り道

NHK長崎が目指す方向性

反戦と核兵器廃絶を訴える言葉として、「ノーモア・ヒロシマ、ノーモア・ナガサキ、ノーモア・ウォー、ノーモア・ヒバクシャ」が知られています。

これは昭和57年、ニューヨークで開催された国連軍縮特別総会において、長崎の被爆者であり、反核・平和運動家でもある山口仙二さんが演説の中で語った言葉です。「ノーモア」という言葉は、今なお反核キャンペーンの中で使われ続けており、ご存じの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

私たちは、この「NO MORE NAGASAKI」に込められた先人たちの願いを引き継ぐとともに、聞こえが良い言葉・かっこいいだけの言葉ではなく、実際に平和へのアクションを起こさせるようなキャッチコピー・キービジュアルを作りたいと考えました。
具体的には、見た人・聞いた人の心をざらつかせるような、そんな“刺さるメッセージ”を模索していくことにしたのです。

被爆80年のことし、NHK長崎では、ニュースや番組、イベントなど、さまざまな取り組みを通して、平和や核なき世界の必要性・重要性を発信していきます。
関わる職員一人ひとりが同じ目標に向かって突き進んでいける、指標となりうるキャッチコピーにもしたいと目標を掲げました。

プロジェクトが求めた「ざらつき」、それゆえの「懸念」

制作にあたっては、長崎局内のさまざまな部署から集まったメンバーで組織された「被爆80年広報プロジェクト」で検討していくことになりました。

そもそものミッション自体が難しいものであるのに加えて、多様な職種のメンバーが集まったプロジェクトだったため、言い回し一つとってもなかなか折り合いがつかず、話が前に進まない時も多くありました。

特に広告的にキャッチーな言葉ほど、日本語の文法として正確性を欠くということも時にはあります。一方で、正確性だけを重視していては、印象に残らない表現になってしまいがちです。
このあたりの調整が非常に難しく、メンバー間はもちろん、伴走してくれた外部のデザイナーやコピーライターとの折衝・調整にも苦労しました。

何度も議論を重ねていった結果、ついにプロジェクトとして掲げたい一つの言葉が浮かび上がります。それが「DO MORE NAGASAKI」でした。
先人たちが平和への願いを込めてきた「NO MORE NAGASAKI」を揺るぎないものにするために、次なるアクションやともに行動することを呼びかけるのが趣旨です。

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私自身、聞いたときにハッとさせられた言葉で、「心がざらつくとは、こういうことか!」と心の底から感じたことを覚えています。

しかしこの言葉は同時に、山口仙二さんが残してくれた偉大な言葉「NO MORE NAGASAKI」を揶揄やゆしていると受け取られないか、ふざけているという印象を与えないかという懸念。また、英語の文法的に海外の方に大きな勘違いをさせてしまうのではないかなどの大きな不安も伴っていました。

特に後者については、自分たちの発信が誤解を生むようなリスクをはらんでいるのであれば、放送局が公式に掲げるキャッチコピーとしてふさわしくないのではないかという不安が大きく、葛藤からプロジェクトとしての議論自体が止まってしまうほどでした。

「DO MORE NAGASAKI」は、掲げるべきか否か

とはいえ、どんな取り組みにも期限というものがある以上、決断しなければならないタイミングはやってきます。

NHK長崎として、「DO MORE NAGASAKI」を掲げるべきか否か――。

最終的に、長崎県内のキーパーソンたち(被爆者のほか、原爆に関する有識者、平和活動家など)に「DO MORE NAGASAKIというキャッチコピーについてどう思うか」と、記者やディレクターなど放送に関わる職員たちが聞いて回り、その結果を見て判断することになりました。

結果が報告されるまで、不安やドキドキが止まらなかったことを昨日のように思い出します。「ここから振り出しに戻って考えることになるのは、正直相当厳しい…」という担当としての偽らざる気持ちもありました。

そして提出されたのが、10名以上の方々の回答結果をまとめたレポートです。そこには、一部に英語表現を懸念する声もありましたが、

「平和活動をしている人たちが市民に『皆さん、一緒にがんばりましょう』と呼びかける声と重なる言葉」
「これはいい。これは思いつかなかった。今後も長く使えるコピー。よく考えた」
「反感を買うとは思わない。核廃絶が遠ざかる世界の現状と戦っている人たちの後押しになる」
「これまで呼びかけの対象になっていなかった多くの市民、県民にとって自分事として捉えられ、グッとくるインパクトがある」

といった肯定的な言葉が数多く並んでいたのです。
こうした温かく賛同してくださる言葉に、私たちは本当に勇気づけられました。

被爆者の方々や平和活動をしている方々からの実際の声を踏まえて、さらなる議論を重ねた後、被爆80年広報プロジェクトは、正式に「DO MORE NAGASAKI」というキャッチコピーを自信をもって掲げていくことを決定したのです。

キャッチコピーとキービジュアルがもたらす本質

限られた時間の中で、数多くの議論を重ねて生み出されたキャッチコピーとキービジュアルは、3月31日放送の「ぎゅっと!長崎」(総合テレビ・長崎県域・平日午後6時10分~)や地元紙などで、無事にお披露目することができました。

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キービジュアル

キービジュアルは、祈るために合わせた両手からハト(平和の象徴)が生まれるイメージで描かれています。「祈りの長崎」とも言われてきた歴史から、“祈り”や“温かさ”を象徴したビジュアルを採用することにしました。

掲載当日には地元紙の方から、驚きや感動の言葉とともに、「この広告はきっと多くの読者の心を捉えたはず」というありがたい言葉もいただきました。

キャッチコピーとキービジュアルは、時節を捉え、誰かの心を動かし、その先の行動を促すことこそが本質です。今回の「DO MORE NAGASAKI」が誰かの心を鼓舞し、背中を押し、一人でも多くの人々が平和に向き合う行動を起こすきっかけになったならば、それに勝る喜びはありません。

なおキャッチコピーは、5秒の短いプロモーション動画としても制作。オフエアだけでなく、「ぎゅっと!長崎」や番組間のスポットに付加するなどしてオンエアでも露出することで、NHK長崎の番組や各種企画から資材に至るまで、統一感を持たせた重厚的な展開を実現しています。

クラッチ(5秒動画)のナレーション入れをする山口アナ
👆画像をクリックするとクラッチが流れます👆

終わりに

2024年夏。長崎放送局へ赴任が決まり、私は業務引継ぎで初めて長崎市内に降り立ちました。その時に見上げた空は、とてもきれいで澄み渡る青空でした。

「こよなく晴れた青空を 悲しと思うせつなさよ」

自身も被爆し、重傷を負いながらも献身的に救護活動に従事された永井隆博士の著書をモチーフにした歌「長崎の鐘」では、1945年8月9日の空は悲しいと表現されています。

青空を見て、それがきれいだと思えることは、当たり前で普通のことのように思えるかもしれません。しかしそれは、平和な時代に生きているからこそ感じられることなのだと思います。

翻って世界の現状を見るに、核が使用されるリスクは日増しに高まっています。平和が少しずつ脅かされそうになっている今だからこそ、被爆地・長崎での勤務を経験した公共放送の職員として、当たり前のことが当たり前のままで、普通のことが普通であり続けられるように、反戦や平和を考えるメッセージやコンテンツをこれからも強く発信していきたいと思います。

最後に、キャッチコピー 「DO MORE NAGASAKI」に込めた思いを表現したステートメントメッセージをご紹介し、末筆とさせていただきます。


あの日から80年。
「被爆者なき時代」を前にして
世界では核の脅威が高まり、
危機感の中で安寧を願う毎日。
平和活動を続けなくては。
長崎は最後の被爆地でなければならない。
長崎から、さらなる行動を生み出さなければ。

だからきょう、私たちNHK長崎は
“DO MORE NAGSAKI”とメッセージします。
先人たちが願いを込めた“NO MORE”から、
みずからを奮い立たせる合言葉“DO MORE”へ。
この言葉を掲げることには、葛藤もありました。
何度も議論を重ね、たどりついた結論は
この提唱こそ、新たなアクションだということ。

NHK長崎は“DO MORE NAGASAKI”を胸に
この町から生まれた新しい行動を世界へ伝え、
動き出す人々を応援していきます。

さあ、長崎から ともに始めよう。


【NHK長崎・被爆80年広報プロジェクト メンバー】
有田 康雄・飯沼 智・江崎 浩司・佐藤 卓也・岡 肇・古山 彰子・平田 宗彬・松永 譲

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長崎の青空

NHK長崎 被爆80年プロジェクトホームページ

◇広報局noteの最新情報はNHKの経営広報Xアカウント「どーも、NHK」で発信しています。

DO MORE NAGASAKI 被爆80年、今できることを ~キャッチコピーとキービジュアルに込めたNHK長崎放送局の思い|NHK広報局
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