多人数の出資金で不動産物件を取得し、賃料収入を得る不動産投資商品「みんなで大家さん」の配当が遅延している問題を巡り、国が2023年2月、監督権限のある東京都に対し「投資家に損害を与える恐れがある」と警告する趣旨の情報提供をしていたことが、都への情報公開請求などで分かった。高いリスクがあることを知らないまま、投資家が出資をしていた可能性が浮上した。(井上真典)
◆「成田商品」の配当が7月からストップしている
「みんなで大家さん」は、不動産売買仲介会社「共生バンク」(東京都千代田区)グループが手がける。投資商品全体の出資者は昨年4月末時点で約3万8000人、総額2000億円に上るとみられる。
問題となっているのは、千葉県成田市内の開発事業「共生日本ゲートウェイ成田プロジェクト」を巡る主力商品(成田商品)。今年7月から配当が遅延している。都が販売業務を担うグループ会社「みんなで大家さん販売」=千代田区、大阪府が投資運用をしているグループ会社(大阪市)を、不動産特定共同事業法に基づき監督している。
共生日本ゲートウェイ成田プロジェクト
成田空港近くの東京ドーム約10個分(約45万平方メートル)の敷地に複合商業施設やデジタルドーム、ホテルなどを計画する大規模開発。共生バンクグループが用地を取得し、2019年10月、千葉県成田市から開発許可、県から農地転用許可を得て造成工事を始めた。工期は3度にわたって延長され、4年8カ月の遅れが出ている。現在も更地の状態で、今年1月末時点の事業全体の進捗(しんちょく)率は2.3%にとどまる。プロジェクトを巡る成田商品は、想定利回り7%をうたっている。
◆国が2023年に都へ送った文書には
開示文書によると、同法を所管する国土交通省と金融庁が2023年2月、みんな社への対応と題し、「取扱注意」と記載された文書を都に送付。出資金額の急増を受けた対応について4ページにわたって記載があったが、ほとんどが黒塗りだった。
本紙は、文書を出した根拠や内容を国交省に質問したが「個別商品の評価に関わり、コメントできない」と説明せず、金融庁も回答しなかった。
都と同社が争う民事訴訟の資料によると、都側は2023年2月に国から「投資家に損害を与える恐れがある」と情報提供を受けたとした。
◆出資者への説明不足を理由に、都が業務の一部停止を命令
成田商品は、2020年11月に一口100万円で販売開始。関係者によると、その直後に国が大阪府に調査を依頼し、府の報告などを基に都へ警告したとみられる。これを受けて都は、事業計画や投資家への情報開示などについて同社に繰り返し説明を求めた。
その結果、2023年5月の事業計画変更の際、出資者に十分な説明を怠ったとして、都と府は2024年6月に業務の一部停止を命令した。
国の警告から命令までの約1年4カ月間で、投資家からの出資額は約850億円増え、計約1500億円にまで膨らんだ。
◆「なぜこのような商品が成立するのか理解しがたい」
共生バンクグループは、都と府に処分取り消しを求めて提訴。訴訟資料によると、都側は、投資家へのリスク説明が足りず、適切な投資判断ができないと指摘し、「なぜこのような...
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