アインシュタイン稲田さんだけではない!著名人のアカウント乗っ取り、そしてあなたも!? #エキスパートトピ

森井昌克神戸大学 名誉教授
イラストについては一部、生成AIを利用

お笑いコンビ「アインシュタイン」の稲田直樹さんのSNSアカウントが不正アクセスされ、本人を装った投稿で名誉を傷つける事件が話題となっています。著名人のSNSなりすまし被害は今に始まったことではなく、SNSがビジネスや情報発信の基盤となる以前から問題視されてきました。この4〜5年で所属事務所や企業がセキュリティ対策を強化してきたにもかかわらず、被害は減少していません。背景には、パスワードの推測リスクやSNS利用者の意識の低さに加え、拡散力の高いプラットフォーム特有の二次被害の構造的問題があります。

ココがポイント

芸人インスタに不正ログイン 容疑で男再逮捕、パスワード推測か―アインシュタイン稲田さんら被害・警視庁
出典:時事ドットコム 2025/9/5(金)

「殺害予告来ている」稲田のSNS乗っ取り事件 きっかけとなった暴露系ユーチューバーが緊急生放送
出典:スポニチアネックス 2025/9/6(土)

アインシュタイン稲田「インスタ乗っ取り犯」逮捕で専門家が指摘 “犯人扱い”した人々の「法的責任」
出典:FRIDAY 2025/9/7(日)

エキスパートの補足・見解

今回の稲田直樹さんのSNS不正アクセス事件には、大きく二つの問題があります。

一つは、著名人アカウントが容易に乗っ取られるリスクです。SNSがビジネスに不可欠となる中、頻繁な投稿を優先するあまり、推測されやすい安易なパスワードが使われがちです。過去にはLINEのグループアカウントが乗っ取られ、寸借詐欺や不正請求へ悪用された事例もありました。著名人であればあるほど公開情報が多く、プライバシーに関わる推測可能なパスワードは極めて危険です。もう一つは、二次被害の拡大です。乗っ取られたアカウントの不適切な投稿が、第三者によって面白半分や収益目的で拡散され、被害者の名誉をさらに傷つけるケースが増えています。SNSインフルエンサーが意図的に「炎上」を煽る例もあり、この構造は一般利用者にも影響します。

対策として、複雑なパスワード設定や二要素認証の導入は必須です。同時に、拡散される情報を鵜呑みにせず、事実確認を怠らないリテラシーが求められます。被害を防ぐには、技術と意識の両面から備えることが欠かせません。

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神戸大学 名誉教授

1989年大阪大学大学院工学研究科博士後期課程通信工学専攻修了、工学博士。同年、京都工繊大助手、愛媛大助教授を経て、1995年徳島大工学部教授、2005年神戸大学大学院工学研究科教授(~2024年)。近畿大学情報学研究所サイバーセキュリティ部門部門長、客員教授。情報セキュリティ大学院大学客員教授。情報通信工学、特にサイバーセキュリティ、情報理論、暗号理論等の研究、教育に従事。内閣府等各種政府系委員会の座長、委員を歴任。2018年情報化促進貢献個人表彰経済産業大臣賞受賞。 2019年総務省情報通信功績賞受賞。2020年情報セキュリティ文化賞受賞。2024年総務大臣表彰。電子情報通信学会フェロー。

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