地元で「セクハラ医師」とうわさされ…なり手不足の学校医、健康診断で高まる緊張と不安「疑われるくらいなら引き受けたくない」
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セクハラを疑われるくらいなら、学校医を引き受けたくない―。小中学校の健康診断を担う学校医のなり手が広島県内で不足している。一因には、トラブルを警戒する医師の増加がある。健診での子どものプライバシーや心情を重んじる傾向が強まる中、子どもの体に触れることも多い医師側が緊張を強いられている。 【一覧】学校医たちの苦悩 県東部の学校医の男性は2023年度と24年度の健診後、地元で「セクハラ医師」とのうわさを立てられた。思い当たるのは女の子のひざに手が当たったかもしれないこと。それでもうわさは広がり、どうすることもできなかったという。 この学校医が所属する医師会の理事は、子どもの服の狭い隙間に聴診器を入れて動かすと意図せず手が乳房に触れてしまうこともあるとする。そのたびに医師が「子どもや保護者に苦情を言われるのではないかと強い不安に襲われている」と、問題の深刻さを訴える。 子どものプライバシーや心情を重視する社会の動きを受け、文部科学省は2024年1月、全国の教育委員会に健診の際は「原則、着衣で受診。必要に応じて医師が体操服などをめくって視触診する」と通知した。 かつて上半身裸での受診が当たり前だった小中学校の健診の様子は一変。健診会場に仕切りを設け、診察の様子を他の子どもに見られない工夫をしている学校もある。セクハラを疑われた学校医も直接体に触らないよう養護教諭に子どもの服をめくってもらうなどの配慮をしていたという。 子どもや保護者の権利意識の高まりは一方で医師の萎縮を生み、学校医の確保が難しくなる一因と指摘されている。日本医師会は24年5月にまとめた学校医を確保するための方策に、学校医が安心して活動できるよう、訴訟が提起された場合などに専門的な支援をする教育委員会内の「体制の整備が重要」との文言を盛り込んだ。 県医師会学校保健担当の天野純子常任理事は「皮膚や脊柱の異常などをきちんと診断するために脱衣を求めることもある。学校や親にも理解をしていただきたい」と話している。
中国新聞社
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