前回までは、民泊の良い側面を中心に伝えてきましたが、もちろん大変なこともあります。最終回では、民泊事業のリスクや対策についてまとめてみます。
■最大のピンチ、新型コロナウイルスの猛威
ここまで10年以上民泊を続けてきましたが、最大のピンチはといえば、新型コロナウイルスの影響で旅行客が激減したことでした。
2020年のオリンピックに向けて民泊需要も上がるだろうと、多くの事業者が部屋数を増やしていたタイミングでした。
私も例外ではなく、オリンピック期間中は通常の5倍以上の価格を設定していたのですが、それでも半年前から予約が入り始め、開催が近づくにつれどんどん埋まっていきました。
そして2019年末、新型コロナウイルスが流行り始めました。オリンピックの予約は全てキャンセルになり、緊急事態宣言の際は、日本人の予約も一切入らなくなりました。
賃貸で営業していた物件の大半が赤字状態でしたが、翌年に延期されたオリンピックを希望に運営を続けました。
ところが、翌年のオリンピックは史上初めての無観客での開催となり、予約はほとんど入りませんでした。世界中で移動が制限されるようなムードになり、オリンピック以外での来日客もほとんどいない状況で、赤字は続きました。
その当時、売り上げゼロが続くよりはましと思い、日本人向けに賃貸物件と同じくらいの価格で貸し出すこともしましたが、水道光熱費や消耗品がこちらの負担になるため、変わらず厳しい状況が続きました。
当時、気がかりだったのが、仕事を外注している人たちのことでした。例えば清掃の人の雇用を維持しなければならないので、一泊の価格をかなり下げて、清掃費用がギリギリ払える値段に設定にするなど、なんとか雇用が維持できるよう努めました。
1年、2年と月日が過ぎていきます。日本は世界から見ても、外国人観光客の受け入れがかなり遅かったので苦しい期間は長く続きました。あともう少し、あともう少しと思って粘り続けました。
歯を食いしばっている耐えていると次第に外国人需要も回復してきました。当時、手放さなかったからこそコロナ明けに50件で民泊事業を行うことができたのでそれはよかったのですが、それも結果論で、中には粘ったことで損失が大きくなった人もいたと思います。
実際に、私の知人でもコロナ前に物件を購入したものの返済ができなくなって売却した大家さんがいました。
そんな中、私が生き残れた要因には次のようなものがあると思います。
・市場価格よりも割安で物件を購入し、リフォームも自分が入って安く仕上げていた
・物件の管理を自分でしていた(管理手数料がかからない)
・1Fは飲食店に貸していたため、一定の賃料が入ってきていた
以上のような元々の利益が出やすい体制だったことに加え、時期に応じて、次のような手も打ちました。
・補助金、助成金で改装し、レンタルスペースとして貸し出し
・補助金、助成金で改装し、日本人の長期滞在向けにシフトチェンジ
・海外からの帰国者向けに貸し出す(14日間の隔離期間があったため)
世の中の変化に対応する形で柔軟に運用を変更するなどして、都度対応していました。
それでも高額の家賃の物件は赤字でしたし、スタッフの人件費や事務所の家賃、自分の給料や家賃(すでにサラリーマン退職後だったため)も必要だったので、相当な赤字が出ていました。
コロナ融資も借りましたし、自分で清掃に入ったことも何度もあります。こうして私はなんとか生き残ることが出来ましたが、運営代行にお願いしていた人や、民泊の利回りを想定して借金をし、物件を購入していたオーナーの苦悩は相当なものだったと思います。
■トコジラミ問題
去年、トコジラミの大量発生がニュースになったのをご存じでしょうか?実はそのずっと前に、うちの民泊物件でもトコジラミが発生してしまいました。宿泊者の方から、「滞在中に虫に刺された」というクレームが入って気づきました。
知らない方のために説明すると、トコジラミとは、半翅目トコジラミ科に属する吸血性の昆虫です。別名として南京虫(なんきんむし)や床虫(とこむし)とも呼ばれます。主に人間の血を吸い、夜間に活動する習性があります。
成虫の大きさは約5~7ミリメートルで、ベッドや家具の隙間、壁の裂け目などに潜み、宿主が眠っている間に皮膚を刺して吸血します。
刺された箇所は激しい痒みや赤い腫れを引き起こします。繁殖力が非常に強くゴキブリなどを殺せる殺虫剤でも殺せない厄介な虫です。
当時はトコジラミの存在を知らなかったので、ダニかなと思ってダニ対策を講じたり、ダニ駆除業者にお願いしたりしていました。ところが数ヶ月経つと、また発生して、まさにイタチごっこのような状態になってしまいました。
どうしたものかと考えている間に、複数の部屋を団体で借りているゲストの部屋から部屋への移動などによりトコジラミが移動してしまい、被害が数部屋に広がりました。
正体がわかり、専門の業者に依頼しましたが、トコジラミの生態はわかっていないことが多く、駆除が難しいため、時間がかかりました。例えばトコジラミは、人の血を吸う以外の行動をせず、何年も餌を食べなくても生きられるそうです。
業者さんを何度か変えて、最後に辿り着いた業者さんが「私たちは確実に駆除できます」と言ってくれ、実際にそうなりました。
それまでに営業を何度もストップしたり、お客様へ補償を支払ったり、何度も業者さんに来てもらったりしたため、大きな出費となりました。
■宿泊費を下げるとゲストの質が・・・
コロナの間は宿泊費を普通の賃貸くらいまで下げていたこともあり、言い方はよくないですが質の悪いお客様も多く来られました。
例えば、ある3人組は雨の日に屋根の上で裸でシャワーを浴びたり、「ねずみの音がして眠れない、雨漏りがしたので家賃を払わない」とゴネたりと、散々でした。
別のゲストは何ヶ月も滞在していたのですが、たびたび宿泊費が払えず「待って欲しい」と言ってきました。そんなある日、警察から電話があり、ゲストが「詐欺の幇助で逮捕されて有罪が確実なのでしばらく出られない」と言われました。
部屋に入ると信じられないくらい荒れていいました。私がゴミを捨てて、ゲストの荷物をまとめました。一部の荷物は弁護士が引き取りに来たものの、いまだに預かったままのゲストの荷物が倉庫に眠っています。
このように様々なトラブルがありましたが、10年間以上、数十部屋の民泊を運営してきての感想は、「ほとんどの方が良いゲストさんで、そんなに大きなトラブルは滅多に起きない」ということです。
今から民泊をやりたいと思っている方、どうか安心してください。
■これからの民泊市場で勝ち抜くには
最後に、これからの民泊市場で勝ち抜いていくために何をすればいいのかをお伝えします。
2023年は増える一方だった民泊物件ですが、2024年に入って撤退の話も聞くようになりました。実際、民泊事業を取り扱う、M&Aのサイトには、2023年はほとんど売却案件がなかったのに、2024年になってからかなり増えてきました。
これには「儲かっている間に高値で売ってしまいたい」という他に、「利益が出ないので撤退したい」というケースもあります。こういう話を聞くと、今から始めるのはもう遅いんじゃないか?と心配される方もいると思います。
ただ、私自身の印象としては、「まだまだ大丈夫」だと思います。第2話にも書きましたが、インバウンドの数はこれからも伸びる可能性が極めて高いこと、そして、日本人が民泊を利用する割合が徐々に増えていくこと等がその理由です。
私が注目しているのは、空き家の活用です。東京都の2018年(平成30年)の空き家率は10.6%でしたが、2023年には、13.8%(2024年12月時点)に増加しています。全国でも空き家の数は過去最高となり、今後も増え続ける見込みです。
ただし、参入障壁がそれほど高くないビジネスなので、これから勝ち抜いていく為にはいくつかポイントを抑えておく必要はあります。
供給が増え続けているため、昔のように簡単には儲かりません。何も知らずに業者さんから紹介された物件を高い家賃で借りて、管理も業者に丸投げでは、よほど良い物件でない限り、利益を出すのは難しいでしょう。
逆に、きちんと勉強して良い物件を見つけることができれば、利益を出すのはそれほど難しくはないのも、民泊の素晴らしいところです。
國分さんが運営する戸建民泊の室内
■お金以外の面白さもある民泊の魅力
民泊には、ビジネス以外の面白さもあります。外国人ゲストをお迎えして観光したり、食事をしたりすることを楽しんでいるホストの方も沢山いらっしゃいますし、そういった楽しみ方ができるのも民泊の魅力の一つです。
私も自宅で民泊をしていた時は、世界中の人と話をしたり、観光をしたりして、どんどん友達が増えていきました。色々な価値観に触れることで視野が広がりましたし、貴重な経験をさせてもらったと思っています。
現在、九州等の地方の観光地でも開業の準備をしています。旅行が好きなので、仕事として好きな街に行けるのもこの仕事の魅力だと思います。
私の周りには、専業主婦の方、会社員の方、リタイア後に始める方等がいらっしゃいます。シングルマザーで仕事をしながら、民泊でも副収入を得ている方もいます。やる気と行動力さえあれば、どなたでも始められるのが民泊の魅力です。
すでに不動産投資をされている方は、かなりのアドバンテージを持って始めることができると思います。まずはAirBnbを使って、ゲストとしてご自身が民泊を体験してみると良いのではないでしょうか?