元動画配信業のへずまりゅう氏(34)が奈良市議選(13日告示、20日投開票)に出馬する。同市の奈良公園では外国人観光客の増加に伴い、「奈良のシカ」に対する暴行も確認されており、へずま氏は昨年7月からシカを守るパトロールを開始。「1日平均500万回閲覧」(へずま氏)のX(旧ツイッター)で活動を発信している。へずま氏を巡っては「迷惑系ユーチューバー」として世間の非難を浴び、逮捕もされた過去がある。産経新聞のインタビューに「迷惑系~」と決別した経緯を語った。
もっと奈良のためになりたい
──奈良市議を目指している
「自分が市議になれば、奈良公園も、もっと変わるのではないかと思った。行政でパトロールする人数も監視カメラも少ない。議員になれば発信力や信頼も増して、多くの人に響く。もっと奈良のためにできるのではないかと思っている」
──奈良県は4月、シカに暴行を加えるなどの加害行為を新たに奈良公園内の禁止行為に追加した
「県議会が変えてくれた。行政が動いてくれた」
──シカを守る活動を始めた経緯は
「昨年7月、外国人とみられる人がシカを蹴る動画が海外も含め拡散された。もともと動物が好きで、いてもたってもいられず、東京から奈良公園に通ったが、かなり被害に遭っていた。交通費も宿泊費もかかるため、今年1月、奈良に引っ越した」
「他の仕事との兼ね合いで、月に25日くらい、朝から夕方まで奈良公園をパトロールしている。公園は東京ドーム140個分の広さがあり、『いま、シカさんが外国人に蹴られました』と連絡を受けては、駆け付けて注意している」
──被害の実態は
「何もない日もある。立て続けに3件、4件殴られた、蹴られた、という日もある。シカが観光客に引っ張られたり、ゴミを食べさせられたりもしている」
「仲間のボランティアとゴミ拾いをしている際、目の前でいきなりシカを殴ったり蹴ったりする外国人もいた。まず注意するので撮影できないこともある」
中国人だから「悪い」、ではない
──「外国人がシカを暴行している」とSNSで指摘している
「暴行した人が、中国語や韓国語の紙が貼られた観光バスに乗り込むなど国籍を確認した上で、『外国人だ』と発信している。明らかに外国人と思われても、『僕は日本人』と言い張る人もいる。そういう場合、(SNS発信は)お蔵入りになる」
──シカを守るという行為を、中国人という属性で判断していないか
「マナーのなっていない中国人観光客は多い。でも、中国人だから悪い、ではない。シカを殴ったり蹴ったりする行為が悪い。悪いことをする人を注意している。日本人がやっても注意する。そこは間違いない。シカを殴ったり蹴ったりする人にはブチ切れます」
「日本人がシカを殴ったり蹴ったりする姿は見たことはない。ゴミを食べさせる日本人はいた。その時は『ふざけるなよ。シカさんにゴミを食べさせたら、おなかの中にゴミがたまって死んでしまう』と注意した」
「もちろん優しい外国人もいる。先日、中国人の子供がシカを踏みつけた際、欧米と思われる観光客の女性が、子供の目を見て強く『NO』『NO』─ダメでしょ、と教えてあげていた。すごくうれしかった。この方みたいに注意できる人は本当にウエルカムだし、賛成だ。その様子を『奈良公園が優しさで溢れますように』と投稿したら『優しい外国人の方もたくさんいる』といったコメントも多かった」
迷惑系~の過去「愚かだった」
──奈良を訪れる外国人観光客に対する思いは
「シカを殴ったりも、蹴ったりもせず、奈良の良さ、日本の良さを楽しんでもらいたい。自分も海外に行くことがあれば、その国をリスペクトし、楽しく旅行して、帰りたいと思っている」
──「迷惑系ユーチューバー」の過去がある
「…浅はかだった。有名になりたいという気持ちがエスカレートしていた。『へずま、もっとやれ』『捕まってもいい』といったコメントで周りが見えなくなっていた。バズればいい、有名になればいいと思っていた。愚かだった」
──なぜ変わったのか
「昨年1月の能登半島地震の後、石川県輪島市に行き、みそラーメンの炊き出しを行ったり、トイレットペーパー、ハンドクリームなど物資を届けたりした。ラーメンを提供した後に、被災者に『へずまさん、本当に変わりましたね』『体が温まりました』『本当に感謝しています』といわれた」
「周りの人が悪く言われ、苦しかった」
「気持ちよく東京に戻って、また石川に行ったが、(再会した被災者から)『ちょっと言いづらいんですけど、他の方に<へずまさんがいいことをしてくれた>と話したら、<あいつのこと応援してるの?能登に売名しに来ているだけじゃない。ただの迷惑系だよ。ダメされない方がいい>みたいなことを言われた』と」
「その言葉を聞いて、ものすごく苦しかった。本当に心が苦しくなった。自分が迷惑系~をやってきたのは、その通りだ。ただ、周りの人も悪く言われる。自分を応援してくれる人まで自分のせいでたたかれてしまう。自分が変わらないと、いつまでも一緒だと思い、心を入れ替え、昨年5月半ばまでボランティアを継続した」
──なぜ能登でボランティアをしようと思ったのか
「最初に行ったのが(発災翌々日の)1月3日。山口県の実家で、震災のニュースを聞いた。父さんから『お前さんざん、世間に迷惑をかけたんだから、今、行け。行かんかったら、お前男じゃねえぞ』と。嫁からも同じことを言われた」
「徐々にシカを殴ったり蹴ったりする行為は減ってきている。応援してくださる方も徐々に増えている。シカさんはかわいい。自分自身本当に変わろうと改めて思っています」(聞き手・政治部兼デジタル報道部 奥原慎平)