「けがした」報道は誤り、高校「訂正する」 野球部監督の体罰問題 部員「殴られたという認識ない」/兵庫・丹波篠山市
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兵庫県丹波篠山市のスポーツ振興官や、県立篠山産業高校野球部の監督を務めた長澤宏行氏(72)=8日付で辞任=が、部員の頭をはたいた問題で、当事者となった部員Aさんと保護者がこのほど、丹波新聞社に思いを語った。Aさんは、「はたかれたことは事実」と認めつつ、「先生との信頼関係の中でのことで、暴力を受けたと思っていない。また、一部報道で、けがをしたとか、自分から殴られたことを訴えたとあるが、けがはしていないし、自分から訴えてもいない」と否定した。一方の高校側は会見を行い、「一部報道については、学校の説明が間違っていた。訂正する」と謝罪。ただ、「本人は当初から、『殴られた』という言葉を使っており、高校野球連盟への報告書の内容も承認している」とするなど、食い違いが生じている。 高校や市によると長澤氏は7月10日に部員同士の紅白戦を行った際、けがをしているのに出場しようとしたAさんを呼び出し、「けがが長引くことになる。よく考えなさい」と頭をはたいた。 Aさんによるとこの翌日、授業中に友人たちと会話する中で、一人がAさんに対し、「鼻が曲がっていないか?」と言い、野球部の友人が「昨日、先生に殴られたからじゃない?」と言った。「冗談話だった」(Aさん)とするが、この話を教師が聞いており、聞き取りが行われたという。 同校は全部員に聞き取りを行い、何らか手が出たことを目撃した部員がおり、否定する証言もないことを確認。長澤氏も手を出したことは認め、謝罪している。 だが、事案が公になった8月26日以降の報道では、「部員がけがをしていることに教師が気づいて発覚」というものや、「授業中に部員が『顔が痛くて授業に集中できない』と訴えた」などとする報道機関もあった。 この違いについて、同校の谷昌亮校長は、「生徒(Aさん)の主張は報告書と合致している。詳細は分からないが、取材対応をした職員が事実と違うことを言った。謝罪して訂正する」とした。 また、Aさんは、「聞き取りで『殴られたのか』と聞かれたので、『はたかれたが、殴られていない』と答えた。その後、『はたかれたことも殴られたのと同じ』と言われた」と主張するが、谷校長らは、「当該部員も現場を目撃した部員も、最初から、『殴られた』という言葉を使っている」とし、証言が食い違っている。 ほかに、Aさんは、「『うそをついたら授業を欠点にするぞ。欠点にされたくなかったら、正直に話しなさい』と言われた。けれど、『別にかまいません』と答えた」とする。保護者も「三者面談の時に、こういう聞き取りの仕方はおかしいと指摘した。その後、『不適切な発言だった』と謝罪の電話があったが、謝って済む話ではないし、現状では受け入れる状態にないので保留にしている」と話す。 一方、谷校長は、「保護者から苦情があったことは事実だが、当該教員に確認したところ、『言っていない』としている。また、報告書にはその教員が言ったことは一切採用していない」とした。 さらに、保護者は、「息子は指導されても仕方なかったことなので、『大ごとにしないでください』と言ったのに、その後、学校から何の連絡もなく、報道で高野連などに報告したことを知った」と言い、「仮に自分から訴えたとした場合、自分たちは〝被害者〟。報告書を出す前に、自分たちに内容や提出することの説明があるべきではないのか。報告もなく、しかも間違った報道をされ、意味が分からない」とした。谷校長は、「高野連から『保護者の了解を得る』という指示はない」とした。 直近の保護者会では、「高野連に報告書を再提出する際に、Aさんが内容を承認した」と報告されたが、保護者によると、Aさんは承認した認識はないという。保護者は、「時系列や『はたいた』ということは、長澤先生も含めて全員が認めていることなので息子も承認する。ただ、それが体罰や暴力であったのかというところまで含めて、全てを承認したわけではない」とした。 Aさんは、「報道を見た人から、『鼻、大丈夫?』などと言われるのもしんどい」とし、「高校生活自体は楽しいし、野球も続ける。いつもの日常が戻ってきてほしい」とした。 長澤氏は神村学園(鹿児島)や創志学園(岡山)の監督として甲子園に出場。2022年、父が丹波篠山市出身という縁などでスポーツ振興官に就任し、派遣という形で篠山産業高校野球部を指導していた。今月8日、市に、「騒動に対する責任を取る」として退職願を提出し、受理されている。
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