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政府の外国人政策 「ともに暮らす」を第一に

外国人との秩序ある共生社会推進室発足式で職員を前に訓示を行った石破茂首相(左奥)=首相官邸で2025年7月15日午前10時19分、平田明浩撮影 拡大
外国人との秩序ある共生社会推進室発足式で職員を前に訓示を行った石破茂首相(左奥)=首相官邸で2025年7月15日午前10時19分、平田明浩撮影

 規制を強化するばかりでは、外国人の権利が制約されかねない。地域社会の一員として暮らせる環境を、まず整えるべきだ。

 政府が省庁横断の「外国人との秩序ある共生社会推進室」を設置した。共生をうたうが、実際は規制をさらに強めるための組織だ。

 これに先立ち、治安対策の一環として「不法滞在者ゼロプラン」がまとめられた。在留審査の際に、社会保険料などの未納を考慮する方針も示されている。

 外国人の増加とともに、ルールを守らない事例が起きており、「国民が不安や不公平さを感じている」と政府は強調する。

 地方でも同様の動きが出ている。埼玉県の大野元裕知事は、トルコ国籍者に対する短期滞在の査証免除を一時停止するよう、外務省に要望した。クルド人が念頭にあるとみられ、「難民申請を繰り返す人が多く滞在し、不安の声が寄せられている」と説明する。

終業後、フィリピン人技能実習生たちに日本語を教える日本人スタッフ=愛媛県今治市で2024年9月20日午後6時0分、鶴見泰寿撮影 拡大
終業後、フィリピン人技能実習生たちに日本語を教える日本人スタッフ=愛媛県今治市で2024年9月20日午後6時0分、鶴見泰寿撮影

 しかし、治安の悪化を示すようなデータはない。全国的に見ても、外国人による刑法犯の検挙件数は近年、横ばい傾向にある。

 出入国や在留の管理は必要だが、人権が不当に侵害されることがあってはならない。

 懸念されるのは排外的な風潮の広がりだ。参院選では、外国人に対して厳しい政策を打ち出す政党が相次いだ。

 地域であつれきが生まれる背景には、外国人が社会に溶け込めていない現状がある。行政による支援は不十分だ。

 社会生活には日本語の習得が不可欠だが、民間団体やボランティアに頼っているケースが多い。学ぶ場や教師を公費で確保する必要がある。社会の決まりごとやマナーを理解してもらう機会を提供することも重要だ。

 全国知事会は、国が責任を持って共生社会の実現に取り組む体制の整備を提言している。

 政府は労働力不足を補う目的で場当たり的に外国人を受け入れる一方、移民としては扱ってこなかった。橋本直子・国際基督教大准教授は「長年、ごまかし続けてきた姿勢を改め、しっかりした制度をつくる時だ」と指摘する。

 外国人がいなければ日本社会は成り立たない。「ともに暮らす」ための施策が求められる。

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