あのすかしっ屁をまともに浴びて意識を保てる者などいない。ヨシキは両手両膝を床につき、しばらく嗚咽したあと、バッテリーが切れたロボットのように力尽き、気を失って床に倒れ込んだ。
 安奈は彼の吐瀉物を踏まないように立ち上がり、離れたところにいたマモルの方を見る。
「てなわけで、私の忠実な奴隷クンに決定したマモル、お片付けして!」
 彼女はマモルに、気絶したヨシキを仰向けに寝かせた上で、彼の口に付着した吐瀉物をタオルで拭い、その口に彼女が脱いだパンティを詰めるように命じる。彼女が放屁を連発したときに履いていたパンティは、手に触れるだけで身の毛がよだつものだったが、それを意識のない友人の口に入れるという命令にも、マモルは従うしかなかった。
 準備が整い、安奈はマモルを下がらせて、ヨシキのところに歩み寄る。
「んじゃ、いらなくなった方は処刑しまーすw マモルはそこで正座してよく見とくように!w」
ひッ、ひぎ………ッッ
 そう言って安奈は気を失っているヨシキの顔面に、躊躇なく生尻をどすッと振り下ろす。位置を微調整し、肛門と鼻穴が直結するところに顔面騎乗すれば、その最悪の肛門臭でヨシキは目を覚ます。
——んむぐッッ!!?ふぐむぶぐぅううッッ!!?!?
 だが、顔面が彼女の尻肉に潰されていた時点で、もう手遅れだった。
「………ふんっ♪」

ぶッッゔぉほおおぉぉおぉおおーーーぉおおーーぉおおぉおおッッッ!!!!!!
ぶッしゅッッ!!!ぶゔりッッ!!!!
ぶずぶゔぁぁあぅううううぅぅーーーぅうーーーぅうううううッッッ!!!!!!

 ——それは、ここまでの「遊び」のための放屁ではなく、相手の息の根を止める「処刑」のための放屁だった。

んんんもぐぁあああぁぁぁああぁーーぁあぁああぁあああッッ!!?!?!
ぬがッッ!!!むがッッ!!!んむがあぁぁあぁあああああッッ!!!!!!

 離れてそれを眺めていたマモルが、号泣しながら一言も声を発せなくなってしまうくらいの超ド迫力。
 明らかに只事ではないヨシキの暴れ方。
 そして安奈に、最後まで慈悲はなかった。
「ほい、トドメ♪」

ぶむッッ…ぢゅううううぅうぅーーーぅうーぅううーーぅううぅうううぅううッッッ!!!!!

ふんッッごぎゃあああああぁぁあぁあぁあああぁあああッッッ!!!!!!

 ——ヨシキは、最後の命を燃やし切り、両手両足をビンッと不自然に伸ばして硬直した後に、ぴくりとも動かなくなった。
 それを確認した安奈は彼の顔面に座ったまま、口の端から下の先端をぺろっと覗かせた。
「……ふぅ♪ いやー、やっぱどんな男でもこの瞬間はたまらないわーwアハハッww」

「ごめーん安奈、ちと遅くなった——って、うわっちょっとこの臭い……ッ!」
 安奈から場所を聞いていたレンタルルームに遅れてやってきた皐月は、玄関の扉を開けて室内に足を踏み入れるなり、思わず顔を顰めた。
 常人ならその臭いが鼻についた時点で本能的に逃げ出してしまう空間に、皐月は眉間に皺を寄せながらも入っていく。左右の肩に、ブランド洋服、ブランドランジェリーの大きなショッパーを各々2個ずつ下げ、右手には高級ハンドバッグと財布が収まっている箱入りの紙袋、左手には大量のデパコスがひとまとめにされた紙袋。大荷物を抱えたその様子から、“おねだり”の効果は覿面で、Pの財布を空にするどころかクレジットカードが限度額を迎えるまで徹底的に搾り取ったと見える。
 その皐月を出迎えたのは、ソファでくつろぎながらスマホを弄る安奈と——床に横たわり、二度と動くことはない2体の男の亡骸だった。
「あ、皐月やっときたかー。でもあと20分遅かったかな。もう殺っちゃった♪」

 ヨシキのことを極悪の生尻顔面騎乗連発特大放屁で葬り去った後、安奈は上機嫌かつ気分が昂った様子で、マモルに額を床に擦り付けるほど深く土下座させた。
 マモルにとっては、ナンパ仲間という悪友であったとしても、友人のヨシキが死ぬのを目の当たりにしたことになる。それも、年若き美少女の激臭放屁という信じがたい死因で。精神的にも大きなショックと強いストレスを受けた彼はもう、恐怖により安奈に支配され、一切の抵抗心を失していた。
「で、奴隷クン♪ 安奈様に何か言うことは?」
ぃひッッ!! はッ、ぁッ、わッ私はッ、あ、安奈様の命令に、ぜ、全部ッ、服従しましゅ………ッッ
「フフッ、いい心がけじゃんw」
 安奈はマモルの前にやってきて、しゃがむ。そして、ぷるぷると震えながら体を縮こめるように土下座する彼に、こう告げた。
「そんじゃ最初の命令はぁ……、私のおならを笑顔でお腹いっぱい吸い込むこと♪
ひぃぎッッ!!!?
 ビグッ!と大きく体を跳ねさせたまま、土下座の姿勢で硬直するマモル。あの「オーディション」で放屁責めからは解放される……、そんな考えは、実に甘かったのだ。
 安奈は、膝を立ててしゃがみ、両膝の上に豊かすぎる乳房をのしっと載せた体勢で、満面の笑みのまま、土下座するマモルの金髪を鷲掴み、乱暴に顔を引き上げる。
「何?安奈様の命令に全部服従するんじゃなかったの?」
はッはひッッ!!!
「アハッw なら笑顔w」
はひ…ぃ………ッッ
 そうしてマモルに無理矢理笑顔を作らせた安奈は、自分のトートバッグの中から、ある“道具”を取り出した。
「じゃ、これ使うよん」
 そう言って彼女が見せたのは——断面の直径が5センチほどの、半透明な蛇腹ホースだった。
 もちろん、ただのホースではない。片側は小さな漏斗状になっており、その反対側の先端は、三方に分岐して、比較的太めの直管1本と、細い2本になっている。マモルは見た瞬間に、その“道具”の用途を察した。漏斗になっている側は、安奈が尻の合間に押し当て、肛門をぴったりと覆うのに適した形状になっている。そして三方に分かれている側は——男の鼻穴と口、3箇所に挿入できるようになっているのだ。
………ぁ……あぁあ……あ……ぁ……………
 もう彼には逃げ出す力も残っていなかった。体がガタガタと震え、思い通りに動かすこともできない。
 そうしている間に、安奈は手際良く、彼に両手を体の後ろにまわさせ、手錠を使って腰のあたりで拘束する。そしてそのまま、片手で彼の頭髪を掴んで顔を上げさせ、蛇腹ホースの三方側を、彼の鼻穴に力任せに差し込み、さらに太い直管を口に突き刺した。
ぁがはッッ!!?
 遠慮や手加減というものを知らない安奈の手つきにより、その直管は彼の喉元ちかくまで挿入された。思わず声を出した彼を完全に無視して、安奈は付属品のベルトを使い、その道具を彼の頭部に固定した。
「これでよしと!」
……ぁが……はが…………ッッ
 怯えきったマモルに、男達を例外なく1秒で恋に堕とすキラースマイルを向けながら、安奈はホースのもう片方の先端を手繰り寄せ、自分の体の後ろに回す。そして、分厚い尻肉を片手でぐわッと開き、慣れた手つきで小さな漏斗状になっているその先端を尻肉で挟み込む。——その瞬間、安奈の肛門周りにフィットするよう作られた漏斗部によって、彼女の肛門と、マモルの両鼻・口は、完全に直結した。
 そして彼女は、そこでふと思い出したように、
「あ、そういえばさ、」
と彼に告げる。
「これ使っておなら嗅がされるの、めっちゃキツいらしくてぇ——今までこれでおなら注入された奴隷クン、全員死んじゃってるんだよねw」
ぁがひッッ、ぁひいいいぃいいいッッ!!?!?
 それを聞いたマモルの両目から、絶望の涙が噴水のように溢れ出した。
 それは、彼が免れたはずの、事実上の死刑宣告も同然だったのだ。
 彼のその虚脱感溢れる表情は、安奈の期待通りのものだった。彼女は肩を震わせて笑い、
「キャハハッ!大丈夫大丈夫!気合いでなんとかなるから!たぶん!ww」
と、全く心のこもっていない励ましの言葉を送って、ぱちんとウインクした。
「んじゃ出すよーw」

ぶぅううぅッぼおおぉぉおーーーぉおぉおーーぉおおおおッッ!!!!!

 轟く、キュートなウインクとはかけ離れた、大型肉食獣の咆哮のような重低音っ屁。
 ヨシキという一人の男を葬り去った直後で、安奈の方も興が乗っており、エンジン全開。
 そして、そのガスがホースを通り、マモルの元に届くまでのタイムラグは、約2秒だった。

ほあぁあがぁあああああああぁぁあああッッ!!?!!?
がげッッ!!!ががッッはがあぁーーぁあーぁあああああッッ!?!!?!

 そしてマモルが受けた衝撃と苦痛は、想像を遥かに上回っていた。
 生尻顔面騎乗からの直放屁とどちらがキツいかは単純な比較はできないが、鼻と口、人間の呼吸器官全てを支配され、直接体内に猛臭ガスを流し込まれるこの肛門直結蛇腹ホース放屁の方が、拷問性能は高いと言えるだろう。
がはッッ!!!げッ!!ごぶッッ!!!ゔぉえぇええッッ!!!!
 両腕を体の後ろに回した正座の姿勢で全身をブルブルと大きく痙攣させ、嗚咽するマモル。そして、この責め方の安奈にとっての利点は、こうして苦しむ相手の表情を、存分に眺めて楽しめるところである。
「フフッw苦しい?」
ぁがッッ、がふ……ッッ
 大粒の涙を流しながら、ガクッ、ガクッ、と頷くマモルに、安奈は白々しく眉をハの字型にして困り顔を浮かべ、言う。
「そっか、ごめーん、ファーストフード爆食いした翌日のおならってマジでヤバいんだよねー。でも、奴隷なんだから命令は守らなきゃでしょ? ほら、笑って吸引w」
は…ぁが………はご…………ッッ

ぼゔぉずうううぅうぅうーーーぅうーーーぅうぅうううぅううううッッ!!!!!

はがぐにゃあああぁぁあーーぁあぁぁあああああッッ!!!!!!

 安奈の指示で、マモルは必死に頬の筋肉を引き攣らせたように作り笑いを浮かべようとする。が、その直後に注ぎ込まれた追撃の重低音ガスに、それはすぐにぐにゃりと崩れ去り、阿鼻叫喚の表情に変わる。
「アハハッ!どしたー?表情崩れてるぞ? 笑顔笑顔w」
はがッッ、ぁッ、あ゙あ゙がッッ!!!!
 無理、もう駄目、限界。そう訴えかけるような目で必死に首を横に振るマモル。だが、安奈にその懇願は届かない。
「は?」

ぶりゅッッずぢゅううぅぅーーーぅうーーーぅうううぅううううッッ!!!!!

はんがッッげあ゙あ゙ああぁぁーーーぁぁーーぁああああッッ!!!!!!

「ね、命令聞けない奴隷マジいらないんだけど。笑顔で吸えないんなら今の3倍の濃さでスカすけど?」

ぁあはがぎぇええぇッッ!!!? あがッッ!!!
はがぁがッッ!!!あ゙ぁがあ゙あぁーーーーあああッッ!!!!!

 声のトーンをひとつ下げて睨む安奈に、マモルは全身の毛が逆立つような恐怖を感じ、氷点下の真冬に裸で外に放り出されたのかというほど震え始める。そして体に鞭を打って、口角を釣り上げ、笑顔のような表情を浮かべる。しかしそれは、笑顔というよりも、ただ歪つに捻れた不可思議な人間の表情でしかなかった。
「フフッ、そうそうw 私、忠実な奴隷クンのが好きだからさw 根性出せば死なないと思うからファイティン♪」

ぶりゅッッ!!!ぶずぼッッ!!!ぶッりゅすぅううううッッ!!!!!

ほはがげッッぶぁあああぁぁーーぁーーぁあああああッッッ!!?!!!

 小刻みな連発でマモルを痙攣させ、安奈は笑い転げる。
 歪んだ笑顔を保ち、なんとかこの地獄の拷問を生き延びようと必死のマモル。
 だが安奈の内心は、口で話す言葉とは反し、
(あと何発で死ぬかなぁ?)
と平然と考えていたのだった。

「………で、結局2人とも殺っちゃったってわけね」
 呆れた表情で冷たくなって動かない2人の男達を見下ろす皐月。
 安奈の方は、スマホ片手に、
「だってコイツら、全然私の好みじゃなかったしー」
と悪びれもせずに言い、さらにこう続けた。
「2人目のコイツにホースでおなら流し込んでたときに、なんか途中ですっごい大量にガス下りてきちゃってさー、思いっきり出したら、ありえんくらい超連発しちゃってw」
「何発くらい?」
「んー、20連とか?」
「いやガチャみたいに言うなw」
「フフッw でもまぁ、それで終わっちゃったんだよね。最期はコイツのお腹パンッパンに膨らんでたし、マジウケたよww でも、頭ぶっ壊れたら静かになっちゃうのもいるけど、コイツは最期まで絶叫してくれたから、そこはまぁまぁ良かったかな♪」
 そう言って上機嫌にキャハハッと笑う安奈。皐月はまたも呆れた表情を浮かべ、
「ほんっと、好みじゃない男は軽率に殺すよねぇ、安奈は。2人となると処理もそんな楽じゃないんだけど」
と小さくため息をつくのだった。

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