マモルとヨシキの舌を使い、左右のローファーを靴底の溝の間に至るまで徹底的に舐め掃除させた安奈は、続いてその靴を脱ぎ、くるぶし丈ソックスの臭いを嗅ぎ取らせていた。
汗で、じと……っ、と湿ったそのソックスは、仮にその手のフェチの持ち主だったとしても顔を近づけるのを一瞬躊躇してしまうような不快な臭いを放っていた。体質的に足汗をかきやすいのに加えて、大雑把な性格の安奈は風呂でも足の指と指の間まで丁寧に洗わないため、慢性的に足が臭いのだ。学校では圧倒的ナンバーワンの人気を誇る美少女の足臭がこのボロ雑巾臭とは、彼女に恋する男子達は想像もできないだろう。もっとも安奈自身はそのことを全く気にすることなく、むしろこうやって奴隷(候補)の忠誠心を試すのにちょうどよい、と思っているくらいである。
もちろん、今のマモルとヨシキに、彼女の蒸れ蒸れソックスに包まれた足の激臭を拒絶することなどできるはずがない。
「どう?良い匂いでしょ?」
と安奈に問われれば、彼女が投げ出した足を両手で恭しく持ち、鼻を密着させて深呼吸していた2人は、引き攣った作り笑顔を浮かべて、
「は、はぃ、もちろん………ッ」
「とッとても、いいニオイ…です………ッ」
と答える以外に選択肢はない。
「どんな風に良い匂い?言ってみ?」
「えッ、ぁ、あの——……ッッ」
「思いつかない? なら爪先のところのニオイ濃いとこで深呼吸したら思いつくかもよw」
「は、はひ………スウゥゥ……ぅぐッッ」
「——ヨシキ、今『うぐ』って言わなかった?」
安奈がそう言って冷たい視線を送る。それを感じたヨシキは、ゾクゾクッという背筋が凍りつくような悪寒を感じて、首をブンブンと大きく横に振った。
「そッッそんなまさかッッ!!スゥーーッッ、スウゥーーッッ、すッ素晴らしい香りでずッ!!そッそのッ、こ、香水ッ、高級な香水のようなッ、上品な香りがじまずッ、安奈様ッッ!!!」
そして大慌てで、足汗で湿ったソックスの爪先に鼻をつけて、全力で深呼吸した。間違っても「腐ったチーズ」「ドスの効いた銀杏」などという本当のことを口にはできない。
このわざとらしいとまで言える必死の方便に、安奈はいかにも可笑しそうに笑いを堪え、押し殺したように肩を小さく震わせる。
「アハッ、キモw そっかー、高級な香水かーw」
そして彼女は、右手で下腹のあたりを撫でながら、ニコッと笑った。
「じゃ、次はガスのテイスティングいってみようか♪」
「ぅぎッッ!!?」
「ひんッッ!!?」
その一言に、2人の顔に絶望的な悲哀が浮かぶ。足の臭いを嗅いでいたところから思わずビグッと震え上がって顔を上げ、安奈の顔を見上げる。そして、彼女が冗談や脅しでそれを言っているわけではないことを察し、さらに絶望する。
そして安奈は、その2人を見て、さらにニヤける。
「だって、ローファーの中で私の足が蒸れて香水になるんなら、きっとお腹の中では昨日爆食いしたロッ○リアは、シャネルの5番顔負けのフレグランスになってると思うよw それとも何?奴隷候補の分際でご主人様のおならテイスティングするの拒否するわけ?」
「いッいぃやッッそッそんなことはッッ」
「かッ、かか、嗅がせてッ頂きます……ッッ」
そう言いつつも、既に両目いっぱいに大粒の涙を浮かべている2人。安奈は、男がこういうふうになるのを見るのが何よりも好きなのだ。
彼女は2人の前から足を引っ込めると、ソファの上で体の向きを変え、背もたれを前にして乳房を押しつけるような姿勢で座り直す。そして、2人が床の上で正座する方へ尻を突き出し、ミニスカートを捲る。
このレンタルルームへやってきた当初は、2人とも目の色を変えて興奮を露わにした、安奈の巨尻。肉が分厚すぎるがゆえにパンティがギチギチに食い込んで裂けてしまうのではないかとさえ思いたくなるほどのメガ盛りヒップも、彼ら2人にとっては、今や、おぞましい恐怖の権化にしか見えなくなっていた。
そして彼女はちらりと振り返り、ヨシキの方を見て、ちょいちょいと人差し指を動かす。
「1人ずつ交互に嗅がせたげる。ヨシキおいでー」
「は、はひ………」
ヨシキは怯え切った様子ながら、逆らうこともできず、安奈の真後ろまで近づき、正座する。そして彼女に人差し指一本で指図されるがままに、突き出された巨尻の目の前に顔を寄せる。
「ほら、深呼吸して?」
「ひッッ、ぃぎ、す、スウゥーー………」
ぶすッッばああぁぁーーーーぁああああああああぁーーーーぁあぁあああああッッ!!!!!
「ッッんぎゃああぁええぇぇええぇーーーぇええぇええッッ!!!!!」
ヨシキの金髪のロン毛が、ぶわあぁあっっ、と後ろになびくほどの風圧だった。
彼の両目から溢れ出す涙も、顔の横方向に流れていく。それだけの風量で、とんでもない濃度の腐卵臭が放出されるのだから、彼が浴びた嫌悪は想像を絶していた。
「どしたー?深呼吸止まってない?」
「ぅぐッ、ずッッずびばぜッ、す、スゥーー、スゥーー……、ぐふッッ!!!」
「アハッ!で?どんなニオイだった?私のおならプゥは?w」
「ぁぐッ、う、うぅ、あ、あの——」
「まさかご主人様のおならがクサいとか言わないよね? んなこと言ったら死刑執行決定ねw」
「ひッひぃぃいいッッ!!? いッいえッとんでもございまじぇんッッ!!! あッあのッッ、すッ素晴らしい香りすぎでッ、こッ、言葉を失っていでッッ!!! はぃッ、本当にッ世界一の香水でじだッッ!!!」
とたんに慌てふためくヨシキが命がけで必死に叫ぶ賛辞の言葉を、安奈は軽く笑い飛ばし、
「そw ならも一発♪」
ぼぐぉおぉずうううぅうぅううぅーーーーぅうううーーーぅうううぅうううッッ!!!!!
と当然の追撃。
「ぐへぎぇええぇぇええーーーぇええーーーぇえええッッ!!?!!」
そうしてひとしきりヨシキに叫ばせたところで、今度は斜め後方で待機させていたマモルを呼び寄せる。
「んじゃ交代、マモルおいでー。フフッ、ヨシキがこんな称賛したんだから、マモルはこれ上回らないと奴隷オーディション敗退確定だからね、ガンバw」
「ひぎッッ!! はッはひッ頑張りまじゅ……ッッ」
安奈はこうやって、2人以上の奴隷を競わせ、無理を聞かせることを好む。男が自分の言いなりになり、必死こいて足掻く姿を見るのが堪らないということらしい。これで彼らがマッチングアプリの写真通り、彼女好みの非モテ男であればもっと良かったのだが、今は今で、彼らのようなチャラ男を弄ぶのを楽しんでいるようだ。
マモルをヨシキの位置を交代させて、安奈は改めてスカートを捲り直し、尻の大きさを強調するかのようにずいッと突き出して、マモルの顔面近くまで迫らせる。
ぶりぃいぃいッッずううううぅうぅううーーぅううぅーーぅううぅううッッ!!!!!
「ひッひんぎゃあぁあああああああぁーーぁぁああああああッッ!!!!!」
「深呼吸深呼吸w で、感想は?w」
「あッあぐッッ、いッいいッ、いいニオイでずッッ安奈様ッッ!!!さッ最高のッ、最高の香りでずッッ!!!ばッ薔薇のようなッ、かッ柑橘系のようなッッ、ずッ、素晴らしい、ニオイでずッッ!!!」
「アハハッ、でしょーw あ、なんか大量に下りてきたっぽいから連発するね、全部吸ってw」
「え゙ッ、ぃいえ゙ぇッッッ!!!?」
ぶずぶりいいいぃいッッ!!!!ぶすぶりゅッッ!!!ぶぶふッ!!!!
ぶッすうぅぅううーーーぅぅううッッ!!!ぶずッぶずッッぶッ!!!!!
ぶッッすうぅうぅうおおおぉぉーーおおーーぉおおぉおおッッ!!!!!
「あぁがぎゃああぁぇえええぇえーーーーぇえぇえええッッ!!?!?
いッいぃぃッッ、いいッ、いいニオイでず安奈様ぁああぁぁああぁあッッ!!!!!」
ふとした宣告から間を置かずに放たれた驚異的な連発大放屁。
室内のガス濃度が一気に上昇し、それを間近でモロに浴びたマモルはもちろん、離れた場所で正座させられていたヨシキも真っ青になり、小さく嗚咽する。
パンティの内側で、肛門が一体どれだけ大きく伸縮を繰り返したのだろうか。そしてその臭いは、出来ることなら鼻をもぎ取って捨ててしまいたくなるような圧倒的ジャンキー腐卵臭。彼女が言った通り、昨日の学校帰りにノリで寄ったロ○テリアでの「爆食い」(成人男性でも1個食べれば相当腹が苦しくなる「トリプルベーコン絶品チーズバーガー」を3個に、「トリプル照り焼きリブサンド」、「チキンフィレバーガー」を1個ずつ、サイドメニューの「バケツポテから」を2個を、ペロリと完食した)し、一晩を経て、腸内で醸成された地獄のジャンクフードガス。それをこれだけ嗅がされても、マモルに許されている言葉は「いいニオイです」、ただそれだけだ。
「超出た!キャハハッ! いいニオイいっぱい嗅げてお得だったじゃんw」
「げほッ、ごふッ、は…はひ………ッ、ぅぷ……ッッ」
可笑しそうに笑う安奈と、全く笑い事ではないマモル。
2人の間の埋めることができない立場の差が如実に表れる構図である。
あれだけの放屁をしてもケロッとしている安奈は、頬に片手を当てて考え込むような仕草をしながら、後方を振り返る。
「んー、2人とも今のところ同点かな。でも、『どっちも合格』は100%ないからねw じゃ交代、ヨシキの番ね」
「ひぃ、ひいぃい………ッッ」
「フフッw怯えないの!w 確かにさっきの連発でお腹の調子上がり気味だけど、ここで私のご機嫌取れたら一気にヨシキが奴隷クンに近づくと思うよw」
「ひ、ひ、は、はぃ…………」
そう言われ、ヨシキはもはや情けなさを隠す素振りもなくポロポロと泣きながら彼女の巨尻の前に正座する。
「ん、いくよー」
ぷッッ…しゅうううううぅうぅうぅーーーぅうーーうぅうぅうぅううぅううううッッ!!!!!
「——んぬぬぐぎゃあぇぇえぇえぇええぇえええッッ!!?!?
ぁがッッ!!!うゔゔぅオェエェエッッぷ………ッッ!!!!!」
それまでの口調と全く変わらない「普通」の一言から放たれたのは、この世で「普通」とは最もかけ離れた、極悪なすかしっ屁だった。
ある程度のことは覚悟していたヨシキだったが、その覚悟を遥かに上回る一発に、眼球がこぼれ落ちてしまいそうなくらい彼の両目が見開かれ、激しい嗚咽と共に汗が全身から噴き出す。
その彼の反応を見て、安奈はケラケラと笑いながら
「濃すぎた?ごめw」
と悪びれる様子ゼロで言うと、それからソファの上で膝立ちになり、履いていたパンティを、ずるっ、と下ろした。
もはや今のヨシキもマモルも、安奈がパンティを下ろしたことに対する興奮など皆無だ。それを分かっている安奈は、特に思わせぶりな素振りもせずに、脱いだパンティをソファの上に、ぱさっと置く。そして元のようにソファの上で尻を突き出して座り直すと、自らの両手で尻肉を左右にもりッッと広げた。
「ほら、せっかくのいいニオイがもったいないでしょ。残り香吸ってw」
そう言って指し示される薄ピンクの可愛らしい肛門。
もちろん、その悪魔の噴出口は見るのもおぞましいが……、ヨシキに与えられた選択肢はただひとつだ。
「はひぃ…………」
カタカタと全身を小刻みに震わせながら、ヨシキは晒け出された彼女の尻割れの中、肛門に鼻を寄せ、恐る恐る息を吸う……、が、
「ッッぅぅううぅうッッ!!!ゔぅゔうぅエェエェエェッッ!!!!」
そこに染み付いた残り香を嗅いだだけで、彼は大きく嘔吐き、慌てて手のひらで口を押さえる。その尻肉の合間には、信じられない濃さの卵臭が沈着していた。
「アハッ!ウケるw 私のお尻、絶叫するほどいいニオイだった?w」
「ぁぎ……ッ、はッ、はぃッ、い、いい、ニオイ、で……オォエェ………ッ!!!」
「………クスッ」
む…ッふすしゅすううううぅうーーぅうーーぅうううううぅううーーぅううぅううッッッ!!!!!!
「んなッッんがへええぇぇぁぁーーーぁあーーーぁぁあああッッ!!?!?
むッッ無理ッッ!!!ごれッ!!無理ぃいぃッッ!!!!
ぐぜッッ!!!ぐッッぜえええぇぇえーーぇえーーぇえぇええッッ!!!!!」
——安奈が微かに口角を上げて笑った、次の瞬間、「残り香」を嗅ぐために鼻を寸前まで寄せていた彼女の生の肛門が、本性を現すかのように大きく開き、放たれたのは、先ほどの一発を軽々と上回る濃さ、長さのすかしっ屁だった。
「いやもっと濃いスカシ出たwホントごめーんwwキャハハッ!」
これを超至近距離で鼻穴に直接噴きかけられたヨシキに、「いいニオイ」と言えというのはあまりにも酷だった。引き攣りまくった表情を浮かべさせられていた彼も、ついに限界を迎える。
「オエ゙ェッ!!!オオォヴエ゙エェェエーーーェェエエッッ!!!!!」
ヨシキは先ほどのように口を手で押さえたが、それでも胃の奥から込み上げてくるものを堪えることはできなかった。彼は顔を背け、ソファの下の床に向けて、思い切り嘔吐してしまう。
それを見下ろす安奈は、小さく肩をすくめ、微笑む。
「はい、オーディション終了♪」