どうなるコメ価格 政策転換の壁は高値を守りたい「JAと族議員」?

価格の高騰が続いたコメ=東京都江東区で5月23日、滝川大貴撮影
価格の高騰が続いたコメ=東京都江東区で5月23日、滝川大貴撮影

 コメの生産量が足りなかった――。政府は8月、今の米価高騰は事実上の減反が原因だとようやく認め、増産に切り替えるとした。世界的にも異常な減反は日本の何をゆがめたのか。農業協同組合(JA)の問題性や、石破政権退陣後の政策転換の行方は。農業に詳しい大泉一貫・宮城大名誉教授に聞いた。

新米は4500円程度か

――今年の新米の出来はどうですか。

 猛暑や水害の影響で厳しいかもしれないと盛んに言われていますが、実際に北海道や新潟県、福島県など大きな産地に聞くと、まあまあ順調そうです。

 出来高は10月末~11月ごろにはっきりしますが、例年並みに落ち着く可能性があります。

――注目される価格の見通しは?

 各地のJAが農家に前払いする「概算金」が前年の約1・7倍に上っています。

 猛暑などでコメの需給が逼迫(ひっぱく)しかねないという臆測が飛び交い、当初は60キロ2万3000~2万5000円としていた概算金を、一気に2万8000~3万円に引き上げる動きが広がったためです。

 今のところ、新米価格の中央値は5キロ4500円程度だと私は見ています。

 10月末~11月に平年並みの供給量だと分かれば、これを少し下回るのではないでしょうか。

――依然として高いですね。この高水準が1年間、続くのですか。

 コシヒカリなどの銘柄米はそうです。

 一方、5キロ2000円程度の随意契約の備蓄米は今、月3万~4万トンが少量ずつ供給されています。

 備蓄米はまだ約20万トン残っており、今後5カ月程度は低価格米を求める人のニーズに応えられるでしょう。

 ただ飲食店やスーパーなどで需要が多いのは3000円台のコメです。2024年産の銘柄米は古米となり値下がりするので、9~10月は3000円台も供給できますが、すぐ底をつきます。

 3000円台のコメがなくなったら何が起きるか。

 その需要に応じるため、10月ぐらいから米国産など輸入米がどっと入ってくると推測しています。

農家を大規模化するのが嫌だった

――減反政策を続けた結果、輸入が増えるとは納得できません。減反は元々、問題が多い政策ですね。

 減反、つまりコメの生産調整をしてきたのは「米価維持」のためです。

 コメが余って米価が下がらないようにするものです。

 しかし、日本は人口減少などで国内需要が減っており、「需要に見合った生産」を続ければ、いずれ稲作が衰退するのは目に見えています。

――減反は世界的に見ても異常な政策とされますが。

 多くの国の農業は、価格維持どころか、生産コストを抑えて農産物の価格を引き下げ、世界市場で売ろうというのが基本路線です。小麦も大豆もみな同じです。

 例えば、欧州各国は1993年に「関税貿易一般協定(GATT)ウルグアイ・ラウンド」が開かれる以前は、農産物の輸出に補助金を出して輸出増に努めてきました。

 日本も同じ戦略をとればよかったのに、「日本の農地は狭いから、他国にかなわない」とし、そうしませんでした。

 しかし米国や豪州ならまだしも、農地が狭いのは欧州各国も同じです。

――デンマークの畜産やオランダの花など、農地が狭くても農業を輸出産業にしている国は少なくありませんね。

 ウルグアイ・ラウンドで輸出補助金の廃止が決まって以降、欧州が力を入れたのは構造改革です。

 大規模農家を増やし、低コストで生産できるよう政策を進め、輸出増を推進しました。

 その結果、00年代から欧州の農産物輸出は飛躍的に伸びたのです。

――日本のコメがそうできなかった根本理由は何ですか。

 一言で言えば、農家を大規模化するのが嫌だったのでしょう。

 JAと、その集票力をあてにした政治家、農林水産省がそれぞれの利益を求めた「政・官・業のトライアングル構造」の下…

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