東京都墨田区の賛育会病院が3月末、病院以外に身元を明かさない「内密出産」と、育てられない子どもを匿名で預け入れる「ベビーバスケット」(赤ちゃんポスト)を始めた。取り組みは全国で2カ所目。子どもの命を守る手だてとして意義を感じているという賀藤均院長(68)に、開始から5カ月の実態や課題を聞いた。(聞き手・森田真奈子、奥野斐)
赤ちゃんポストと内密出産 予期せぬ妊娠による孤立出産や乳児遺棄事件を受け、熊本市の慈恵病院が国内で初めて実施。2007年に始めた赤ちゃんポスト「こうのとりのゆりかご」には2024年3月までに179人の預け入れがあった。内密出産は2021年から。いずれも法的根拠はないが、国は2022年、医療機関での内密出産の取り扱いに関するガイドラインを定めた。今年6月には大阪府泉佐野市も導入方針を表明した。
◆利用状況は非公表だが、ここまでは「対応可能な件数」
――取り組みの現状は。
規模を想定しにくい中で始めたが、内密出産も「ベビーバスケット」も対応可能な件数に収まっている。具体的な件数は公表していないが、実績は預け入れの方が多い。預け入れに来て接触できた女性は、全員が自宅など医療機関外で出産していた。妊娠を誰にも相談できず追い詰められた末に来院した様子がうかがえ、取り組みによって「命を救えた」という実感がある。一方、内密出産は相談が多数あるが、想定外の事例も多い。
――想定外とは。
国は内密出産を「医療機関の一部の者のみに身元情報を明かす」と定義しているが、実際の相談事例は「父親にだけ知られたくない」「不倫で子どもができたことを隠したい」などさまざま。特定の人にだけ知られたくないという相談が全て内密出産に当てはまるのか、判断が難しい。
――どう判断するのか。
医師や助産師、医療ソーシャルワーカーら7~8人のチームで受け入れの可否を判断している。各自の倫理的な観点は持ち込まず、相談者に寄り添って、かつ子どもの命をどうしたら救えるかという視点で決めている。すぐにも生まれそうという段階で来る人が多いことも課題。ゆっくり話し合えるよう、なるべく早めに相談して...
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