東京・墨田区の病院で起きた「赤ちゃん取り違え事件」当事者の男性が語る「『本当の親』が見つかったら伝えたいこと」
67年前、「赤ちゃん取り違え事件」が都立産院で起きた。本当の親は誰なのか……自身の出自について悩み続けた当事者の数奇な人生を追う。
前編記事『東京・墨田区の病院で起きた「赤ちゃん取り違え事件」当事者の男性が明かす「違和感しかなかった『育ての親』との生活」』より続く。
自ら住宅を訪ね歩いた
父と弟は「いまさら本当の親を知ってどうする」と否定的だった。だが母は「本当の子供に会いたい」と願った。都立産院で起きた「赤ちゃん取り違え事件」の当事者である江蔵智さん(67歳)の思いも母と同じだった。
'04年、都に対して損賠賠償の裁判を起こす。取り違えは認められ、'06年の二審では、江蔵さんと育ての親に対し、都は賠償金の支払いを命じられている。だが、「相手方の生活を壊しかねない」という理由で、本当の親を探してほしいという江蔵さんの願いは叶わなかった。
当時、墨田区では住民基本台帳の閲覧が可能だった。江蔵さんは裁判の合間に福岡から上京し、生年月日が近い人を見つけては、2年で60軒ほどの住宅を訪ね歩いた。
「突然お宅を訪問して産院を尋ねるわけですから、当然驚かれます。それでも、行動するしかなかった。想像していたよりも多くの方が真摯に対応してくださり、応援してくれたことが救いでした」
以降、本当の親を探すために都と交渉を重ねてきたが、納得する形にはならなかった。提訴を模索するも、ほとんどの弁護士から断られた。