女性Ａ様から「自分を一回ぶっ壊したい」とご連絡をいただいた。最近彼氏と別れて毎日泣いている。失恋の苦しみで生きていけない。嫉妬や執着が止まらない。彼氏が女友達に会うのも男友達に会うのも本当は嫌だ。家族の問題も抱えている。家族は大事だけど呪われている。頭の中に両親がいて「これをするな」とか「あれをするな」と言う。自分が誰を生きているのかわからない。命を燃やしたい。Ａ様は、そのようなことを言った。

Ａ様は「彼氏には感謝をしている。あんなに好きになった人ははじめてだ」と言って泣いた。一通り話を聞いた後に、私は致命的なことを言った。あなたは嫉妬や執着が止まらないと言うけれど、単に欲求不満なだけなんじゃないか。感謝しているとか言うけれど、本当の本当のところでは、本気でぶつかっていない不完全燃焼感に腹が立っているのではないか。完全燃焼できていないから、嫉妬や執着が問題になってしまうのではないか。

Ａ様は「複雑な家庭で育った彼氏は心に傷を抱えていて、私が幸せにしてあげなくちゃと思ったけど、解放してあげた方が幸せになるのかなと思って別れを受け入れた」と言った。微妙。超微妙。家庭が複雑？それがどうした。関係ない。心に傷がある？それがどうした。関係ない。傷つけたお前が悪い？馬鹿を言うな。傷ついたお前が悪い。弱さを武器にするな。傷を見せつけて寄り添ってもらおうとするガキンチョに恋愛をする資格はない。俺たちは大人なのだから、手前の傷は手前で処理をしろ。恋愛に持ち出してくるなと思った。

巷ではＭＵＳＴよりＷＡＮＴで生きようなどと言われる。こうするべきではなくこうしたいを基準に動こうと言われる。私は言いたい。ＭＵＳＴもゴミだし、ＷＡＮＴもゴミだ。ＤＯ一択。やる一択。私の目の前で「もっと本音で生きたい」などと願望を口にする人は多いが、やりたいなら、やれ。いまやれ。いま本音を話せ。願望ではなく動詞を使え。やりたいじゃなくて「やる」と言え。Ａ様は言った。彼氏と別れてから不眠症になり、呼吸も浅くなっていたのだけれど、いま、めちゃめちゃ眠い。呼吸も深い。心地よくて頭が全然働かない。私は「これが坂爪温泉だ」と言った。坂爪温泉に浸かると、力が抜けて、本心がほこぽこ湧き出してくる。Ａ様は「メソメソしていた自分が信じられない。男を尻に敷きたい」と言った。

彼氏はセックスにも傷を抱えていて、肉体関係はまるでなかった。私の不満は溜まりに溜まって、性欲だけ処理できる男を本気で探した時もある。弱さの罠にまんまと嵌った。何が感謝だ。なにが嫉妬だ。私は強い女だ。男に埋めてもらう必要はない。なんだか元気になってきた。マッチングアプリを濫用して男を狩猟にでかけたい。手始めに家族の問題を清算してこようと思う。これから実家に行って、親に「自分は自分の人生を生きる」と宣言したいと思う。それが私のＤＯだ。やっと人間になった。今日が私の生誕日だ。私は今日生まれたのだ。そう言って、Ａ様は実家に行った。即決断。即行動。最初は彼氏に感謝とか言ってメソメソしていたＡ様が、終盤は「男を尻に敷きたい」と真逆のことを言っている感じがよかった。女が、男に選んでもらおうなどと思うな。お前が選べ。いい女とは、自分から選べる女のことだ。