第1回「友達がいない?」飲み会に誘われなくなった僕 58歳記者の苦悩
「僕には『本当の友達』と呼べる人は、いるのだろうか?」
いま58歳。24歳で朝日新聞に入り、34年間、記者などとして働いてきた。
定年まであと7年。会社にいると同僚や上司と話すことも多く、孤独を感じることは少ない。職場では定期的に集まる韓流好きの会もある。昔の勤務地の仲間との同窓会も時々ある。いずれもとても心安らぐ場なのだが、退職後もこれらが続くのか不安もある。定年になって会社を離れたら、地域に「友達」と呼べる人はいない……。
学生時代は、そこそこ友達はいた方だと思う。部活やゼミの友達が中心だった。就職して40代ぐらいまでは、こうした学生時代の友人や会社の同僚、取材先で仲良くなった人たちとも、よく遊んだ。山登りをしたりテニスをしたり、飲みに行ったり。「友達」という存在について、深く考えることもなかった。
しかし、50代になってからだろうか。それまで毎回声がかかっていた学生時代のグループから、突然誘われなくなった。そのグループのメンバーの一人から、僕抜きで集まっている、と聞いた。ショックだった。「何か失礼なことをしたか」とも考えたが、心当たりはなかった。僕ぬきで笑いながら酒を飲んでいるシーンが目に浮かび、孤独感にさいなまれた。
【インタビュー】中高年男性、友達を「つくろう」はダメ 心理学者が説く大人の交際術
年齢を重ね、自分には「友達」と呼べる人が本当にいるのだろうか、と悩む人は少なくないかもしれません。大人になってからの友達関係は、どうしていったらいいのでしょうか。全4回の連載で考えます。
実はそのグループ、あまり詳しくは書けないが、自分のなかでは「心のよりどころ」にしているグループだったのだ。でも、さすがに「僕も呼んで」とは言えない。悲しいけれど、現実を受け入れるしかなかった。
「そうだ、地域に新しい友達をつくろう」。今年4月から、地元で「そば打ち教室」に通い始めた。同じことに興味を持つ仲間同士、お近づきになれるのでは、と期待に胸をふくらませて教室に顔を出した。
でもそこは、先生と生徒がマンツーマンになって教える場。生徒同士の横のつながりは全くなかった。「あー、だめか……。でも、友達をつくるためだけに来たんじゃない。そばを打つために来たんだ」と自分に言い聞かせ、そば粉を一心不乱にかき回した。
父母会でできた友人も続かず
長女(27)が大学生だったころには、父母会に入ったことがある。役員になったお父さん、お母さんたちと仲良くなり、頻繁に飲みに行くようになった。「仕事とは無関係の友達ができた」と喜んでいた。このままずっと続くことを願っていた。ところが長女が卒業すると、連絡がパタンと途絶えてしまった。「みんな、どうしたんだろう。連絡してみようかな」と妻(58)に言うと、「やめときなさい。自然な流れに任せた方がいいわよ」といさめられた。
仕事柄、いろんな人と知り合う機会は今も多い。そういう意味では、恵まれた職業といえる。僕は決して人見知りではないので、結構積極的に声をかけ、時に飲みに誘う。取材先の方々と飲みに行くことは多かった。でも、ほとんどは1~2回で途絶えてしまう。なかには定期的に集まるグループもできたが、僕が声をかけなくなると「自然消滅」した。
結局、自分から誘わないと飲みに行けないのか。飲み会でも幹事をやることが多いし。
妻を見ると、毎週のように「韓流つながり」の友達と出かけている。仲の良い人たちとは、韓国に旅行も行く。妻から誘うことはほとんどなく、友達から頻繁に誘われるのだという。「うらやましいなあ」と言うと、「断るのも大変よ」。僕にしたら、ぜいたくな悩みにしか思えないのだが……。
兄(66)も学生時代の友人と、毎週末ゴルフに行っている。年末など節目にも、必ず集まっている。そのうちの数人とは「深いつき合い」があるようだ。
僕は40代後半からフェイスブックを続けている。「友達」は600人を超えたが、そのうち「本当の友達」といえる人は何人いるのだろうと考えてしまう。もちろん僕が信頼を寄せる人は何人かいるが、相手も僕のことをそう思っているのか、正直自信がない。
最近は「いいね」の数も、だいたい30~40ぐらい。「いいね」が100とか200ついている人を見ると、うらやましい。
もうすぐ還暦。これから「真の友達」をつくるのは難しいかも知れない。妻に悩みを相談したら「ChatGPT(チャットGPT)に友達になってもらったら?」と冗談交じりに言われた。本当にそうなるかもしれない……。
「相談する友人いない」中高年男性に多く
他の人はどうなのだろう? 調べてみると、中高年男性の友達関係の希薄さが示された興味深いデータを見つけた。国際比較調査グループISSPが2017年に実施した調査「社会的ネットワークと社会的資源・日本」の結果である。18歳以上の男女約1600人が回答した。
「悩みごとを相談できるような友人がいない」と答えた人は、全体では22%だったのに対し、中高年男性をみると、50代で37%、60代は36%、70代以上になると、その割合は53%と半数を超えた。
また、「落ち込んだときの話し相手」や「家庭の問題についてアドバイスをもらう相手」として「親しい友人」を挙げたのは、全体で約4割だったが、男性50代以上では2~3割にとどまった。
一方、50代女性についてみると、約半数が「親しい友人」を挙げている。同じ50代でも、男女に違いがあることがわかる。
生活満足度との関連についても尋ねており、他者との接触や友人の数が多いほど、生活に満足している割合が高かった。特に40代、50代の男性は、悩みごとの相談相手の人数によって、生活満足度が大きく異なる結果が出た。男性40~59歳では、「悩みごとを相談できる友人数1人以下」だと「生活に満足している」と答えたのが46%なのに対し、「友人数2人以上」だと65%と満足度が上がった。
齢(よわい)を重ね、若いころよりむしろわからなくなってきた「友達」という存在。みなさんは、どう考えますか?
妻の一言「関係はゆっくりつくって」
一緒に暮らす妻(58)は、僕の友達関係をどう見ているのか。率直な意見を聞いてみた。
あなたは友達との距離感に問題があるのかもしれない。友達関係をすべて把握しているわけではないけれど、一部の人たちへの行動を見ていると、急に距離を縮めようとするところが見受けられる。まだ会って間もない人に急に近づこうとすると、相手も警戒するでしょ。友達関係は、ゆっくりゆっくりつくっていかないと。
学生時代に仲がよかったグループから呼ばれなくなったのは、つらいと思うけど、もしかしたらそれも距離感に問題があったのかも。こちらが「親しい仲」と思っていても、相手も同じような距離感で考えているかどうかはまた別だし、そうでないなら越えてはいけない一線があると思うよ。
友達って、いろいろな種類があるんじゃないかな。趣味の友達、飲み友達、何でも話せる価値観ぴったりの親友……。親友をつくるのは簡単じゃない。私だって、10代のころから40年かけて関係をつくり、いま「親友」と言える人は2人だけ。
あなたも私も、もうすぐ還暦。人間関係も「断捨離」していく年代でしょ。いろんな人に声をかけて飲みに行くのではなくて、「この人だ」と思う人に、的を絞って声をかけたらどうかな? 残り少ない人生、友達の「数」を求めるのではなくて、「質」を求めていった方がいいと思う。
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- 【視点】
私は佐藤さんと違って、人付き合いが苦手なので、前の職場を退職した時、「これで飲み会に誘われなくなってうれしい」と感じた。地域活動を始めてから、顔見知りは増えたが、友人はいない。どこでウワサが広まるかもわからないので、近所の人には自分のことを話したくないからだ。 しかし、仕事や地域に関係ない活動を通じて、価値観を共有し、信頼でき、気遣える仲間はできた。こうした仲間は、困った時には駆けつけたり、助けたりしてくれるに違いない(逆の立場なら、駆けつけるし、助けるつもり)、と勝手に思っているので、私には、しょっちゅう一緒に遊んだり、会ったりする友人がほとんどいなくても、不安や焦りを感じたことはない。私は、数より質派だ。
…続きを読む - 【視点】
「心のよりどころ」にしているグループから自分だけ誘われなくなった・・・。つらいですね。私もSNSなどで友人知人が楽しげに集まっている写真を見ては、「なぜここに私は呼ばれなかった?」と悶々としている一人です。 ただ、若い頃と違い、50歳にもなると人間関係の維持・発展・深化にも億劫さを感じるようになってきました。 昔はやたらと飲み会に参加していましたが、この10年ほどは厳選された数人と飲酒するくらいです。さらにコロナ禍を経て、その数人はさらに少数精鋭になりました。 最近、十数年振りくらいにゴールデン街に行ったのですが(少数精鋭の一人に連れられて)、心の底から「知らない酔っぱらいと話すのは本当に苦痛だな」と再確認しました。 前は別に苦痛じゃなかったのに、不思議です。 どんどん人間が嫌いになっている気がしてそんな自分は最終的にすごく孤独になるんじゃないかと不安ですが、今のところ、人間関係より飼い猫との関係を優先させている猫ファーストなので、まぁ猫がいればいいか、とも思っています。
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