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研究者は《学術研究に税金を投入しなくていい理由》という問いにに真剣に取り組む一方、はてなブックマークは……

先日こんなエントリを書いた。

𝕏でトアニさんの元ツイートに対しぶつけられている反応が、感情的で考えてないものが多すぎて議論になってないので、論点をだしておくから揉んでみろ、頭の体操だというノリで1時間もかけずに書いたものなのである。なので冒頭で「反論しろ」と太字で促しているし、普通に反論を差し込める隙も作っている。

で、私のエントリに対するはてなブックマークを見ろという通知が飛んできたが、やはり感情的で考えてない反応が多かった。反語的レトリックだろうという意見さえ少数で、こちらの期待通りに論理的な隙にきちんと反論を差し込んできたのは、旧アカウントで相互フォローの前田先生だけという惨状である。

研究者は真剣に考えてくれた

前田先生は研究者だが、𝕏の他の反応をぱっと見ていると、本職の研究者に絞っていえば、普通に反論してくる人、考えたいという人、言ってることは分かるので迂回路を作りたいという人、色々いたが、概ね自分事として皆真剣に捉えていた。

自分としては考えるための枠組みの提供という形で粗く外延をなぞって考える足しにしてほしいと思って書いたものだが、概ね筆者たる私の意図をくんでくれて、正面から取り組もうという意思が見えたのは一応ある程度安心できたところである。


全体の反応としては……

ただまあ、𝕏にしろはてなブックマークにしろ、全体的に言えば、研究に関する議論なんだからもっと頭を使って書いてくれと思うような反応が多かったのは正直な感想である。

未来がない子無しの虚無について冒頭で太字で回答を求めており、それに対して「こんなニヒリズムに付き合う必要はない」という答えがいくつかあったが、それですら要回答指定した問いについて話しているからマシで、「バーカバーカ」レベルの意見については何をかいわんやである。

まあ、私が書いた文章が悪文で頭の体操に見えないよというのなら私が悪いのだが、研究者アカウントからの反応は概ね私が期待したように考えるタネにしてくれていると思うので、まあ書き物としてはある程度狙いを達成していて、読者によって反応が違うのは読者の違いによるものなのだろうと思う(そういう意味では研究者に分かってもらえればいいという{外側から投げた内輪向け}であることは否定しないが)。

どうしようもないなと思った反論として、「国が衰退するだろ!」「だからアメリカや中国に負けるんだ!」みたいな意見に至っては、字面は追えているが論理として頭に入っていないのだろうとしか思えない。正直、科学とか研究とか分かっていない人にこのタイプの回答が多かったという印象がある。


こちらが設定していた《解答例》

こちらとしては、ガチンコで記事を書けと言われたら自問自答してもっと練ってから出していたと思う。しかし私の意図としてはディベート用の枠組みを出しただけのつもりだったので、"隙"を放置してさっさと公開していた。そういうわけなので、実のところ自分が出した"質問者"に対しては私なりの"解答例"があった。

例えば{特許の利益が一部の人間に独占される}という話は、私がまず考えていた回答として。ピケティ的な世界的な再分配同盟という提案はあり得るだろうと考えていた。

未来がない子無しの虚無に対しては、例えば人類全体への貢献に価値を感じられるだけの人類への帰属心、言うならば「愛人類心」を育めばよい、という回答はあり得た。ただし「愛国心」に対する反感は、(1)帰属先が国に限定されていることへの不満 (2)個人より集団に献身しろということへの不満 の2種類の不満からなっており、「愛人類心」は(1)への回答にはなるが(2)への回答にはならないのためか、あまり言われていなかった。仮にそれを書こうとすると人類という集団への献身を求める集団主義者という自覚が出てしまうためそこで手が止まったのではないかと思う。「ニヒリズムに陥らないよう子供を作らせろ」という回答もあり得るが、こちらはリプロダクティブ・ライツの侵害になるのでこちらも出なかった。

ついでながら、子無しの虚無に対しては、{遺産の寄付と、小さな単位での名前を残せる権利}たとえば○○○○記念展示室とか、国の研究費でも論文にOpen access funding provided by Taro Yamada memorial fund.寄付者の名前を書かせるみたいな形を「人は死して名を残す」チャンスを誘因にする、というような回答も考えていたが、結局主役にはなれないのであまり魅力的でないかもしれない。

予算は程度問題という話は、まあこれはなんぼでも回答の仕方があるのでここでは《解答例》は割愛する。

「常識的に考えて研究者は価値ある研究から手を付け始めるだろうが、研究者が多すぎて『価値ある研究』の種を速攻で取り尽くし、多くの研究者が碌でもない部分で戦ってる」部分への回答については長くなりそうなので別のエントリーに記した。

人文学の価値

次いで、何件か人文学の価値についての意見もあった。これに対しては、自分としては、ひたすら無私の資料的価値をアピールしていくか、やってる内容で面白さをアピールして支持を集めるか、という形になるのではないかと思う。

その意味で集める価値がある資料に依拠できる文学、言語学、歴史学、芸術学、宗教学、民俗学あたりは史料編纂者としてのアピールは可能だと思う。博物館のクラウドファンディングはそれなりに成功しているものがあるので、史料編纂に興味がある人は多いのだと思う。思想系の人はよほどのことを政治思想色を徹底的に排除しないと、生き残りはきついのではないかと思う。


「科学者は納税者に対する責任がある」という言説は世界では珍しいものではない

今回は元の問いが「研究に金を出させるのにナショナリズムは影響している」という主旨の話だったため、他の国はどうなのか、的な意見もちらほら見られたが、がっつり回答している例は少なかった。

この点で言えば、少なくともアメリカは税金で研究したら納税者に対する責任があるという考えが強い国であり、「science taxpayers」で検索すればなんぼでもそれについての意見が出てくる(例1例2)。これについては、例えば20年ほど前のPubMedの設置時の論争――NIHが費用を出した研究の成果は納税者のものであるからオープンアクセスとすべきとして出版社と対立した事件までは少なくとも遡るだろう。

ノーベル賞を受賞した25名の科学者は8月26日、歳出委員会の勧告を支持し、議員宛てに連名で公開状を提出した。これによると、「税金によってサポートされた学術知識の普及を妨げるいかなる障害に対して異議を唱える」とし、「研究発表の増加、ジャーナル価格の高騰、図書予算の停滞により、図書館は学術ジャーナルを購読するために苦闘している」と指摘している。

2004/09/30:第146号NIHのオープンアクセス提案:学術出版業界に大きな波紋


イギリスもかなりうるさいという話なので、少なくとも英米法体系の国では「税金でやった研究は納税者のもの」という意識が強いようである。


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