12日から長崎県を訪れている天皇ご一家は、13日午前10時半ごろに長崎市内の「恵の丘長崎原爆ホーム」を訪問されました。
この施設には高齢の被爆者300人余りが暮らしていて、ご一家は入所者8人と懇談されました。
ご一家はひざを曲げて目の高さを合わせ、一人一人と、被爆当時の状況などについて、丁寧にことばを交わされました。
天皇陛下は「大変でいらっしゃいましたね」「いかがお過ごしですか」などといたわりのことばをかけられていました。
皇后さまは「おうちは近くでいらっしゃったのですか」などと声をかけられていました。
愛子さまは「ふだんはどのようにしてお過ごしですか」などとホームでの生活について尋ねられていました。
天皇皇后両陛下と愛子さま 養護ホームで被爆者と懇談 長崎
長崎県を訪れている天皇皇后両陛下と長女の愛子さまは、被爆したお年寄りたちが暮らす長崎市内の養護ホームを訪れ、入居者と懇談されました。
《懇談のあと 入所者8人は》
16歳で被爆 浦上絹代さん(96)
「お会いしてみると優しくて親しみを感じました。愛子さまは自分の子どものようで、天皇陛下も普通のお父さんのような感じでした。『どうですか』と聞かれたので、毎日、教会に通っていることなどをお話ししました。話ができて、握手もしてもらって、何も言うことがありません」
4歳で被爆 小川ハツヱさん(84)
「なんと言えばいいかわからないくらい感激しています。生きていてよかったです。『何歳のころだったのですか』と聞かれました。笑顔で優しい方だとつくづく思いました。本当に幸せです」
9歳で被爆 宮崎幸子さん(89)
「原爆の時のことや仕事のこと、それから『生活はどうだったですか』と聞かれました。お声をかけていただいてなんとも言えない気持ちで幸せです。被爆から80年がち、戦争がなくなるように、平和に暮らしたいと思っています」
14歳で被爆 町田エイ子さん(94)
「とても優しい人でした。こうしてお話ができて舞い上がって感激しました。2度と戦争はしたらダメですね。世界中で戦争を早くやめてもらいたい」
18歳で被爆 春野ハルさん(98)
「原爆で家が丸つぶれになったけれどひどいけがをせずに済んだことや、周りが大変だったことなどをお話ししました。それに対し、『大変でしたね。戦争は絶対ダメですね』と言っていただきました。戦争がないようにということで長崎にいらっしゃったんだと思いました」
2歳で被爆 山口暁美さん(82)
「皆さん笑顔でした。中腰で話を聞かれていたので、腰が痛くないかと心配しました。ここに入所できたからお会いできたと思うのですべてのことに感謝です」
5歳で被爆 草野タカ子さん(85)
「お忙しいなか、遠い山の上まで来ていただき、『ありがとうございます』という気持ちしかないです。きのうも長崎原爆資料館に訪問される様子をテレビで見ましたが、本当にうれしく、ありがたいと思いました」
15歳で原爆投下後に入市し被爆 宮崎安美さん(95)
「このような機会をいただき、私にとって一生の宝物です。戦争は絶対だめで、平和が一番です」
午後には美術館で障害ある作家の作品展に
愛子さまはこのあと東京に戻られ、両陛下は午後、長崎県美術館で障害がある作家の作品およそ400点を集めた展示会をご覧になり、知的障害がある作家たちと、ことばを交わされました。
このうち長崎県五島市に住む原塚祥吾さんは鉛筆で描いた架空の町の鳥観図を展示していて、両陛下は多くの線を重ねて細やかに表現された町並みをじっくりとご覧になっていました。
また、熊本市の渡邊義紘さんが一筆書きの要領で、はさみで紙を切り抜いて恐竜を表現すると、天皇陛下は「よくつながっていますね」とか「手先が本当に器用ですね」などと声をかけられていました。
渡邊さんが恐竜の切り絵を天皇陛下に、ご一家の干支にちなんだ落ち葉の作品を皇后さまにプレゼントすると、両陛下は「ありがとうございます」と笑顔で受け取られていました。
両陛下は14日、佐世保市で「国民文化祭」と「全国障害者芸術・文化祭」の開会式に臨まれます。
- 注目
◇両陛下 戦後80年にあたり慰霊などで各地を訪問
両陛下は戦後80年のことし、戦没者の慰霊などのため、先の大戦の象徴的な地域を訪ねられています。
▽4月には「玉砕の島」の1つ小笠原諸島の硫黄島を
▽6月には激しい地上戦が行われ、20万人以上が犠牲になった沖縄と、被爆地・広島を訪問されました。
沖縄には長女の愛子さまも同行されました。
また、7月のモンゴル公式訪問では、敗戦後、旧ソビエトによって抑留されてモンゴルに送られ、過酷な労働などのため命を落とした人たちを慰霊し、これまであまり知られていなかった抑留の歴史に光を当てられました。
天皇陛下は、戦争の記憶と平和への思いを戦争を知らない世代に継承していくことの大切さについて、これまで繰り返し語られています。
ことし2月の記者会見では「戦中・戦後の苦難を体験した方々が高齢となり、当時のことを語り継いでいくことが難しくなっている中、国内各地で若い人たちが戦争を知ろうとし、次の世代の語り部として育ち、戦中・戦後の苦労を語り継ぐ活動が進められていることは、戦後80年を迎える今日、一層意義深いものとなっていると思います」と述べられました。
先月の全国戦没者追悼式では、おことばに「語り継ぐ」という表現を初めて盛り込み「戦中・戦後の苦難を今後とも語り継ぎ、私たち皆で心を合わせ、将来にわたって平和と人々の幸せを希求し続けていくことを心から願います」と述べられました。
各地への訪問では、戦争体験者や遺族に加えて、経験を次の世代に伝えようと活動する若者などとも懇談されています。
今回の長崎への訪問は、戦後80年にあたって両陛下が続けられてきた、先の大戦の象徴的な場所への一連の訪問を締めくくるものとなりました。