メガテニストはディストピアでもヘコたれない。   作:はめるん用

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コマンダー:9

 忌々しくも懐かしき、ブタ玉野郎を倒したと思って油断したらマハラギオンで危うく消し炭にされかけた前線基地から始まった威力偵察。どうやら位置関係的にD民は隔離区域の手前でヨモツイクサの掃除をさせられていたようだ。つまり普段から威力偵察みたいなことをしてる、ってコト? 

 施設では思想の洗脳が露骨なだけでまともな生活をさせてもらっていたことを考えると、捨て駒として使うには割高な気もする。それとも、俺やマモルやホノカみたいに生き延びて兵士として収穫できれば元は取れるぐらいのバランスなのだろうか?

 

 いま飲んでる麦茶も砂糖ではなく“甘味料”が使われていて、重金属イオンで地表が汚染された資源惑星の地下で採掘できる甘味鉱石とかいう代物が存在する世界だし、案外D民の育成でも食糧事情は安価なのかも。施設の先生がニコニコ笑顔で振る舞ってくれたケーキは、果たして本当に俺の知るケーキと……どうせ手遅れなんだから考えるだけ時間のムダだな! 

 

 

 どうにもこうにもきな臭い雰囲気を感じ取った技術屋の兄ちゃん姉ちゃんたちが大急ぎで仕立ててくれた生体マグネタイト駆動の義手壱号の具合をニギニギして確かめながら今後の予定を整理する。確認、大事。これはどれだけやってもやり過ぎるということはない。

 

 

 海軍側の隔離区域探索は陸軍に教えていない。イミナ中佐が言うには陸軍との情報共有の必要ナシと満場一致で決定したのだとか。それについてはでしょうね、としか言えんわ。軍の階級と帝国としての家柄のパワーバランスを知らない俺でも、ここしばらくの騒動で厄介なことだけはタップリ理解させられたもの。

 ついでにコロニーそのものを諦める選択肢については“無い”と教えられた。俺が偵察に出ている間に密かに脱出なんてことはできないから安心して仕事に励んでくれ、だそうだ。敢えて“しない”ではなく“できない”という表現をしてくれたのは、それなりに俺のことを信用してくれていると前向きに受け取っておこう。

 

 それはそれとして、いざというときのためにヤスツナちゃんを案内人として基地に残しておくから現場の判断でアマラ経絡を使って良いって指示はつまりそういうことですね?

 できないとは言ったがしないとは言ってない、ということか。サマナー増えた状態でアマラ経絡とかあんまり通りたくないな〜。ほかの異世界転生なら死ぬよりマシだッ! となる選択肢が死んだほうがマシだッ! になるパターンあるんだもの。

 

 

 それでもいざというときは逃げてもヨシッ! と許可が出たのは実にめでてぇ。あとは探索の方針についてだが……可能な限り深部の様子を探ってこいとデジカメとフィルム式のカメラ、それに有害物質を検知するための機器を渡されていることだし、そこは真面目に働いておこう。

 

 しかしなぁ……カメラはともかく、計測機器はどこまで信用していいかわからんよなぁ……。

 

 隔離区域の外ではどれだけMAG結晶体を喰っても悪魔召喚できなかったマモルとホノカが、隔離区域で試したらわりと簡単に召喚できた。何故か? なんらかの条件が変わったからだ。もしもそれが環境によるものだとしたら、安全を示す計測機器は有害物質を検出することはできても悪魔が関係することには無力かもしれない。

 ま、その辺りの事情についてヒントを集めておこうって意味も含めて探索する価値があるワケだが。ここまでは仲魔という存在によるアドバンテージで生き残れたが、シキガミの存在はもちろんのこと、同じように仲魔の力を借りて戦うデビルサマナー的なヤツが敵対者として現れたときのことを想定するなら『識る』という行為が生死の別れ目になることだってあるだろう。

 

 

 

 

 懸念点があるとすれば、その敵対者となるデビルサマナーが────この場にいる誰かになる可能性もある、ってことぐらいか。うん、いつものメガテンだわ。

 

 

 

 

 私利私欲でなくとも、むしろコイツらを助けたいからこそ裏切らなければならない。そんなシチュエーションだってあり得るのが女神転生という世界なワケで。わかりやすい物欲じゃなくて精神的な生き方とか、その人物が大事にしている尊厳とか、そーゆー部分で対立することになるからややこしいのなんの。

 

 なので申し訳ないが、その悪魔たちの名前に関しては各自考えたニックネームで通してもろて。

 そもそもの話、なにが原因で急に悪魔召喚が解禁されたのかは知らんけど下手に俺が名付けたらパワーアップしても横取りしかねない……ん? 

 

 名付けで横取り? 

 

 いや、全然あるな。

 

 神話的に名付けって重要な意味あるし。何処ぞのオカルト系高校生探偵見習いと食人鬼みたいに名付けイコール婚姻とまではいかなくても、いつかのメシテロ肉天だってコロンゾンの名前を呼んだら支配のバランスが崩れて力を制御できなくなったんだから。

 

 

 と、言うことは? 

 

 今後メシテロの襲撃を受けたときは、そいつらが取り込んでいる悪魔の名前を特定できればワンチャン奪えるんじゃね? 

 

 

 なんならこの隔離区域で襲い掛かってきても驚かんぞ俺は。自由と混沌を崇拝するガイア勢力は自己中心的に暴れる代わりに興味の無いモノには積極的に関わろうとしない。だけど使命感だの大義だの掲げて救済活動に熱心なメシア勢力はどこにでもクビ突っ込んでくるし。

 

 出会うと厄介なのがガイア教。

 

 厄介なぐらい出会うのがメシア教。

 

 わりと大真面目に隔離区域にアマラ経絡があったりすれば、その先は連中の拠点に繋がってましたとか無いとは言い切れない。灯台下暗し、敢えて海軍管理下のコロニー内部に秘密の抜け道を確保することで偽装する。我ながら悪くない手だと思う。メシア勢力って基本自己主張は激しいけれど裏でコソコソやるのも大好きだもんな。

 

 

 んで? 

 

 3人の様子は少しぐらい……マシになってねぇわ。うーん、メガテンの悪魔もペルソナも、ナンバリングによってレベルがまちまちだからなぁ。身の丈に合わない強力な悪魔を引き当てちゃったのだろうか? ゲームならレベルキャップが仕事するけど、そんなシステムの保護なんて無いもんなぁ。

 

 

 しゃーない。 

 

 カゲツ曹長、ちょっと散歩と洒落込もうぜ。

 

「ハッ! 了解でありますッ! それでは騎士殿、自分の肩をお使いください。その代わり、と言ってはなんですが、周囲の警戒については存分に頼りにさせていただく所存であります!」

 

『ウムウムッ! ワガハイのしっぽセンサーに全て任せるのだッ! 従者であるキミはもちろん、キミのトモダチのこともワガハイがメンドー見てあげるから安心したまえッ!』

 

 ヒュー♪ 頼もしいッス、ケット・シーの兄貴ッ! 

 

 いうてネコだからな。危険察知能力は高いだろ。

 

 

 ◇◆◇◆

 

 

 美少女がふたりいるのに筋肉モリモリマッチョマンのおっさんを同行者に選ぶなんて転生者の恥さらしもいいところだが仮にも小隊長なのだから人員の安全を優先して結界を使えるコノミ女史、じゃなかったコノミ伍長を場に残すのは当然の判断である。

 女の子との好感度? そんなもので命が買えるならヒロインのひとりから選んだ彼女もろとも刺される主人公なんていないんだよ。同族の悪魔を一軍メンバーとして長く連れ歩いても次回の悪魔交渉ではマッカを持ち逃げされたりマグネタイトを持ち逃げされたり宝石を持ち逃げされる世界でスカウトする悪魔のことを選り好みできないのと一緒だ。

 

 それにしても相変わらずボロボロになった文明を眺めながら歩くのは不思議な気分になる。順番で考えるなら建築物が最初、次にヨモツイクサの発生、そして廃墟化がファイナルアンサーでいいんだよな? まさか謎の侵略生物がぐにょんぐにょんしているところにコレかわちぃ! なんてノーテンキにビルヂングやり始めるような奴はいないだろ。

 案外、一回バッサリ滅んだというか打ち捨てられたコロニーを海軍が回収して改修して活用してるとかだったり? それにしたって建築物の文明レベルがこれまで見てきたモノと違い過ぎるよな。大正浪漫の横で宇宙戦艦が停泊しているよりはコッチの近代建築のほうがよほど似合っているのにね。それとも帝都があるという惑星クニヌシは転生前の日本ぐらい便利な生活してたりするのだろうか。

 

 ま、そんな空想よりも遮蔽物が多くて縦方向に高さがあるから奇襲への警戒が大変だという現実のほうが大事なんだけど。ピクシーさんのMAG反応サーチとケット・シーのしっぽセンサーのおかげで飛び出してきたゾンビやらゾンビ犬なんかに遅れを取るほど甘い鍛え方はしていないが、獲得できるMAG結晶体の質が向上しているのであれば油断はできない。きっとレブチューンモーターのミニ四駆とトルクチューンモーターのミニ四駆ぐらいは強さに違いがあるはずだ。

 

 

 できれば厄ネタを見つける前に、俺もアクマ入りのMAG結晶体を拾いたいところだが…………うん? 空が赤い? 曹長。

 

「はい、中尉殿。自分にもそのように感じます。コロニー全域の消灯時間まではまだまだ余裕がありますので、それとは別物のなにかでしょう」

 

 ふむふむ。

 

 ピクシーさん的には? まだまだマグネタイトの反応は感じないけどイヤな雰囲気はする。じゃあビンゴだな! 

 

 

 どれ、せっかく双眼鏡なんかも用意してくれてんだから適当な建物の屋上まで行って観察してみるべ。ブタ玉野郎か、それと同格の強さを持つ乙型ヨモツイクサが現れる兆候かもしれないなら迂闊に近寄るのは愚の骨頂だ。

 俺がD民だったときのような現状維持と最低限の防衛のための戦力ではなく、今回は前線基地に人造超力兵を含む相応の戦力を集めてはいるようだが……数の暴力で押し寄せられてはどうしても防ぎきれない。万里の長城よろしく区画の端から端まで壁で区切っているワケじゃないからな。

 

 

 いうてこの距離でピクシーさんが敵対するMAGの反応を感じてないなら直ちに何事か起きるようなことも────おっふ。

 

「むぅ……これは、また……。昔、水棲生物図鑑でタコなる生き物を見たときには、こんな珍妙なヤツでも食えば美味いのかと興味をそそられたものでありましたが……アレはどうにも、煮ても焼いても食えそうにありませんな?」

 

 

 …………マガツカじゃねぇかよボケェェェェッ!!!!

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