メガテニストはディストピアでもヘコたれない。   作:はめるん用

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コマンダー:5

 少しだけ想像してみた。

 

 俺ツェーなチート転生モノだったり、あるいはリュウドウ様のお気に入りシキガミ使いの学生パーティーが主人公の物語だったなら、たぶん俺みたいなポジションの人間が直接顔を出して問答したり「ならば俺を倒してみせるんだな!」みたいなノリで戦闘したりする場面なのだろうと。

 もちろん俺はそんな余計なことはしませんよ? 最終フェーズで使うはずだった技術屋さん特製の催涙弾などを駆使して速やかに制圧しましたのでね。初日にベースキャンプのことを見逃してやったのが見事に足を引っ張ってくれたらしく、候補生たちは見張りもほとんど立てずにグースカ寝てたものだからあっという間に終わったんだぜ☆

 

 

 そうそう。

 

 ソウゴ少年の所属するグループのリーダーはユウキくんというのだそうだ。たぶん幽鬼じゃなくて勇気のほうだと信じたい。男の子ふたりに女の子4人、6人小隊で活動していたらしい。

 

 リュウドウ様のお気に入り、いわゆる“偉い人からのご贔屓にして特別扱い”タイプの主人公特権を手にした……いや、押し付けられた? ラノベ頭で考えるとご都合主義のパターンが主流だけど、ゲームとかマンガの主人公って本人は真面目に努力してただけなのに上の気紛れで抜擢されて周囲との関係が拗れる権力の被害者みたいなのも少なくないからなぁ。

 それはそれとして、まぁお気に入り設定されるだけあって実力というか心構えもなかなか悪くない。合宿かキャンプ気分で装備を完全に外してパジャマで寝ていた大間抜けと違って、この6人を中心に30人ぐらいの候補生たちはいつでも戦えるように備えていたからな。予めタイムリミットが設定してある条件なら悪くない判断だと思う。これが先の見えない任務の最中であれば是非は難しいところだが。困ったことに身体を締め付ける装具を外さないで休憩しても回復しないんだよね。

 

 

 もっとも? 

 

 その心構えをブチ抜いて滞りなく制圧するために怪我人のテントを優先して狙ったんだな〜コレが♪ 

(人間のクズ)

 

 

 ははは、混乱して右往左往している候補生たちの姿は子どもに弄ばれて巣を破壊されたアリよりも無様だったぜェッ! 少なくともアリのほうは一目散に危険から逃げるだけの知能があるんだからなァッ! こういうのって、実際のトコどんな訓練しておけば冷静に対処できるようになるんだべな? 俺はD民時代に嫌でも適応しなけりゃ死ぬからどうにかしたけど。

 あと、燃え盛る候補生たちのベースキャンプを眺めてニコニコしている巫女さんたちが普通に怖い。結界やらなにやらで協力を頼んでおきながら予定よりも早くに切り上げることになったと頭を下げに行ってみれば、候補生たちが想定を下回るほど無能だったのは中尉殿の責任ではありませんと優しく微笑みながら答えてくれたよ。よ! フゥ~ww これが巫女さん流の氷結ハイブースタかな? 

 

 

 さて、責任者として俺には事の顛末を最後まで見届ける義務がある────なんてこの俺が言うとでも思ったかッ! 情報が伝わるより先に学校に戻ってサガミ大佐に報告する段取りを整えるんだよォッ! 指示を出して現場の人らに仕事を任せた時点で俺が指揮官としてここで果たすべき役目は終えているのだから、想定外の出来事について上官に報告するためにサクサク次の行動に移るのが正解だろ。

 

 個人を相手に24時間ぶっ続けで臨戦態勢を維持しとけ、なんて無茶は言わない。だが組織ならば組織らしく24時間いつでも対応できるような仕組みを完成させておけ、ぐらいは言うぞ? ヒトの理が通じない化物と戦う前提の軍隊が夜はおネンネしますね〜なんて甘えたこと許さねぇからな? 

 まだまだコロニー全域の起床点灯には早い時間だが、誰かしら起きているヤツがいるならサガミ大佐の所在地ぐらい聞き出すことはできるはずだ。もしも渋るようならデコかコメカミのどっちかでタバコを吸うコツを教えてあげるね☆ て微笑みながらちべた〜い鉄の某をグリグリしてやればキリキリ喋るだろ。こっちは生き残りを賭けて御三家の面目潰してんだ、寝ぼけた上官ぐらいケツを蹴り上げてでも叩き起こすのを躊躇う理由はねぇぞ。

 

 

 ◆◇◆◇

 

 

「おう、早かったな中尉。もう夜食は済ませてあるか? まだなら報告の前にきな粉餅でも一緒に食うか? 残念ながらモチ米ではなく色付き寒天のほうだが、適度に満腹になるわりに胃もたれしなくて夜食には悪くないぞ」

 

 

 大佐、起きてた〜よ。  

 

 

 守衛の詰め所が明るいからと接近すれば、軍学校で一番偉い人が赤や青など色とりどりな寒天に茶色いきな粉をパスパス振りかけて食ってんだけど? 大佐、アンタこんなとこでなにやってんスか? 

 

「そりゃお前、莫迦どもが意気揚々と乗り込んできて好き勝手喚いたと思えば脱落者どもが徒党を組んで演習場へ向かって行ったのだからな。

 貴様がそうした連中に遠慮しないことを知っているワシは、どうせ期限を待たずに対処して戻ってくるだろうと読んで待っていたワケだ。なにか訂正する部分はあるか?」

 

 はい、大佐。さすが学校長スゲェッ! と喜ぶべきか、それともサガミ大佐でも階級が大尉以下の相手に遠慮しなければならないことを嘆くべきか迷っております。

 

「フンッ、嫌味か貴様。演習前の挨拶で莫迦どもをあれだけ堂々と虚仮にしておいて良く言う。何人かの教官どもは貴様にラムネ水を馳走してやるために銭を集めていたがな。ワシもいくらか心付けしておいた、有り難く頂戴しろ。それで……なにがどうなった?」

 

 かくかくしかじかでマヨネーズの餃子でケチャップがウホッ! いい男ッ! してパワーアップであります。

 

「貴様、本当にただのDクラス出身者か? いや、過酷な国家貢献義務を生き残ってきたからこその判断の速さなのかもしれんが。だが中断の理由としては実に真っ当だ。忌々しいほどにな。半魚人どもが作戦成功のために協力しましょうと下手に出てきたモノを陸軍がご破算にしたという絵図さえなければ貴様を褒めてやったのだが」

 

 へっへっへ、そいつは申し訳ネェですなダンナぁ〜。

 

 なにせ今回の面倒事で必要な物があるなら隠すことなく教えろと上級大将閣下直々に命令されてしまいましたからな。だったら海軍としての矜持と陸軍に対する蟠りを全部まとめて自分に預けて必要なときに頭を下げる用意をお願いしますと答えた次第であります。

 それで睨まれて処罰されたところで、本作戦が失敗してコロニーそのものが破損すれば全員仲良く御陀仏でありますから、自分はなにひとつ不利益は被らないという寸法であります。まぁ、この意見具申を聞き入れて下さったときの閣下のご様子といえば、数秒ほど時が止まったかと思えば言葉通りの意味で腹を抱えて爆笑しておりましたが。少尉風情がこの己に対して脅迫の真似事とは生意気なことを、しかしだからこそ気に入ったぞ貴様ッ! といった具合に。

 

「かぁ〜〜ッ!! あンの強欲頑固業突張りめがッ!! いつまでも半魚人の親玉なんぞやっとらんで、何処ぞ適当な水の惑星にでも沈んで水圧で粉々になってくたばっちまえってんだ!! ……はぁ、嫌だ嫌だ冗談ではない。だがもう手遅れなら合わせるしか無い。

 中尉、タクマ少佐を含めて文官どもを貸してやる。今日の夕刻……いや、明日の朝まででも構わん。30時間以上あれば休憩を含めても報告書を仕上げることぐらいできるだろう? 無理とは言わせんぞ、これだけ派手に暴れておいて机仕事だけは門外漢などと巫山戯た言い訳は認めんからな」

 

 ハッ! 微力を尽くす所存でありますッ! 

 

「それと、紅葉の当主代行も自力でどうにかしろよ?」

 

 

 うげぇ。

 

 そっちもあったか〜。

 

 

「リュウドウ閣下との会話は胃の辺りが痛くなるが、リンドウ閣下との会話は頭の前のほうが痛くなるから覚悟をしておけ。アレもまた軍隊に対する理解が足りておらん。

 軍人と武人では戦闘における優先順位がまるで違うというのに。我々には誉れを理由に勝手な判断で死ぬ権利など存在しないのだが……まぁ、そういうタイプの女傑だ。せいぜい殺されんように気を付けろ」

 

 

 ディストピアくんもっとちゃんと個人の人格否定して個性を潰しておいてよ。役目でしょ?

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