メガテニストはディストピアでもヘコたれない。   作:はめるん用

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コマンダー:2

 フェーズ1 

 演習開始から6時間

 

 

 学生諸君の様子は上振れも下振れもなんだか大変なことになっている────いや、上振れのほうは軍人さん視点で言えばプラス評価だから別に大変ではないのか。

 

 

 まず良い報せから。

 

 シキガミの力に頼り切りかと思っていた候補生たちだが、どうやら下士官たちとの実技訓練で身に付けたトラップ対策まですっかり忘れていたワケではなかったようだ。

 

 残念ながら全員が、ではない。それでも丁寧にトラップを解除しながら探索をする姿には思うところがあったらしく「怠けているようであれば拳骨のひとつでも落としてやらねばならんと思っておりましたが、教えが血肉になっているところを見せられると応援したくなってしまいよろしくないですな!」とご機嫌である。

 そうした連中は無事、ヒントが書かれた書類等も確保できている。手心を加えるという宣言通り候補生たちを直接狙うようなトラップは“今はまだ”禁止しているが、その代わりに書類を隠しておいた戸棚が燃えたり箱が爆発したりといった底意地の悪い仕掛けを用意していたのだ。案外、火炎属性を得意とする悪魔ベースのシキガミが火薬や油の気配に気付いたとかだったりして。

 

 テロリスト相手を想定した訓練だけに、今回のように予めヨモツイクサが敵だと判明している場面ではどうか……と思い仕掛けたが。コレ片付けだけで3日はかかるんじゃないの? と思っていたけどなかなかやるじゃない! 

 

 

 つまり、悪い報せはその逆ってコトで。

 

 

 仲間割れ、からのシキガミバトル、からの装備損傷、からの負傷。

 

 うーん、この。

 

 ちなみに原因はもちろんトラップである。こちらの意図を掴めなかったアホどもが虚仮威しと勘違いしてガンガン進んでガンガン消し炭にしてしまったのだ。これ仕掛けがどうこう以前に偵察任務の適性見るっつってんのに無警戒で敵地を歩き回るとか論外過ぎると思うんですがね、俺がおかしいのかな? 

 しかし何処かのタイミングで誰かが違和感を覚えたのか、それとも合流した別行動の候補生たちから情報を仕入れたのか。とにかく自分たちの間抜けを自覚させられた候補生たちは案の定、責任のなすりつけ合いから始まり殴り合いに発展してシキガミ召喚からの魔法スキルの撃ち合いまで悪化した。

 

 うーん、この。

 

 これには生意気なガキどもの鼻っ柱を撫でてやろうと意気込んでいた軍曹や曹長も、先達として後輩たちが失敗から学んでくれることを期待していた中尉や大尉も、それはもうしょっぺぇんだかすっぺぇんだかワカラン顔になるしかない。

 なんとなく、たまたま近くにいた陸軍少佐の女性に、こういうことが起きる可能性もゼロではなかったのだから、このエリアにやってきた候補生がちょっとアレなだけで他のエリアではいくらなんでもここまで酷いことにはなってないよね? と確認したらどうなったと思う? なにかを諦めたような寂しい微笑みで首を左右に振られちゃった! ウソでしょ……? 

 

 

 いや、俺は諦めないッ! 

 

 きっとアレだ、なんかこう戦意向上というか闘争本能が刺激されているというか────そう! なんか悪魔とエンカウントしそうなときに感じたようなデバフが効いているんだよきっと! 

 それはそれで不味いな? 真面目にシキガミにそうした精神干渉、いや精神汚染を引き起こすような副作用があるなら余計にコロニーの奥地へ連れて行くの嫌なんですけど。

 

 ま、人造超力兵たちがノーリアクションってことはセーフ判定なのだろう。ノーリアクションっていうか、呆れて物が言えないっていうか。そりゃそうなるよなー、だってシキガミ使いを相手に格闘戦に持ち込めるようにとアラヤン式を手配してくれたのに、肝心の訓練相手があのザマではな〜。 

 でも仕方ないね。人間関係はクソを煮詰めたように気まずいかもしれないけれど、別に仲間割れしたから即時失格なんてルールは設けていないからね。ルール以前の論外なのでは? と言われたら反論できないが、少なくとも今回の選抜試験では彼ら彼女らの権利はまだ失われていないのだ。

 

 

 さて。

 

 なんでこうなった? 

 

 

 俺が支配する側の黒幕ならば、5割前後の確率でこんなしょーもない当たり外れガチャせにゃならん未熟なシキガミ使いを量産してなにを利益とする? なんらかの理由で悪魔、いやアクマの存在を封じておきながら存在が暴かれるリスクを無視してまでこの状況を許可、許容、あるいは推奨して得られる利益とはなんだろうか? 

 少なくともコロニーの奥に鎮座してる肉塊を除去したい、という目論見はあると思うんだけど。そうでなければ御三家や八葉家といった階級社会の象徴が揺らぐようなことを是とはしないだろう。秩序による支配には“神聖にして犯すべからず”の領域は絶対に必要だ。そうでなければ四大天使もアレほどまで狂わない。もっとお兄ちゃん大好きなミュージシャン志望のミカ坊のこと見習えよテメェらはよぉー。

 

 んー。いや。そもそも天使と頭メシアなテロリストたちがイコールで結ばれない……結べないんだよなぁ。テンプルナイトを名乗っていたのは実にメシアらしくて如何にもそれらしいが、誰も彼もが救世主を名乗ることをメガテンの天使が黙って見ていることができるのかってーと……なんか、違うかな。

 しかし帝国の上の方は飯テロ肉天と繋がっているのはほぼ確実。一部なのか全部なのかは知らんが。そして上級国民の上澄みは天使だの天使兵だのというケッタイな称号を与えられて────まて、なら上澄みの象徴であるはずの御三家は? リュウドウ様は? 取り巻きでさえリュウドウ様を「天使」と呼称するとこなんて見たことないが? 八葉家と天使の肩書は別枠扱い……というか競合? 一緒に扱うと不都合な事実がある、とか。それとも式典のような場所でのみ扱う特別な呼び名というパターンもあるっちゃあるけど。

 

 八葉家の始まりが葛葉ライドウの系譜だったとして、アレのシステム的に天使は……〇〇属の大カテゴリーがあって、その中に天使と悪魔がそれぞれいるって感じだったよな、確か。ユウコ女史が簡易召喚の儀式は色んな方法があると言っていたような気がするが、ここのシキガミ使いたちのやり方はまんまライドウスタイルだし無関係ではないだろう。

 

 

 そうだ、考えろ。

 

 

 思考を止めるな。

 

 

 選抜試験はそれとして、生き残るための道筋を探し続けろ。タイムリミットは早ければ選抜試験の最中に、遅くともコロニー浄化作戦まで。幸いにして今回の俺の立ち位置は名目だけのトロフィーみたいなものだ、ゆっくりと思考を回す時間は充分にある。それにシキガミ使いという建前で悪魔を使役している集団を外側からじっくり観察できる機会なんて貴重だろうし。

 

 悪魔の力……アクマの力、かぁ。結局、要塞で報告があったっていう正体不明の敵についても詳細はわからないままだったな。たぶんストレンジジャーニー的なノリなら見えないだけで悪魔だと思うんだけど。だからこそ人造超力兵が暴走したんだろうし。

 

 

 いやホント、敵も味方も悪魔だらけでア〜クマったなぁww 毒を以て毒を制すって、こういうコトを言うのかねぇ? いっちゃえばあのクソデカ肉壁も悪魔みたいなもんだろ? だってヨモツイクサの落とすMAG結晶から悪魔召喚できるんだから。

 

 

 

 

 …………。

 

 

 

 

 あの巨大なヨモツイクサの肉壁まで、シキガミとして自我を取り戻した悪魔を送り込むのが目的か?

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