メガテニストはディストピアでもヘコたれない。 作:はめるん用
アンケートの結果は適当で良いとのことでしたので、今回の話もいつも通り転生者視点のテキトーな内容で進めていきます。
「しかし、なんと申しますか……陸軍のひよっ子どもを鍛えるお手伝いを、という命令でありましたから、てっきり戦闘訓練のようなものを想定しておりました。それがフタを開けてみれば驚きの大規模演習とはッ! いやぁ〜、重装火器の出番が無いのは残念でありますが……なんとも気合が入る訓練でありますなッ!」
こんにちは、異世界の車窓(軍用トラック)から転生者の俺です。
同行者はご存知の通りギャルゲーみたいな髪と瞳の配色であるアラヤン式人造超力兵士。そして選ばれたのは、いつぞやのアマラ経絡移動で護衛を担当してくれたヤスツナちゃんでした。前回の任務では活躍の場が無かったということで士気はとても高いご様子。
なお、副官配置でひとりちょーだい♪ したはずが実際には18人ほど部下として送られてきたというオチもご用意しております。
多くな〜い? 多くな〜い?
超力兵が多くな〜い?
多くな〜い、多くな〜い。
割合的には多くな〜い。
今回のヤケクソから始まった演習、動員数で言えば4桁届いちゃってるからな……。
御三家が主導の大作戦、当然ながら正式な形で書類を残す必要があります。だから、日本帝国海軍特務中尉の階級を承る必要があったんですね。
そのせいでコロニー勤務の陸海両軍から中佐以下の物好きどもがワラワラと演習に参加してきおった。何故かって? この演習はもう実戦そのものみたいなもんだから俺の扱いも海軍大佐になってるからサ☆ 下士官たちからの軍団長呼びも冗談ではなかったワケだ、わはははは! そこは冗談であれよ?
だがまぁ、これでアホの子たちをへし折って危険から遠ざけるついでにコロニー規模のやらかしを起こす可能性も減らすことはできるかもしれない。
ハズレの2箇所をどうカモフラージュするか、という問題をマンパワーで雑に片付けることができたからな。人間、苦労して手に入れたモノは価値があると信じたくなる。だからこそ、ハズレのうちのひとつには最大戦力を待機させる意味があるのだ。
もちろん、勘の鋭い誰かしらが途中で違和感に気付くかもしれない。と、いうよりハズレならハズレだと判断するための情報を得る機会はしっかりと用意しなければ演習にならない。その辺りは知力が高そうな人たちに丸投げしたから大丈夫だろう。
だが、ここで合格者を30人ぐらいまで絞るつもりだと話したことが候補生たちの枷となる。疑心暗鬼や裏切りなんてメガテン世界ならフライ系の定食に添えられたパセリぐらい取るに足らない要素でしかないから。
それにしても、お互いに山猿だの半魚人だの右手で中指立てながら左手で握手してニックネームで呼び合うぐらい仲良しさんだけあって派手なお祭り騒ぎみたいになってきたな? お前らディストピア社会の軍人だって自覚ある?
でもメガテニスト的メタ読みするならこれが正解なのかもしれない。良質な生体マグネタイトを集めるなら人間性を枯渇させるワケにはいかないだろうし。自由を完全に奪うのではなく、制限された中で統制された自由を選ばせるって寸法だ。
案外、このコロニーそのものが巨大なMAGパッケージとかだったりして。何十万、何百万の人間がここで生活しているのかは知らないが、御三家やリュウドウ様のことも含めて人間らしい暮らしをしているなら喜怒哀楽の感情エネルギーも勝手に大量生産されるワケだから効率もそれなりに良いんじゃない?
なんてな。ははは。
…………。
アルカディア……。
ギメル……。
仮想現実……。
うっ、頭がッ!?
嫌なこと連想してしまったが、仮に違ったとしてもコロニーの動力が住民から生成されているMAGの可能性は普通に有り得そうだよなぁ。
宇宙関連の知識が乏しい俺でも、こういう巨大建造物が重力と遠心力の釣り合うラグランジュ点とかなんかそーゆーのを利用しているのは知っている。質量のデカい物体を動かし続けるにはより大きな力による干渉を利用しなければ簡単にエネルギーが枯渇するのも想像できる。
だからこそ、このコロニーを管理・運営するのにMAGを利用するってのはけっこう真面目な考察ではなかろうか? あるいは余剰分をガンダムXのサテライトキャノンのアレみたいに地上に照射して利用するとか、そうでなくても結晶体の状態で輸送するとか、たぶん俺が思い付くような方法なんてとっくの昔から実践されていることだろう。なんならアマラ経絡とかいう手軽で便利で危険な移動手段もあるんだし。
と、なると。
コロニーの奥にぼんやりと見えている巨大な肉壁はとんでもなく厄介な存在ということになるよな? 一番困るパターンはなにか、それは相手側がヨモツイクサを量産するためにコロニーを循環する生体マグネタイトを短期間で大量に消費する────つまりは人間側から奪っていくことだ。
どれだけコロニーの中が快適だったとしても……いや全然そんなこと実感したことないけどね? 培養液の中で産まれて管理番号を割り振られたときから宇宙開拓ロマンなんて微塵も感じなかったけどね? それはともかく、壁一枚向こう側に広がる宇宙空間は極低温と真空の支配する死の空間である。生命維持のための施設や装置がシャットダウンしたら人間なんて簡単に全滅してしまうだろう。
俺の予測が外れて電力稼働だったとしても同じことだ。メガテン世界の悪魔は電気や機械にも強かったりするからな。そして、軍の上層部がこの辺りを想定しているかは怪しいところだ。前提となる知識に悪魔の存在があり、アラヤン式人造超力兵がそれを認めていないとなれば……うーん、コロニー浄化作戦そのものを潰せる方法があれば面倒も少ないのに。
つーか、コレ。ひよっ子たちをへし折っても、俺が偵察任務を押し付けられるフラグは折れなくない?
う〜ん……? まぁ、考えようでは知らぬ存ぜぬの間にコロニー全域の機能不全に巻き込まれて問答無用で死ぬよりはマシか……? 生きるために藻掻く権利を得られると思えば、メガテン基準ならそこまで悪くない状況なんじゃね……?
そうだな、人生なんてモノは前向きに考えることで困難が乗り切れることだってある。シキガミ使いの学徒たちが未帰還となってそのままヨモツイクサの材料にされたところで偵察してこいと命令されるよりは何百倍も恵まれているじゃないか。
よし。
モチベーションは回復したぞ!
改めていまのうちに考えておくべきことはなんだろう? そうだな……こんなクソみたいな条件でも合格まで辿り着いた候補生をどう扱うか、その辺りもしっかり決めておく必要があるな。俺の目的は学徒たちを無駄死にさせないことだが、リュウドウ様に選抜試験として許可を得た以上は合格者を蔑ろにするワケにはいかん。
あとは────。
「少尉殿、いえ特務中尉殿ッ! ヒドいじゃないですか、まだ義手だって完成していないのにこんな面白そうな大騒ぎを起こすなんてッ! どうせならもっと早くに声を掛けて下さればよかったんですよ、アイディアを実際に使える形にするのだって時間と予算が必要なんですから。
ですがまぁ、切羽詰まった状況で臨機応変な発明ってのもコレはコレでなかなか乙なモンです。まずは最初の6時間を乗り切るためのトラップを山盛りタップリ用意して軍曹や曹長の皆さんにはお任せしてありますんでね。ここから軍学校の子どもたちを楽しませるための愉快な玩具、ドンドン開発してやるとしましょうッ!」
……技術屋のお兄さんお姉さんたちのバイオレンスつくってあそぼが暴走しないよう見張らないとダメかもしれん。