メガテニストはディストピアでもヘコたれない。 作:はめるん用
「初めまして特務少尉さま。此の度の実戦形式の評価試験のお手伝いをさせていただきます、わたくし、紅葉家血縁の巫女……名をコノミと申します。ヒトが苦労して身に付けたのも知らずに偶然と気紛れでシキガミの力を与えられて調子くれてやがる同年代のクソガキどもを全員まとめてブッ殺帝国の未来を担う若き兵士の皆様方の御力になれる機会を与えて下さったことに感謝いたします」
「ヒーホーッ! オイラの姿が視えるニンゲンがコノミのほかにもいるなんてビックリだホ〜ッ! ってことは、オマエもオイラとおんなじトモダチがいるってことホ?」
…………。
…………。
え?
…………。
…………。
え?
巫女さんはまだ許す。だが隣で浮いてるとんがり帽子にマントとランタンを持ったカボチャ頭、テメーはダメだ。フハハハハッ! 忙しさで疲れた脳ミソに想定外の事象と情報が流れ込んできて馴染むッ! 実に馴染むなんてそんなワケねぇはクソボケがぁぁぁぁッ!! 落ち着け……クールになれ特務少尉……俺はどんなときでも冷静沈着に苦難を乗り越えてきた……こういうときは落ち着いて氷結属性の悪魔の数を数えるんだ……。ジャックフロストが一匹、ジャックフロストが二匹、ジャックフロストが────仲間を呼んで次々と合体して……ッ!? まさか、アレはッ! 伝説の男と呼ばれるほどのソックスハンターでありながら風紀委員の女性と禁断の恋に落ちたのち芝村家の秘密を探り行方不明となった歌武器役者だとッ!! おのれ、また悪魔を集めて無理やりハレルヤを歌わせてコロニー全域を干上がらせるつもりかッ!!
よし。
俺は正気に戻った。
取り敢えず……ピクシーさ〜ん。
「あら、まぁ♪」
「ヒホッ!」
「……ふーん? 前に見たのは氷だったけど、コッチは炎の魔法が使えるタイプ? ま、いいわ。どの程度の付き合いになるのかは知らないけれど、アタシたちの邪魔をしないなら仲良くしてあげてもいいわよ!」
(ケケッ! ま、バカ正直に手札を全部見せる必要なんてネェよなァ?)
(火ィィィィのをぉぉ扱いならァァァァまぁぁかせぇろぉぉぉおぅぅぅぅッ!)
(かぼちゃ? かじっていい?)
一応、味方だから齧らないであげて?
気になることはある。クレハとか思いっ切りサガミ大佐が言ってた御三家のひとりだし、演習のための場所を確保するのに巫女の協力が必要だとは説明されたけど大物が紹介されるとは思っていなかったとか、あとお前それ普通の巫女が扱うシキガミじゃないだろという事実もそうだけど、もしかしてまたヒーホー族かよとか嫌な予感も一旦横に置いておいて。
コノミさん、とやら。
貴女も不思議な友人と付き合いがあるようだけれど、人造超力兵についてはどのようにお考えで?
「彼女たち、生体マグネタイトさえあればお肌のお手入れが不要だそうですね? もちろん、わたくしは二十歳にも満たない若造ですのでまったく羨ましくありませんが。えぇ、まったく。人形風情が」
OK、俺の質問が悪かった。
そのカボチャ頭がクールな彼? いや彼女? を人造超力兵に見られたことは?
「ヒホ♪ コレの良さがわかるとは、オマエ、ニンゲンにしては良いセンスしてるっホ〜! と、いうかオイラはどこからどー見ても一流の紳士に決まってるホッ!」
「そんなずんぐりむっくりなカボチャ頭で紳士もなにもあったもんじゃないでしょ」
「なんだと〜!? ケンカならいつでも受けて立つホ〜ッ!!」
「……なるほど。人造超力兵とわたくしのカボタマくん、そして特務少尉さまの可愛らしい妖精さんは相容れぬ存在であると。どうやらわたくしは知らず知らずに危険な綱渡りを続けていたということですね?」
さすが巫女さん、話が早いぜッ! つまりそーゆー方向性に嗅覚が働くような事柄に心当りがあったり御縁があったりするということですねわかりたくないです。でも俺も半分……いや、まだ一割ぐらい? は、危険な側の人間に含まれている可能性があるんだよな……。
うーん、これはちょっと想定外。欲しい能力と役割を指定してアラヤン式人造超力兵をこちらに送ってもらうことで、シキガミに対してどんな反応をするのか探りを入れようと思っていたのに。まさか協力者である巫女さんがシキガミ使いではなくデビルサマナーだったとは。もとよりピクシーさんたちの力を借りる予定はなかったけれど、気を付けにゃならんことが増えちまったのうヤス……。
ま、いーや。
優先順位、優先順位。
演習の場所としては戦闘区域の浅い地域を利用することにした。巫女の結界の力で候補生たちは安全に狩りをしているのであれば許可も取りやすいかもしれないと申請してみたら、まさかのアッサリ承認でちょっと頭が痛くなったりもしたけれど。指定した俺が言うのもなんだけどさ、ヨモツイクサ出るんやで?
いくらなんでも自由すぎるだろうと思いカゲツ曹長に確認したら、候補生たちの訓練のために開放されている戦闘区域よりも奥に防衛拠点が存在するので危険は少ないということになっているらしい。まず防衛拠点と本陣の間で普通に敵対存在が歩き回ってんのダメだと思うんですがそれは。物資や人員を輸送する度に大規模な護衛部隊でも出動してんの?
それとも、単純にヨモツイクサの出現条件が完全に分析できていないということだろうか? ふーむ、だとすれば多少ムリを押し通してでも前線基地を設営するのは理に適っていたりするのかも。海軍と違い巫女という便利な手札があるなら、そのあたりも結界とやらで解決できる範囲なのかもしれない。
どのみちそうした広い視野での活動は俺が考えるようなことではない。大事なのはヨモツイクサの駆除任務と同じ環境で────遮蔽物の多い、俺の前世基準の現代建築による廃墟で戦えるということ。
ルールをこちらで自由に指定できる上でギミック仕込み放題とかヌルゲーやがなこんなんww 400人の数の有利とかww ナニソレ美味しいのww 気絶したアホが侵入してきたヨモツイクサに喰われないようにちゃんと守護ってやらんとなぁ。いくら実戦形式とはいえ死人を出すワケにはいかんめぇ。
「実戦形式というのであれば、その危険性も含めて実施するという選択肢もアリだとは思いますが? いえ、別に本当にヨモツイクサの餌にしてしまえとまでは言いませんが、特務少尉さまは偵察任務に想定外は付き物であるとお考えなのでしょう?
ならば、不確定要素のひとつとしてアレらを利用するのも決して間違いではないかと。えぇ、決して戦場で簡単に意識飛ばすような戦争している自覚の無いカスは喰われて糞にでもされちまえなんて思ってもいませんが。あ、戦死者への祈りを捧げる必要があれば是非とも遠慮なくわたくしに命じてくださいませ」
俺に対する態度と候補生たちに対する評価の高低差なんか激しくない? いや、巫女さんの立場からして見れば御三家の方針はちょっと賛成しにくいか? 断片的な情報からの推測でしかないが、巫女たちもだいぶヤベー環境で酷使されてそうだし。
仮に食事や睡眠などの生活レベルの待遇が良かったとしても、毎朝必ず30パーセントの確率で処刑されるボタンを強制的に押させられる日々を恵まれているとは言わんだろう。実際のところは知らんけど、何人もの巫女を頭メシアなテロリスト集団に連れ去られたにも関わらず任務ごと無かったことにされてお咎め無しだったもんなぁ。
目の前のコノミ女史がたまたまこの有り様なのか、それとも巫女たちの感情がそっち方面に振れているのかはわからない。だがクレハ……紅葉の巫女、御三家に連なる立場の巫女が協力的であるならこれほど心強いことはない。
やっぱりさぁ……事前情報ナシのところへ突っ込んで行く偵察任務ってアクシデントが付き物だからさぁ、そういうときの臨機応変な対応力っていうの? そういうところを候補生たちには見せて欲しいよねぇ? そのための実戦形式の戦力評価だもんねぇ? じゃけん、巫女さんたちには是非ともご協力を丁寧にお願いしましょうね〜♪