メガテニストはディストピアでもヘコたれない。 作:はめるん用
ほぼほぼ偶然の産物ではあるが海軍側の偉い人まで話は通った。さす俺、幸運カンスト系チート転生者なだけあって物事が常にプラスへと傾いていくじゃないの。これも前世で上位存在からどんなパンツを履いているか問われたときに堂々と履いていないと答えておいた御利益だな!
だからといって必要な手続きを省略しても良いということにはならない。ここは階級が支配するメガテン世界、ラッキーボーイだろうと上司に報連相はしなくちゃならんのが勤め人の辛いところよ。
と、いうことでリュウドウ様に威力偵察部隊の人員を選抜するための実戦評価を行うための学徒たちの安全に配慮するためのMAGコートを海軍から引っ張ってきたので可能であれば一言なり一筆なり宜しくお願いしますと頼んでおく。
「……ッ!? そう、か……そうか」
うむ、これが無能のボンボンなら良くも悪くも即座にリアクションのひとつでも出てくるところかもしれないワケだが……サガミ大佐が評価していた通り、ただのお人好しではなく政治的な能力は高いらしい。
しっかり手遅れにして後戻りできないようにしてから報告に来たことに気付いて渋い顔をなさっている。知力、統率、政治、魅力、あらゆる面で俺より優れているはずの人間が相手でも、手段を選ばず先手を取ってしまえば多少は勝負が成立するということだ。
「……学生たちはシキガミの力を巧く使えていると思う。そこにキミのような実戦経験豊富な人物の指揮が加われば、このコロニーをヨモツイクサの脅威から解放することも不可能ではないという私の考えは」
はい、閣下。これは閣下の御言葉をただの理想ではなく現実のモノとするために必要なことを順番に片付けているだけのことであります。事実、閣下にお仕えしている忠臣の皆様方は閣下の夢を叶えるために身命を賭して戦場を突き進むことでありましょう。
「そうか…………。キミがそのように言ってくれるのであれば、きっとそれが真実なのだろう」
俺の見え透いた露骨なヨイショでも得意気になってる側近とは違い、ちゃんとテメェの妄想になんか付き合ってられるかクソして寝てろという裏の意図を汲み取ってくれたリュウドウ様の表情はさらなる渋味が増している。マジで優秀だなこの人。内政だけなら。
本当、悪い人ではないんだろうな。ただ本能だけが支配する生存競争という名の殺し合いについて全くと言っていいほど理解が足りていないまま中将としての立場による言葉の重みを気にすることなく理想を口にしちゃうだけで。御安心下さいリュウドウ様、学徒たちは戦地に赴くより先に俺がしっかり磨り潰すので死にませんよ?
「わかった。生徒たちの安全を考慮し、頑張ってくれているキミのためにも、海軍宛にMAGコートや
側近の連中、一瞬だけ嫌そうな顔したな?
軍に対する理解度が足りていないリュウドウ様と違い、取り巻き連中はちゃんと海軍のことを半魚人だと思っているようだ。な〜んて素敵なんでしょ♪ これなら派手に暴れたあとも気兼ね無く海軍側の区画に帰ることができるじゃないの!
そりゃ〜悔しいよねぇ〜ww 海軍が放置していた問題を陸軍が解決してやったぜ! ってな具合で手柄を独占できたはずが、たったひとりの少尉如きに邪魔されて海軍がガッツリ介入する切っ掛けを作られちゃったんだもんねぇ〜ww 陸軍の尉官持ちだから自動的に御三家に心酔する前提でモノを考えていたのかな? そんなんじゃ甘いよ。
まぁいい。連中の企みがどうであろうとリュウドウ様が礼状を準備した時点で実戦評価の許可は出たことになる。本音としては反対してくれたほうが楽で良かったんだけどね。丸投げしておきながら自主的に動かれるのが気に入らないなら自分ではお役に立てません、って帰るだけだし。海軍には自分が責任を持って謝罪に行きますとでも言っとけば取り巻きどもも快く送り出してくれたんじゃない?
実際のところ取り巻きたちは反対したかっただろうな。たかが少尉の分際で勝手に実戦形式の実技評価なんて認められるか、ってな具合で。バカどもがよ、リュウドウ様は中将の地位は飾りのようなものとか言っちゃうぐらい軍人としての自己評価が低いんだぞ? コロニーの管理責任者である上級大将の名前で正式に協力しましょうと言われたら断れるワケねぇだろ。
さ、次だ次。
まずは急ぎで掻き集められたMAGコートが100着ほど、それをタクマ少佐にお願いして候補生たちに配るように……するのではなく。ここで小細工をひとつ“威力偵察部隊のメンバーを選抜するための実戦評価に参加を希望する者は、予めMAGコートの利用申請を提出して身体に馴染ませておくように”と通達してもらう。もちろん在庫は400着であることも一緒に。
たったこれだけのことでもアホを
しかし、だからこそ選別になるのだ。自分たちは成績優秀者だから選抜試験なんか受けなくても自動的に選ばれるに決まっている、と自惚れているようなアホどもを弾けるって寸法よォ!
いるかな……そこまで終わってるようなヤツなんて……。管理社会で仮にも軍人候補として育った学生が書類も満足に書けないなんてことある? 若者必ずしも馬鹿者ならず、そもそも学生たちとの交流が無い俺は実態をわかっていない。さすがに過小評価が過ぎるよな? ま、ここはさすがに全員参加の前提でよろしかろう。
次。日程調整。
これは学校側に都合の良い時期を指定してもらうだけで充分。事の重要性を判断できないピーナッツ頭の教官たちは期待通りに後回しにしてくれたので、アレもコレもと欲張って下準備をするための時間はタップリと確保できた。
それともうひとつ。カゲツ曹長にお願いして、シキガミと召喚器の普及に伴い煽りを食らって体力を持て余している下士官たちに協力を頼んでおく。確かに俺が実戦形式で学徒たちの実力を確認する、とは公表したが……別に〜? 俺ひとりで相手にするなんて言ってないし〜? 俺は少尉だから曹長や軍曹に命令する権利は普通にあるし〜?
こちらの日程調整は協力要請も含めてビックリするほどスムーズでした。もちろん協力を頼むからには具体的な内容について説明する必要があるのだが、話をしている間のみんなの表情のなんと活き活きしていることか。
やっぱり表に出さなくても不平不満は溜まっていたということだろうか? 雰囲気につられて俺もうっかりピクニック気分のお子様たちに戦争を教育してやれ〜、なんて言っちゃったけど、一糸乱れぬ見事な動きで了解であります軍団長殿ッ!! って敬礼されちゃったよ。なんだ軍団長って。
さぁ、まだまだ仕込みをやらにゃならんことは沢山ある。あ〜、忙しい忙しい! だけど俺、挫けないわッ! だってこれも全て、未来ある若者たちの生命を守護るためなんですものッ! 尊厳のほう? すいません、それウチでは取り扱ってないんですよ〜。ケケケ。