メガテニストはディストピアでもヘコたれない。 作:はめるん用
知りたくなかったけれど知らなければ命に関わる選択を見逃したかもしれない話を聞かされた翌日。
「初めまして、特務少尉殿。サガミ大佐の幕僚として、主に人事に関わる部分を任されているタクマだよ。階級は少佐だけれど、僕は主に書類仕事を評価されて昇進したものでね。戦闘に関しては期待しないでくれると助かるかな」
優男の裏方仕事担当か。テンプレなら腹黒キャラだったりするが、さすがに初対面の相手に偏見が過ぎるかな。
「ちなみに少尉に今回の貧乏くじを引かせるように誘導したのも僕だよ。いやぁ、学徒たちをどうにかしようにも手頃な手段が思い付かなくてねぇ? リュウドウ閣下の取り巻きを相手に少しだけ囁いてあげたのだけれど……いやぁ、こうもトントン拍子に事が進むと楽でいいねぇ〜」
お、喧嘩か? コレもしかしなくても喧嘩を売ってんのか? ナメんなよ、こちとらいつでもどこでも階級が上の人間相手には瞬速で土下座ができる臨戦態勢で対面してんだぞコラァ。
「いやぁ、申し訳ないと思う気持ちに嘘偽りは無いんだよ。本当だよ? もうね……偵察任務だって言っているのに、志願者が300人を超えてるんだもの……。どうもねぇ、教官たちを含めて威力偵察のことを勘違いしているみたいでねぇ? 情報を持ち帰ることよりも、ヨモツイクサを殲滅することばかり一生懸命に考えているみたいなんだよねぇ……」
偵察とは?
というか、300人て……いくらなんでも俺ひとりに任せる人数じゃないだろそれは。面倒くせぇな、限界まで営庭を走らせて最後まで残った30人ぐらいから選別するとかじゃダメなんですかねぇ?
「人事幕僚の意見としてはね……僕としては全然それでオッケーなんだけど……まぁ、ねぇ。教官たちも、学徒たちも、まず納得しないだろうねぇ。学徒に関しては候補生だから、別に少尉が直接指導で黙らせてくれても構わないのだけど、教官は大尉とかだからねぇ。
中には当主代行の御三方に直接意見を申し上げる権利を与えられている教官もいてね。現場の意見を聞き逃さないようにって。困っちゃうよねぇ? おかげで本来なら意見申請のために必要な手続きとか、優先順位とか、そういうのがメチャクチャになっちゃうものだから事務員たちも大変でねぇ」
この人アレだ。
たぶん腹黒キャラに見せ掛けた腹痛キャラだわ。
しかし少佐殿、大規模な戦闘を行うという意味では偵察部隊など多くても困るものではないのではありませんか? 部隊長の任命にしても、自分の能力を評価して頂けるのは光栄ですが、わざわざ隣の区画から呼び付けるような真似をせずとも自前の戦力に期待するほうが手間も少ないのでは?
「あぁ、それは尤もな意見だけれど無理だよ少尉。召喚器を装備した特別戦闘員のために人員も予算もタップリ持っていかれてしまっているからねぇ。少尉なら理解してくれると思うのだけれど、撤退の判断を上手にしてくれそうな尉官が少ないというか……召喚器の適性アリと判定されてから少なくなったというか」
ますます主人公たちメインキャラが活躍する舞台の裏側事情って感じがしてきたな。メガテンやペルソナにそうしたイメージはあまり無いけれど、俺の知らないところでラノベ的な物語が進行していると仮定するなら納得できないこともない。
きっとシキガミに虚空爪激とかデスバウンドとか使わせて「俺なんかやっちゃいました?」とか言ってみたり、アギダインとかジオダインをブッ放してから「驚いているのは、威力が低すぎるって意味ですよね?」とか言っちゃったりするんだろうな〜。それはそれでちょっと見てみたいな……。
しかしこんだけグダグダになっているのを聞かされると、最初に抱いた嫉妬がどうでもよくなってくるな? それこそ人が隣の区画で本気の殺し合いやってるときに呑気に戦争ゴッコしてやがんのかとムカついたはずが、階級社会の強みと特権階級の権限が悪い意味で噛み合っているのを見てるとむしろ俺はアタリを引いたほうな気さえしてくる。
いや、だってこんなん生き残れないやろ。どうせアレだろ? 大和魂と裂帛の意志を持って事に当たればヨモツイクサなど何するものぞ、みたいな精神論がダメな方向でまかり通ってるとかそんな状況なんじゃねーの? 百歩譲って戦闘員未満のひよっ子どもはともかく、戦争を教える立場の教官まで偵察の意味を履き違えるレベルで御三家に心酔してるとかもう軍隊としては終わってるだろ。
それだけリュウドウ様やほかの若き当主代行とやらがカリスマ性に溢れた人物なのかもしれないが、メタ読みするなら
あるいは、ここでも感情の昂りと思考の誘導が起こっている可能性もあるかもしれんな。要塞のときとかと同じ理屈かはわからんけど、ピクシーさんの実体化が強化されるほどの生体マグネタイトに溢れているのであれば人体や精神への影響だってあり得るだろ。考え過ぎ、ということはない。なにせここは女神転生の世界、ご都合主義乙ww で思考停止していたのでは簡単に死ねる世界だぞ?
じゃあ俺はどうするのが正解かってーと……個人で対処するってレベルじゃねーし、これもうわかんねぇな?
(思考停止)
ま、状況が悪いのはいつものことだし下手の考え休むに似たりって言葉もあるし。まずは自分に許された範囲で行動しましょそうしましょ。
実際のところ、お前が偵察をしてこいってのと偵察部隊を指揮しろってのでは求められる役割がまるで違う。責任だけ背負わされてなんの権限もありませんじゃお話にならんべよ。そこんところはどうなんですかね?
「そこは心配しなくても大丈夫だよ。誰が何処まで、とは言えないけれど、みんな“信じる”という言葉が大好きだからねぇ。余計な口出しをするよりも特務少尉を信じて任せるほうが良いだろう、という方針で決定しているよ。具体的になにを調べてもらうのかも全部君に任せるって方針でね。ちなみに
クソかな?
つまり、だ。
コロニー浄化作戦やってヨモツイクサ追い出そうぜッ!
↓
でも具体的な作戦の内容はなにも決まらないぜッ!
↓
なら作戦を決めるためにも情報を集めようぜッ!
↓
特務少尉って奴に全部任せれば大丈夫だぜッ!
↓
情報が揃ってから真面目に会議しようぜッ!
……ってコト?
いや、あながち順番としては間違いじゃないような気もするけど……なんか、なんか違くない? いや、合ってるのか? 目的のために必要な情報を集めようって、別におかしいこと言ってないし……もうワケがわからないよ。
(思考停止2回目)
仕方ねぇ。
こうなりゃトコトンやってやんぜ。
タクマ少佐、海軍と連絡を取りたいのですが通信設備の使用許可は頂けるのでありますか?
「キミの任務のために必要なのであれば僕の権限で許可しよう。さすがに内緒話までは許可できないけれどね」
はい、いいえ少佐殿。むしろ好都合であります。
なに、御三家の誇りと帝国陸軍の名誉に関わる一大作戦の大事な大事な取っ掛かりに相応しいと信頼と評価のもと威力偵察部隊の隊長役という栄誉を賜ったのです。日本帝国陸海両軍から尉官を与えられた大和男子として死力を尽くさねば無作法というものでしょう。
えぇ、それこそこのコロニーに駐在している全ての帝国軍人のケツに問答無用で着火してやるぐらいのことをしてみせねば面目が立ちません。陸軍と海軍の確執? 知るかそんなもん。生き残るためならなんでもやるつもりでいる人間に、なにやってもいいなんて責任ごと丸投げしてきた頭ハッピーダンスどもが悪い。俺は悪くねぇ、俺は悪くねぇッ! これも全部吉田さんドライブって奴のせいなんだ。