メガテニストはディストピアでもヘコたれない。   作:はめるん用

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「ようこそお越しくださいました将校様。あい、まことに申し訳ないことではありますが、護衛のお方以外は短銃と鋭剣は手前どものほうで預からせて頂くようお頼み申しておりまして……はい、有り難う御座います。本日は豊玉豚の良いところを仕入れてお出しさせて頂いておりまして、将校様のお口に合えば幸いであります」

 

 

 なんだこれは、たまげたなぁ。

(思考停止)

 

 

 カゲツ曹長の案内にホイホイ付いてきたら料亭みたいな場所に案内されてしまったのだが? わ、わぁ……こんな高級感溢れるお店なんて前世でも入ったことないやぁ……。なぁ曹長、なんか急用とか思い出しそうな気がするから帰ってもいい? え、スケジュール関係はしっかり把握しているから問題ない? ア、ハイ。

 そして個室に案内されれば待ち構えていたのは上機嫌のサガミ大佐。ソウゴ少年たちとの手合せについてご苦労だったとのお言葉に、その様子ならカゲツ曹長から大まかな話は聞いたようだなとニヤニヤ笑いながら指摘された。このクソ狸親父め、あれだけ真面目に指導役としての役割について語っておきながら結局のところ戦力として使う気マンマンだったワケだ。

 

 

「フンッ、囮を使って誘い込んでからの包囲殲滅など基本中の基本だろうが。ワシはこれでも八葉家の下で大佐なんぞ続けているんだぞ? この程度のこと、鼻糞をほじりながら出来るぐらいでなければ仕事にならんよ。まぁそう眉を顰めるな少尉、これは貴様の昇進にも関わる話だからな」

 

 

 はぁ、昇進でありますか。

 

 

 うん? 昇進? 

 

 

 昇進…………。

 

 

 昇進ッ?!?! 

 

 

 大佐殿、自分はDクラス出身でありますが……? 

 

「おぅ、だからどうした。Dクラス帝国市民の生まれは昇進してはイカンなどという決まりは無いし、昇進させてはならんという規則も無い。恨むなら未だに管理番号を通している貴様の怠け癖を恨め、若手のやる気を引き出すためのプロパガンダとして実に好都合なんだよ。なぁ? ()()()()殿()?」

 

 

 〜〜〜〜ッ!!!!

 

 そうきたかぁ〜〜ッ!! 

 

 

 まぁ、やるかやらないかで言えばやるわな。立身出世を望んでる人間にしてみれば“たかがD民”が中尉になれるなら自分も、ってなるか。出世すりゃこんな前世の記憶と比べても見劣りしない食事に有りつけるワケだし。

 案外、初期の施設だったりD民の業務中に引き換えでまともな食事を食わせていたのは労働意欲を無理矢理にでも引き出すためなのかもな。知らない物、理解できないモノをエサとしてチラつかせても効果は薄いが、記憶と体験として「あの食い物は美味い」という情報があれば氷砂糖一粒だって殴り合う理由になるだろう。

 

 

「ま、広告塔云々を抜きにしても貴様の昇進は陸軍にとって有益なんだよ。見猿聞か猿言わ猿、と……好奇心で余計な覗き見はしない、存在しない任務について知ろうとしない、必要の無い自慢話はしない、それらができる貴様をより使い勝手の良い駒にするのはな。少尉、貴様、ソーマを飲んだだろう?」

 

 わぁお、バレて〜ら☆

 

「心配するな、それで貴様が処分されることはない。むしろ良く適応して生き残ったと褒めてやってもいい。アレもオカルト屋の管轄ではあるが、ワシ個人が気に入らんとしても戦力強化の面で有益だという事実は認めんワケにもいかんからな。あんな代物を飲み込んで……起死回生のクソ度胸を発揮できる戦闘指揮官など現場仕事をしている佐官であれば喉から手が出るほど欲しいに決まっている。そこに貴様の自己評価など微塵も関係ない」

 

 

 あちゃー、こりゃ適当に誤魔化して昇進を断るのはムリっぽいな。普通に考えて上官の決定を部下が覆すなんてことはどうしようもない非常時でもなければ通らないだろうし、下手なこと言って不興を買うほうがマイナスかなぁ。

 

 

「それで、あぁ、コロニー浄化作戦についてだが……取り敢えず少尉、奥の方で我が物顔で居座っている肉塊を除去するにあたり、問題になりそうなことを言ってみろ。現場で戦う人間として思い付く程度のことでいい、別に貴様は作戦参謀ではないのだから適当で構わん」

 

 

 問題になりそうなこと、ねぇ。

 

 まずは強力な個体に襲われるかもしれない、というかコレは確実だろう。敵の本拠地に殴り込みに行くってのに、本丸に近付くほど徐々に楽になるなんてことはあり得ない。なんなら、型番の振り分けから想像するに乙型よりもさらに厄介な甲型ヨモツイクサとか出てくるんじゃない? 知らんけど。

 

 次に考えるべきは環境汚染かな? 万全を期すならデモニカスーツの着用は必須となるが……もしそうなら戦闘の難易度、というより生存の難易度が跳ね上がる。デモニカスーツの防御力がどの程度なのか、俺の場合はちょっとイレギュラーがあり過ぎて正確なところは理解してないけれど。汚染状況次第ではスーツが破損した時点でアウトの可能性だってあるワケで。

 

 っていうか、コレ成功したとしても危険じゃね? どの程度ヨモツイクサの肉塊がコロニーに侵蝕しているのか、さすがに軍部の方では把握しているだろうけど……仮に外壁に至るまでソレが広がっているなら、下手に浄化すればコロニーに大穴がポッカリとかなるんじゃね? そんなことなった日にゃ現場の人員は仲良く宇宙遊泳が始まるし、そこを起点にしてコロニー全体の崩壊が始まればもう助からないゾ♪ 

 

 

「……ほぅ?」

 

 ん? 

 

「なんだ少尉、自分は無知だ無学だなどと謙遜するわりにはしっかり勉強しているし頭も回るじゃないか。えぇ?」

 

 あ、やっべ。

 

 コレ完全に回答を間違えたわ。

 

 あのー、大佐殿? 今からでも見猿聞か猿言わ猿の精神でここはひとつ穏便にですね……。

 

「却下だ間抜け」

 

 DA・YО・NE〜☆

 

 聞かれちゃったらもうどうにもならないね〜♪ 

 

「貴様の能力については半信半疑であったが、たったいま確信に変わった。コロニー崩壊のリスクについては戦術研究部の人員も含めて議論しているところだが、貴様の身分でそこに自力で辿り着けるだけの危機管理能力があるなら昇進させるのも吝かではない」

 

 

 墓穴……ッ! 圧倒的、墓穴……ッ!! 

 

 前世の記憶による推測が仇となる……ッ!! 

 

 

 おかしいな、ちょっとお話するだけの楽な任務がどうしてこうなった? 

 

 ……あれ、大佐殿? 

 

「仮にも秩序と規律を重んじる軍隊に所属するワシが、騙し討ちのような真似を好んでするものかよ。少なくとも最初にワシのところへ届いた命令は間違いなく学徒どもとの対話を目的としたものであった。だから話の内容を吟味するためにも戦術研究部の連中に声を掛けたし、デモニカスーツに関する話も必要だろうと技術屋の連中にも時間を作るよう頼んだ。そうした用意が全くの無駄になってしまったのだから笑えるだろう?」

 

 

 話の流れ変わったな? 

 

 よし、ここはひとまず現実逃避のために料理に口を付けるとしよう。なんとか豚が美味いみたいなことを番頭さんっぽい人が言ってたし、ここは見るからに美味そうなカツレツあたりからいっちゃおうかな〜♪

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