メガテニストはディストピアでもヘコたれない。   作:はめるん用

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カジュアルプレイヤー:3

「…………」

 

「…………」

 

 

 会話の取っ掛りが無いんですが? 

 

 

 しゃーない、向こうはやる気だけは高いようだしこちらから歩み寄るとしよう。物理的に。サーベル構えている相手に向かって無防備に歩いて近寄るとか仮にも軍人としてどうなんだという気もするが……まぁ刃物が本物というだけなら危険はないし、やってることは模擬戦みたいなモノだからな。そこまで心配する必要はあるまい。

(感覚麻痺)

 

 間合いまで、3歩。

 

 2歩。

 

 1歩。

 

 ゼロ……と思わせて半歩だけ~♪ 

 

 完全にカウンターの姿勢っぽいし、こんな見え透いた誘いにホイホイ乗ってくるとは思っていないが。だがしかし、俺の思惑なんて知ったこっちゃないとばかりにサーベルを振るう学生くん。いや、間合いの外にいるんだから当たるワケないじゃん……。

 

「……ッ! ほぅ、いまの一太刀を避けるか。特務少尉とかいう肩書きは伊達ではなさそうだな」

 

 えぇ……?

 

 避けてねぇし、そっちが当てなかっただけじゃないですかね……。

 

 いや、落ち着け俺。環境が違えば価値観が違うのだとさっき自分に言い聞かせたばかりじゃないか。俺はここに学生相手にマウントを取りに来たんじゃない、目の前にいる若き侍と、そのへんの茂みとか樹木とか建築物の裏側で気配も消さずにヒソヒソ話をしてる連中の糧となるために来ているのだ。

 

「……どうした、さっさと武器を構えろ。それともその腰にぶら下げた刀は見掛け倒しの飾りか?」

 

 先手の奇襲でわざわざ有利なスタート切ってんのに武器を構えてもいいとかナメとんのか。じゃあ遠慮なく有りがたく抜刀しますね~♪ とはならないよ? 実戦ならともかく、これはあくまで紳士的な腕比べ。大事なのは俺が勝利することではないのだから。

 つまり、この場合は……なにが正解なんだッ!? 落ち着け、クールになるんだ特務少尉。対話、そうだよ俺たちには言葉というコミュニケーションツールがあるじゃないか! フフフ、なんだよちゃんと冷静に頭を回転させられるじゃないのよ俺ってば! ちょっと目の前のキラキラしたMAGに気圧されし過ぎて難しく考え過ぎていたのかもしれんな。

 

 伝えたいことは、ハッキリと言葉にしなければ伝わらない。先手有利をわざわざ手放す必要はないと教えるには──こうだ! 

 

 

 構わん、続けろ。

 

「……なに?」

 

 お前は敵に奇襲されたとき、いまから戦う準備をするから待ってくれといちいち頼むのか? そもそも、わざわざ先手を取っておきながら自ら有利な状況を破棄する意味が無いことなど実戦を知らないバカでも理解できるだろうに。まぁ……貴様はまだ学生だし、ここは戦場ではないからな。これも学習の機会と考えるなら、貴様が気持ち良く戦えるよう取り計らってやってもいいが。

 

「────ッ!?」

 

 

 よし! 上手に話せたな! 

 

 自分に都合よく場を整えることなどそうそうできるもんじゃない、少なくとも俺は格上の敵に何度も何度もボコボコにされながらそれを学習した。ならばそれを次の世代に伝えなければなるめぇよ? いや、たぶんそこまで年齢変わらんかもしれんけど。

 そんな俺の気持ちがちゃんと伝わったようで、侍くんも気合いを入れ直してくれたようだ。そうそう、せっかく先手有利なんだから正々堂々なんてゴキブリのエサにもならないクソみたいな考え方はしまっちゃおうね〜♪ 紳士的な腕比べはどうしたって? ハハハ、品行方正で突撃しか命令できない指揮官よりも、どれだけ卑怯だろうが部下を死なせない指揮官のほうが僕の好みに合ってますから。

 

 さて。

 

 多少のリハビリは済ませているが、十把一絡げなヨモツイクサが相手では準備運動にもならなかった。マモルやホノカも手伝ってはくれたが、アイツらはお互いにある程度手の内を知っているせいで訓練と言うよりは演武でもやってる気分になってしまっていた。

 つまり、この場は生徒たちの学習の場であると同時に俺の学習の場でもあるということ。ひとつ、ふたつ、侍くんの斬撃をしっかりと見て慢心することなく丁寧に回避しよう。なんと都合の良いことか、侍くんの太刀筋はとても綺麗で読み易い。これがいわゆる“教科書通りの戦い方”というヤツなのだろうか? 

 

 ふむ。こう、挑発の定番にあるじゃん? そんな教科書通りの戦い方が通用するとでも思うのか〜みたいなの。充分に厄介なんですよね、コレが。

 

 避けるのは問題ないが、反撃のタイミングをなかなか掴めない。左右の重心がブレている不利のことを抜きにしても、攻撃と攻撃の間にしっかりと『待ち』に移行されるので攻め難いったらありゃしない。

 居合い抜きの要領で踏み込んでみるか? いや、どうにも侍くん防御のMAGの振り分けが甘いっぽいんだよなぁ〜。抜刀はNG、下手に打撃を打ち込んで折れたアバラ骨が内臓に刺さったりしたらディアで治療できるかもわからんしなぁ〜。ただの骨折ぐらいなら治療できることは自分の身体で実証済みなんだが……。

 

 

 落ち着け、クールになるんだ特務少尉リターンズ。そうだよ、本体を狙えないのなら武器を狙えばいいじゃない! もう動きは覚えたし、攻撃の終わりに合わせて──サーベルの振り下ろし、ちゃんと柄は握っているよな? じゃないと、どっか飛んで行っちゃうからね? ってなワケで、柄頭をつま先ですぱーんッ! 

 

「ぐぁッ!?」

 

 お、ちゃんと踏ん張れるじゃないか。これが転生者が無双するタイプのラノベなら尻餅のひとつでもペタンとなるところだが、やはり実戦経験者は格が違ったか。

 いやぁ……これ、たかが学生だとナメたままだったら、マジで本当に危なかったかもしれんぞ? ごめん、リュウドウ様。貴方の信念のもとで育った若き戦士たちはちゃんと強いッス。

 

 よし、せっかくの機会なんだしもう少しギアを上げてみるか。このまま反撃できませんってんじゃサンドバッグにひとりで打ち込みさせてるのと変わらないからな。

 というか、ここから魔法まで使われたら普通に負けるかもしれん。そのときは……なんかこう、いい感じにtalkスキルで誤魔化せばたぶん大丈夫だべ。 キミ強いね〜、叩き上げの俺じゃあまともな教育受けてる相手には勝てないよ〜とか言っときゃなんとかなるだろ。

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