メガテニストはディストピアでもヘコたれない。   作:はめるん用

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コンシーダー:4

「呪い師どもについては私もいくらか思うところはあるが、こうした品物を伝統とする部分は素直に尊敬しているよ。油揚げで包んだ飯を米俵に見立てて稲穂の実り、豊穣を祈願するとは良く考えられている。

 残念ながら私のように帝都から離れた場所で勤務する中佐程度では先立つモノがなくて施設栽培された米でなければ口にできんがね」

 

 へ~、お稲荷さんにそんな由来があるんですね~! 世間話だっていうからうっかり狐とか神社的な話題でお茶を濁してたら俺どうなっちゃってたんだろ? なんだか喉の奥のほうで酸味を感じるのはシャリに使われているお酢のせいなのかもしれないね! 

 これはそこそこ強気に先手を取っていかないと変な沈黙で怪しまれるパターンあるで? しかしあんまり露骨に関係ない方向に話を持っていくワケにもいかんのだが……そういえば中佐殿、カレーの味についてお詳しいようですが入院の経験がおありなのでありますか? 

 

「うん? まぁ、若い時分に少しな。といってもキミのように切実な理由ではなく、聞けば誰もが呆れるような下らない理由だよ。酒の席で尊敬のあまり一歩と言わず百万歩ほど後ろを歩きたい上官殿から素晴らしい酒を延々とご馳走になったことがあってね。

 丁度よい機会だ、キミも覚えておきたまえ。部下への労いとして酒類ではなくコーヒーやオレンジジュース、菓子などを用意する佐官は大抵の場合似たような経験をしていることだろう。私も話に聞かされたときはそんなものかと軽く考えていたが、惑星に落下処理される小型コロニーの気分を味わってからは考えを改めることにした」

 

 THE・日本の酒の席。地球圏を飛び出し太陽系を飛び出し二千年以上かけて恒星系ひとつ帝国として仕上げてもアルコールハラスメントのレベルは俺の知る日本とやってること変わってねぇのな? 

 もう感情バリバリ出ちゃってるよ。イミナ中佐ってば渋柿でも食ったんかってくらい感情が顔に出ちゃってるよ。世間話という()()で俺に情報を吐かせるためにお見舞いにきたんじゃないの? かなり本気の愚痴が出ちゃってんじゃん。

 

 敵か味方か、信用して良いのか悪いのかは別として。やっぱり人間性は比較的まともな人だと判断して大丈夫そうだな。確認方法がちとアレだが。

 

 

 ◇◆◇◆

 

 

「しかし、書類上の階級が少尉とはいえ戦闘経験では手練れと評価できるキミがデモニカスーツをああも派手に壊して帰ってくるとは思わなかったよ。テロリストどもは余程厄介な新兵器でも開発したのかね?」

 

 はい、いいえ中佐殿。確かにテロリストたちも手強い相手ではありましたが、それ以上に彼らの友人らしき悪趣味なほど装飾が過剰な人間を相手取るのが億劫でありました。

 全く態度といい言葉遣いといい私の知る常識や品性とは相容れないモノで対話をするのがそれはもう面倒でして。もっとも、自分は所詮Dクラス出身ですので想像の埒外にあるような生活をしていたのであれば仕方ないと割り切ることもできますが。

 

「そうか。……そうか、なるほどそれは災難だったね少尉。確かに言葉遣いというものは大事だよ、礼節の乱れは風紀の乱れに繋がる。それはテロリストに限らず、仮に日本帝国の軍人だとしてもあまり褒められたことではないだろう。

 そうだね、現場からの貴重な意見だ。大勢の将校が集う会議で持ち出すほどのことではないが、信用できる部下からの報告を無視するのは上官の態度としてよろしくない。せめて気安く話せる友人たちや、私的な付き合いの続いている恩師にでも相談するとしよう。ほかに愉快な話はあるかね?」

 

 そうですね……あぁ、自分はよほど運に恵まれているのか暴走した人造超力兵と出会うことはありませんでしたよ。武器が不足していることを伝えたら、携行していた短銃を快く貸し出してくれました。

 会話を滞りなく行うためにデモニカスーツのヘルメットを外すことになりましたが、吐息から異常は検出されなかったので問題はありません。

 

「その話は部隊長からも聞いている。調査隊の負傷は全てヨモツイクサと同化したテロリストとの戦闘によるものであり、人造超力兵と戦闘したという報告は一件もなかったよ」

 

 おや、そうでありましたか。

 

 しかし中佐殿、終わったことについて後からアレコレと口出しするのは阿呆のすることであると承知の上で申し上げますが……これなら人造超力兵が暴走していると知らずに突入したほうが調査も戦闘も楽だったかもしれません。全ては結果論でしかありませんが。

 

「そうだな少尉、私も同じことを考えたよ。さて、思いがけず有意義な世間話を楽しめたところ悪いのだが急用ができてしまった。あとは気兼ねなく見舞いの品を味わってくれたまえ。

 そうそう、キミの左腕については私のほうで都合をつけよう。少々面倒なことになるかもしれないが、まぁ私とて辺境勤務の中佐でしかないのでね。できることよりできないことのほうが多い、まことに申し訳ないことだな?」

 

 

 …………。

 

 

 さて、どっちの意味だろうな?

 

 少なくともイミナ中佐も軍という組織そのものを盲信しているワケではなさそうだが。とりあえず義手を用意してくれるなら今日明日にでも処理されるということはないと期待したいところだな。

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