メガテニストはディストピアでもヘコたれない。   作:はめるん用

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コンシーダー:2

 信じていたかどうかはともかく送り出した特務少尉が左腕を失うほどの満身創痍(表面だけ)で戻ってきた、となれば部隊長の上級中尉殿としては事情の説明を求めるのは当然の流れ。

 いま少し時間と予算をいただければと誤魔化したところで納得するハズもないが、もちろん一から十まで説明できるワケもない。疲れた頭で上手な言い訳がポンポン浮かぶこともなく、もう面倒だったのでトラブルの類いは何事も起きなかったとゴリ押すことにしちゃった☆

 

 どうしても納得できないのであれば、それぞれ自己責任で動力室まで行って確認してくればよろしい。命と引き換えにしてまで好奇心を満たしたいならこれ以上なにも言いません……ってね。

 

「……わかった。隔離措置により救助者の救出は不可能、それを確認したことにより本部隊の作戦行動は全て完了したものとする」

 

「隊長、よろしいのですか?」

 

「よろしくない理由があるのか? 少尉の発言を別にしても、謎の植物が成長し続けているせいで崩壊が進んでる。下手しなくても巻き込まれて死ぬ可能性だって高い。なら“手の施しようがないほど危険”だという情報を持ち帰るのを優先するまでだ」

 

 おぉ~。さすが隊長、現場での判断が早いね! 

 

「伊達や酔狂で上級中尉やってるワケじゃないからな。部下の命を預かってんだ、理解や納得よりも対応を優先しなきゃならんときもあるさ。そもそも軍隊ってのは、案外そういう組織だよ特務少尉」

 

 それはそう。

 

 あ、そういえば人造超力兵はどうしたんだろう? なに、急に優先すべき任務が発生したとか言い出して壊れた通路を迂回するようにどこかへ走っていった? そして彼女たち以外の人造超力兵とはまったく出会っていない、と。

 

 

 ふむ。ピクシーさん? 

 

(かなり激しいMAGの反応を感じるわ。お人形さんたちと青ローブのニンゲンたちとで、さっきの部屋で戦いが始まってるんじゃない?)

 

 

 わぁい、なんて運命的なすれ違いなんでしょ♪ 誤魔化すもなにも彼女たちが瓦礫を撤去して直進すること選んでたら余裕でゲームオーバーだったじゃねぇか救いも慈悲もあったもんじゃねぇなチクショウッ! 

 しかし結果的に迂回して脱出を選ばなかったおかげで生きているんだから素直に喜んでおこう。何気に戦闘が始まってるのもgoodじゃな~い? 悪魔必ずブチ殺すモードの人造超力兵なら頼むまでもなく隠蔽工作に役立ってくれること間違いなし!

 

 そして判明。3タイプあるうちの、少なくともアラヤン式人造超力兵は悪魔という存在を封じ込めるために生産されたのだろう。

 非常事態でさえも命令だからと近寄ろうとしなかった動力室にミノタウロスの気配を感じたからと乗り込んでいるあたり、悪魔殺しの任務は優先順位がかなり高く設定してある。なんなら、どんな命令よりも最優先で実行するようにしてあるのかも。

 

 安全で無関係な立ち位置ならその手のキナ臭い話はワクワクを何倍にもしてくれるが、強制的にパーティーの主役にされる立場じゃトラブルと遊ぶ余裕なんてありゃしないぜ。一方的に餌食にされるという意味なら主役よりも主菜のほうだけどな俺の立ち位置! ガハハハハ! 

 しかしこうなるとオルギア式やイザナミ式の正体も気になるところでござるな? もちろんそんなことより要塞を脱出するのが先なんだけど。ミノタウロスが瞳の内側で眠ってる状況でアマラ経絡を通るのは不安しかねぇなぁ~。

 

 

 ◇◆◇◆

 

 

 真っ白なシーツッ! 

 

 清潔なベッドッ! 

 

 戦場と比べて快適な病室で食べるサラッサラで水っぽい具無しのカレーライスはンメェ~なぁ~オイッ! 

 

 実際フツーに美味いなコレ。ちょっとヘルシーに極振りしたスープカレーだと思えば全然イケるもの。福神漬けがなくても申し訳程度に千切りにされた沢庵が添えてあるのも悪くない。なにより右腕しかない俺でも楽々食べられるのが最高だわ。

 

 えー、アマラ経絡は何事もありませんでした。メッチャ見られてたけどね、見えない何者かに。通過する度にリアクションが変化していくもんだから次に通るときが待ち遠しいなんて全然思わないけどね普通に怖いし。

 そして帰還してからも特別騒がれるようなことはなかった。百人単位で作戦の参加者がいて、何十人という怪我人が出てるから俺だけが注目されたりはしないって寸法よ。逆にありがたいけどね、雑に扱われたほうが。念のためMAGコートの切れっ端で左目は隠しているが、精密検査なんてされたほうが逆に寿命が縮まっちゃうよ?  

 

 ま、デモニカスーツが全損したことについては技術屋の皆さんからお声掛けはありましたがね? 一応心からの感謝の気持ちを込めてありがとうと言ったつもりなんだけどなぁ。スーツが無ければ即死だった、おかげで生き残ることができたってちゃんと頭を下げたのに。

 そしたらなんか親方っぽい雰囲気の人がすぐにデータ取って図面を引き直すぞと怒鳴り始めちゃったよ。俺以外にも怪我人がいるってことは、つまりその人たちだってデモニカスーツ壊れてるんじゃねぇの? なんならマモルとホノカのだってボロボロなのに。なんで俺だけ怒られちゃったんだろうな~? やっぱ中に着てるMAGコートまで破れるレベルでブッ壊しちゃったのがまずかったんかねぇ。

 

 ともかく。

 

 こうして生き残り、個室の病室でお休みする権利を貰えたワケだし。少し手持ちの情報を整理して今後の生存戦略について本気だして考えてみるのもいいだろう。

 というか時間のあるときに情報を整理しておかんといざというときそのまま死ぬわ。知りすぎれば上層部から消されるが、知らぬ存ぜぬのまま戦場で行動したら簡単に取り返しのつかんことになるわ。

 

 好奇心をコントロールしろ、俺。冷静に、この世界で生き残るためになにが必要なのかを丁寧に考えて優先順位を振り分けるのだ。あ、ジャガイモの欠片入ってんじゃん。ラッキー♪

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