メガテニストはディストピアでもヘコたれない。   作:はめるん用

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VS偽典信者:6

 ミノタウロスのターン! 

 

 ミノタウロスは鎖を引き寄せたッ! 

 

 

「は?」

 

 

 見ろよ、人がゴミのようだ。

 

 いやマジで紙クズみたいに鎖に引っ張られてフワッと浮き上がって飛んでるだが?

 運悪く腕の部分に巻きついた鎖を担当していたヤツもひとりだけだったとはいえ、金属の鎧を内側に着ている人間を軽々と……か。

 

 

 重力なんてお構い無しにまっすぐ突っ込んでくるテンプルナイト。

 

 それを大きく口を開けて待ち構えるミノタウロス。

 

 

 バツンッ! という音が響き、テンプルナイトの上半身が消滅した。おぉう、ゴリゴリと硬質な物体が砕ける音がここまで聞こえてくるずぇ……。

 鎧とか武器とか銀紙を噛んだときみたいにビリビリしたりはしないのだろうか? 絶対ローブの部分とかも美味しくないだろソレ。オバケは死なないから病気もなんにも無いらしいが、悪魔もポンポンブレイクとは無縁だったりすんの? 

 

 よし、アホなこと考えられる程度には精神も立て直すことができたな。無いハズの左腕が地獄のように痛むが、それで意識を保てるんだから贅沢を言ってはいられん。生き残るためなら痛覚だって利用するぞ俺は。

 んで。仲間がパックンチョされたテンプルナイトたちの反応はどんなもんよ? うん、ローブの色に負けないぐらいお顔が真っ青ですな。自分たちが有利だと確信していた盤面をいきなりひっくり返されたワケだから混乱するのもわかるけど。

 

 

「クソッ! クソがァッ! おいッ! ガーヂアン部隊を呼んでこいッ! 俺たちだけではアレに対処できないッ! とにかく時間を稼いでいる間に──」

 

『ボッ』

 

「急いで同志を集めジギュッ」

 

 

 あ、ありのままいま起こったことを以下略ッ! ミノタウロスがモゴモゴしていた金属片をボッと吐き出したら、それが散弾のようになって何人かのテンプルナイトを貫いたッ! 魔法やスキルなんて大層なもんじゃねぇ、もっとチャチな攻撃方法だからこそ恐ろしいものを感じるぜ……ッ! 

 あまりにも状況が悪いほうへ急降下したことでメンタルのキャパシティが駄目になったのだろうか、悲鳴やら命乞いやらの合唱が始まった。もちろんミノタウロスは魔王なのでそんなもんは知ったこっちゃねーのです! いやまぁ、俺が勝手に魔王って呼んだだけなんですけどね。なんか魔獣より魔王のイメージが強くて、つい。

 

 

 どんな力加減が働いているのか、ミノタウロスの拳が通過した部分の肉体が抉られたかのように弾け飛んでいる。殴られた衝撃で全身が吹き飛ばされて壁に叩きつけられるとかじゃなく、上半身だけバチコーン☆と弾け飛んで残された下半身がゆっくり倒れるっていうアレよ。

 しかもミノタウロスの動きがなんというか……戦っているというよりは、自分の手足がどんな感じで動くか試しているのか? 戦闘というよりはダンス? いや、演武……演舞? もしかして低命中高クリティカルの物理スキル『鬼神楽』だったりするのかしら?

 

 そんなアナタ、大人のエクササイズでいい汗流しましょうかみたいな感覚でクリティカル連発しないでもろて。ステータスの暴力がエグいせいで全体必中連続会心とかいうユーザーからのクレーム待った無しの状態になっとるがな。

 

 

 でもきっと、本来はアレが普通なんだろう。人間と悪魔との戦いは。メガテンの主人公たちが特別なだけで、普通の人間と普通の悪魔との間には決して越えられない壁があって当たり前っていう。

 ま、そんなふうに呑気に納得してるのは俺だけの話。マモルとホノカから伝わってくる気配は、それはもう例えるのが難しいほどガチガチに張り詰めている。

 

 自分たちが苦戦していた相手が寝起きのラジオ体操気分で次々と殺されている光景を見てるんだ、ふたりの反応が正常で俺の思考回路が前世の記憶のせいで麻痺してるだけだろうさ。

 しかもミノタウロス側にとってこれは“戯れ”でしかないのだから尚更だ。テンプルナイトたちはただ単に“脆い”から結果として死んでいるだけ。なんのことはない、存在としての格が違いすぎて『戦闘』が成立していないというだけの話よ。

 

 

 数分。

 

 数十分? 

 

 あるいは何時間。

 

 

 でもきっと、実際はほんの数十秒の出来事。とにかく時間の感覚が狂うほどに圧倒的な暴力であり──言葉にできない、形容するのが難しい残酷な美しさがあった。こんな似合わない感想が出てくるあたり、俺かなり疲れてんな……。

 しかし、いつまでも地べたに転がっているワケにはいかんですばってん。地獄のストレッチを終えたミノタウロスがゆっくりとこっちに向かって歩いてきてるからね、ちゃんと立ち上がって相対しないと不敬だから気合い……入れて立とうね、俺! 

 

 これは完全に独断と偏見でしかないが、ロウ勢力に所属する悪魔には普通に頭を下げるのが正解だけど、カオス勢力に所属する悪魔にそれをやると逆に機嫌を損ねる可能性があると思っている。

 そういう意味では大天使って上司としては対応が難しくない相手だと言えなくも……でも天使って人間の感覚だと存在そのものが面倒な気がするような……やっぱ無いな、うん。多神教で自然信仰が基本の日本人とは相性良くないんだよ、きっと。

 

 

 さてさて、どう来る? 

 

 

 

 

 

 

(────大儀である。今後も励むが良い)

 

 

 

 

 

 

 …………なんて?

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