午前4時に数十人の列・始発の「夢洲ダッシュ」…閉幕近づき入場待ち競争過熱する万博、現場を記者が歩いた
閉幕が近づく大阪・関西万博で、駆け込み需要による混雑が加速している。目当てのパビリオンに入ろうと、早朝の入場待ち競争が過熱し、会場内は平日でもまっすぐ歩くのが困難なほどの人出だ。「残り1か月」となった会場を記者が歩いた。(新谷諒真) 【写真】始発前から東ゲート前に並び開場を待つ人たち(7日午前4時54分、大阪市此花区で)
自粛呼びかけ
9月最初の日曜だった7日午前4時、東ゲートから少し離れた通用門の前に、数十人が列をつくっていた。 日本国際博覧会協会(万博協会)によると、通用門は毎日、万博スタッフらのために午前4時50分前後に開放される。先頭付近にいた男性(73)に聞くと、ここから入れば、大阪メトロ中央線の夢洲(ゆめしま)駅(大阪市此花区)に始発が到着する前にゲートに並べ、より早く入場できるとして、8月中旬頃からSNSや口コミで広まったのだという。 万博協会は8月末、「警備員やスタッフが十分に配置されておらず、安全が確保できない」として公式サイトで早朝の入場待ち自粛を呼びかけた。しかし、この日も、少なくとも約300人が通用門をくぐった。 小学生と幼稚園児の子どもを連れて並んだ大阪市鶴見区の会社員男性(43)は、マイカーを周辺の駐車場に止め、徒歩で橋を渡って訪れた。「子どもたちに早起きさせるのは申し訳ないが、目当てのパビリオンに入るためにはやむを得ない」と話した。
午前5時39分。夢洲駅に始発電車が到着すると、階段やエスカレーターを駆け上がり、ゲートに向かって全速力で走る人の波が続いた。いつしか「夢洲ダッシュ」と呼ばれるようになった光景だ。警備員が「走らないでください!」と注意しても守る人は少なく、危険を感じるほどだった。 開場3時間前の午前6時の時点で、東ゲートの行列は1000人以上に膨れあがった
予約制導入も
会期前半は比較的すいていた平日も、混雑ぶりが目立つ。水曜日だった今月10日、会場中央付近のクウェート館など人気パビリオンが並ぶ通路(幅約20メートル)は来場者ですし詰め状態になり、50メートル進むのに4分かかった。 混乱の要因は「列に並ぶために待つ人」の存在だ。一部の海外館は、待機列が一定の長さになると、それ以上は並べないように制限する。そのため、制限が解けるのを待つ人が、最後尾近くに滞留してしまうのだ。 万博協会の石毛博行事務総長は8日の記者会見で「動線を確保できていない状況は安全上問題だ」と述べ、海外館に予約制の導入を強く呼びかけていることを明かした。 アイルランド館は8月27日から予約制をスタート。同館の女性スタッフは「以前は整理券を取ろうとする人が殺到して事故が起きかねない状況だった。今は混乱は収まっている」と安堵(あんど)していた。ただ、残り1か月での運用変更に慎重な国も多く、現時点で予約制を採用する海外館は10館程度にとどまる。