10日、トランプ大統領に近い保守系の政治活動家、チャーリー・カーク氏が銃撃され死亡しました。当局は、犯人が建物の屋上に上がり銃撃した後、建物から飛び降りて逃走したとみて、犯行に使われたとみられるライフル銃などを押収して捜査しています。
トランプ大統領はカーク氏に、文民で最高位の「自由勲章」を贈ると表明するなど、政権は異例とも言える対応を取っています。横川浩士キャスターの解説。
(「キャッチ!世界のトップニュース」で2025年9月12日に放送した内容です)
・「MAGA派」若者の代表格
若者やトランプ政権に影響力を持つ政治活動家を狙った事件、アメリカ社会に衝撃が広がっています。
銃撃で亡くなったチャーリー・カーク氏は保守系の政治活動家で、トランプ大統領を熱狂的に支持する「MAGA派」の若者の代表格としても知られています。保守系の若者の間ではカリスマ的な存在でトランプ大統領とも近く、今回の事件を受けてトランプ大統領は、カーク氏に文民として最高位の「自由勲章」を贈ると表明するなど、異例とも言える対応を取っています。カーク氏を狙った犯人は現在も逃走中です。
FBI(連邦捜査局)は事件に関わったとみられる参考人の画像を公開しました。画像の人物は、黒い長袖の服に帽子とサングラスを着用しています。また、犯行に使われたとみられる高性能のライフル銃を犯人が逃げ込んだ雑木林で押収したと発表しました。
アメリカの複数のメディアは、捜査に詳しい関係者の話などとして、「ライフル銃には、トランスジェンダーや、反ファシズムの思想を示すことばが刻まれた銃弾が残されていた」と伝えています。
犯人の足取りも見えてきました。当局によりますと、犯人は現地時間の10日正午ごろ大学のキャンパスに到着。そこから階段を使って建物の屋上に上がり、銃を撃った場所まで移動したとしています。
こちらは、ニューヨーク・タイムズが掲載した現地の地図です。カーク氏が演説していた場所は左下の広場の中央付近。犯人がいたとみられる建物の屋上は右上の白く囲った部分。距離はおよそ百数十メートル離れています。そして、カーク氏を銃撃したあと、犯人は建物の反対側まで移動し屋上から飛び降りてキャンパスを離れ、近隣の地域に逃げ込んだということです。
・広がる「政治的暴力」
アメリカではこのところ政治家を狙う事件がたびたび起きています。
去年(2024年)7月と9月にはトランプ大統領に対する2度の暗殺未遂事件が起きました。ことし(2025年)に入っても4月、東部ペンシルベニア州のシャピロ知事の自宅が放火の被害に。6月には、中西部ミネソタ州で民主党の州議会議員2人が銃撃され、このうち1人が死亡しました。
連邦議会の警備にあたる議会警察の報告によりますと、2024年、連邦議員に対する脅迫などは、9,500件近くにのぼりました。選挙のある年は増えるということですが、確認できる2017年以降、全体として増加傾向がみてとれます。
長年、「政治的暴力」の研究を行っているシカゴ大学のロバート・ペイプ教授は、6月、ニューヨーク・タイムズへの寄稿のなかで、「アメリカで政治的な暴力を容認する気運が高まっている」と懸念を示しています。
ペイプ教授によりますと、2025年5月に行った調査で、民主党支持者のおよそ40%が「トランプ氏を排除するための実力行使」を支持し、共和党支持者のおよそ25%が「トランプ氏の政策に対する抗議活動を阻止するための軍事力の行使」を支持したということです。これは、去年秋に同じような質問をした時点から2倍以上、増加したとしています。
ペイプ教授は、そのうえで「政治的緊張を緩和し、暴力のリスクを減らすには、政治指導者たちが党派の垣根を超え、あらゆる政治的な暴力を非難し、平和的な抗議やルールの尊重などを呼びかける共同声明を発表する必要がある」と指摘しています。
今回の事件を受けて、さまざまな与野党の政治家からカーク氏を追悼し、暴力を非難する声があがっています。しかし、ここまでのところ、表立ったかたちで党派を超えた呼びかけはみられません。
分断をあおらずに、どのようにして融和を図っていくのか。こうした警鐘に耳を傾けていく必要があります。
■NHKプラスでは、放送後から1週間ご視聴いただけます。
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