政府が経済安全保障の総合的なシンクタンク機能を持つ新機関創設を検討していると報道された。

 報道によれば、重要技術や半導体など重要物資のサプライチェーン(供給網)への脅威が増す中、情報収集・分析能力の強化を図る。まずは政府関係機関の人員増強と連携を進め、新機関創設につなげる段取りを検討している。複数の政府関係者が明らかにした。

 この報道は、実は2026年度の概算要求であり、既に自民党に説明済みであるので、政府関係者も対外的に話せるわけだ。予算獲得のためのアピールの一環だ。

 ただし、この話は目新しいものではない。かなり以前から自民党経済安保本部で議論されており、今夏の提言にも載っている。

 さらに明かせば、政府は23年度予算で概算要求していた。具体的には、内閣府から、国の安全保障に関わる「特定重要技術」の調査研究などを担うシンクタンクの設置費用で25億円、そのうち特許出願の非公開制度の運用に必要なシステム整備費などで18億円を盛り込んだ。

 これらの要求の根拠になっている経済安保推進法は22年5月に成立した。法律の4本柱のうち、半導体などを想定する「特定重要物資」の安定確保と、重要技術の開発支援については8月から施行した。

 23年度概算要求によれば、シンクタンクは23年度に設立するとなっていた。先端的な重要技術を巡る国内外の情勢など調査研究を担うことが目的だ。特許出願の非公開制度は軍事転用されかねない特許の流出を防ぐ狙いがある。

 経済安保推進法のうち、予算化のしやすいシンクタンクと特許出願の非公開制度を概算要求し、その他のものは金額を明記しない事項要求としていた。

 これらの概算要求は、23年度予算で認められたが、実際にはシンクタンクは政府内調整が進まず創設されていなかった。そこで、改めて26年度予算の概算要求で「経済安全保障上の重要技術に関するシンクタンク機能や技術流出防止策等の強化」として、政策提言を行う重要技術戦略研究所(仮称)の設立について、20・7億円の要求を行ったというのが実情である。

 筆者から見ると、あまりに遅い。シンクタンクは23年度に創設されてしかるべきだった。政府内調整というのは、いつもの霞が関の権限争いだが、国際情勢の変化はそんなくだらないことを待ってくれない。

(たかはし・よういち=嘉悦大教授)

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