石破茂首相は5日、秋の経済対策を行うことを表明した。その中身はトランプ関税への対応策のほか、先の参院選で物価高対策として掲げた現金給付が含まれていた。ただし、現金給付は公約した国民一律2万円にこだわらず、与野党での修正協議を踏まえたものとするとした。所得制限を設ける方向で調整を進めるともいわれていた。
だが、石破首相を取り巻く状況は一変した。7日夜に自民党総裁を辞任すると表明した。もっとも、内閣総辞職には言及しなかった。ということは、総裁は辞めるが、首相は当分続けるということだ。ただし、新総裁が選出されると、特別国会が召集され、首相指名が行われるはずなので、首相としての石破氏もあと1カ月くらいだ。
余談だが、石破氏は昨年10月1日、首相に就任した。今年10月1日以降まで粘れば、在任期間は麻生太郎氏、福田康夫氏、第1次安倍晋三氏を抜ける。
ともあれ、自民党総裁選は事実上スタートした。しかし、党内組織は政調会長が辞任するなどガタガタで、政治的な判断ができない状況だ。役所も党の誰に了解をもらえばよいのか、さっぱり分からない。おそらく、誰が総裁になってもいいように最低限の作業だけを行っているのではないか。
そもそも総裁を辞任する人の指示が有効なのか。仮に新総裁が特別国会で首相指名を受けたら、現金給付は参院選で否定されたのでやらなくてもいいという判断をするかもしれない。
現金給付なのか、減税なのかという対立構図が参院選であり、民意は減税に軍配を上げた。新首相が減税を選択する可能性はないとはいえない。
さらに具体的にいえば、少数与党の現状では、新総裁がどこの政党と組むかに依存する。もし高市早苗政権ならば、連携を組むのは、政策から見れば国民民主党だろうから、減税主体の経済政策のように思える。
もし小泉進次郎政権ならば、日本維新の会が政策的親和性が高い。減税志向も一部にあるが、小泉政権は石破政権の流れで、現金給付主体の経済政策になるだろう。その場合、所得制限もあり得る。
物価高とはいわれるが、上昇が続き、家計を圧迫しているのは食料品である。筆者は軽減税率をさらに引き下げるのがもっとも効果的だと考える。果たしてこうした政策は誰もしくは、どこの政党ができるのだろうか。
(たかはし・よういち=嘉悦大教授)