「みんなで大家さん」共生バンクグループの内部資料に書かれていた資産一覧の荒唐無稽 400億円で売却予定だった廃墟ビルと青空駐車場は今も野ざらし
土地を所有する都市綜研インベストバンクでは、当該地を担保に関西電力関連会社から借金をしてきた。6億5000万円の極度額で根抵当権が設定されたものの、地上げは進まず、所有権を巡り裁判沙汰になってきたのである。資産一覧ではそこを〈2025年5月売却予定〉と記し、売却額を50億円と想定している。土台無理な話だろう。 また宗右衛門町の物件は、かつて韓禄春という山口組系暴力団組長が経営していたキャバレー富士の跡地だ。韓は1960年代初め、系列キャバレーの開店祝いに山口組三代目組長の田岡一雄を招いた。そこへミナミを縄張りにする明友会が乗り込んで抗争に発展する。このキャバレー富士跡地を改めて訪れると、土地は東西に分割され、東側の建物は幽霊が出そうな廃墟になって残っている。西側が青空駐車場だ。 そして60年経って共生バンクがこの再開発に乗り出した。東側の土地・建物を2022年9月に30億円で買い、西側は2023年3月に170億円を投じている。合計200億円の買い物だが、むろん投資家から集めた金だろう。問題の資料によると、ここを2023年10月、2倍の400億円で売却する予定だったと書いている。廃墟ビルと青空駐車場がそんな高値で売れるはずもなく、今も野ざらしになっているのは言うまでもない。
「上場なんてとんでもない」
なお、この資産一覧資料には、買収した企業の株式評価も掲載されている。アニメや仮想現実(VR)ゲーム事業を展開する会社をはじめ、木材チップを原料とする木質ボードメーカー、使い捨ての針無し注射器メーカー、エステサロン向けのネイル用品メーカー、断熱材メーカー……。これまで投資してきた7社の新興企業がズラリと並んでいる。あまり聞いたことのない会社ばかりだが、その評価額が華々しい。 アニメ会社は共生バンクが75%の株式を取得し、2023年度に120億円だった評価額が2025年度には2000億円になるとしている。また断熱材メーカーは、2023年度に10億円だった保有株の評価額が2025年度に200億円となっている。2024年に香港の株式市場に上場する予定だと備考欄に記している。この会社の幹部社員に聞いたところ、重い口を開く。 「共生バンクさんには資金繰りでお世話になってきたので、こちらから話すことはできません。うちみたいに事業に賛同して出資してくれている会社が10社ほどあると聞いていたので、うちはその1社に過ぎません。ナノファイバー事業を始めたけれど、それも苦しくなって共生さんの支援が打ち止めになり、今は実質的に動いていません。(事業は)終わらせる方向です。だから(海外市場への)上場なんてとんでもありません」 ちなみに一覧表には、保有企業としてみんなで大家さん販売も載せている。2023年度の株式評価で300億円、2025年には2000億円になると記している。7社合計で見ると、508億円の株が6045億円になるという皮算用を弾いているのである。まるで粉飾ではないか。今井には前号に続いて回答を求めたが、期日までに回答はなかった。 この資料作成からおよそ1年後の昨年6月、東京都と大阪府は共生バンクグループの中核2社に対し、ひと月の業務停止命令を下した。処分の直接の理由は投資家に対するリスクの説明不足だ。しかし、みんなで大家さんはその後営業を復活させた。結果、配当がストップしたのである。もはやどうにもならないのではないだろうか。 * * * 関連記事《【追及スクープ】配当ストップの「みんなで大家さん」、あまりにも杜撰な行政向け内部資料の中身 上場予定と記された企業は稼働せず、売却するはずの土地は野ざらし》では、直近の配当ストップを取り巻く状況や同資料が作成された経緯などについても詳細にレポートしている。 【プロフィール】 森功(もり・いさお)/ノンフィクション作家。1961年福岡県生まれ。岡山大学文学部卒。新潮社勤務などを経て2003年よりフリーに。2018年、『悪だくみ──「加計学園」の悲願を叶えた総理の欺瞞』で大宅壮一ノンフィクション大賞受賞。『地面師 他人の土地を売り飛ばす闇の詐欺集団』、『菅義偉の正体』、『魔窟 知られざる「日大帝国」興亡の歴史』など著書多数。 ※週刊ポスト2025年9月19・26日号
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