2025-09-12

家に留まる子ら

彼らは門を出なかった。

朝には親の食卓を整え、

夜には親の夢を見守った。

手は働いても、大地に根を下ろさず、

足は歩いても、門の外を知らなかった。

人々はささやいた。

「彼らは怠けている」

人々はまたささやいた。

「彼らは孝を尽くしている」

けれど子らは答えなかった。

答える言葉は、霧の中に隠れていた。

かつて掌の上で育てられた果実があった。

陽のすべてを浴びて育ち、

やがて枝を離れたとき

自らの根を持たぬことに気づいた。

港は嵐を避ける。

だが船が海を忘れれば、

港もまた沈むだろう。

聞いてほしい。

彼らは守られているのか。

それとも縛られているのか。

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