goo blog サービス終了のお知らせ 

トーキング・マイノリティ

読書、歴史、映画の話を主に書き綴る電子随想

へー・ラーマ

2005-10-22 20:29:04 | 読書/インド史
 1948年1月30日、M.ガンディーは3発の銃弾を撃ち込まれ、絶命する。享年78歳。彼は「へー・ラーマ(おお、神さま)」と言いつつ倒れた。自分を撃った若い男を許す仕草だったといわれる。もう彼の死から今年で57年経っている。時の流れと経済成長の目覚しい現代のインドでは、彼の精神は明らかに風化しつつあるようだ。

 2000年3月、インドで「Hey Ram」という映画が公開された。ガンディー暗殺者・ゴードセーが主人公という衝撃的な映画で、しかも演じたのが人気俳優シャー・ルク・カーン。当然インド国内では賛否両論をよんだらしい。残念ながら私はこの映画を未見だが、見た方の話によると、主人公は冷酷な狂信者ではなく、ムスリムの友人もいる普通の青年という設定だそうだ。彼は失恋やら人生の挫折で宗教に救いを求め、あるグル(尊師)に出会う。そのグルが実は曲者で次第に洗脳されていく、という話らしい。実際このようなケースは現代でもザラにあるが、20年前のインドならこんな映画は作られなかったろう。

 数年くらい前、ガンディー暗殺の共犯者を取材したテレビ朝日系番組があった。彼は改悛の情など微塵もなく、「我々がやらなくとも、誰かがやったろう。多くの者がやりたがっていたのだ」と証言していた。彼は出所後、フリーダムファイターを名乗り政党の活動委員をしていたとか。暗殺の共犯者なので、反って支持を集めるかもしれない。

 ガンディーを暗殺したのは極右だが、左翼や知識人からも批判されていた。特に責められるのは、第一次世界大戦でのイギリスへの協力と、カースト制に関してである。ガンディーは戦争の大義とインド独立に関し念を押したが、もちろん戦後、イギリスは約束など反故にした。「勝ってから約束を破る」のが常套手段の国だ。
 しかし、カースト制には、廃止を求めた不可触民出身の政治家アンベートカルに対し、「カーストは神の定めしもの」と擁護姿勢を取った。解決法としてガンディーは無数にあるカーストを4つの大きなカーストに統合して、古代の4ヴァルナ制度(バラモン、クシャトリア、ヴァイシャ、シュードラからなる)を復活させることを主張した。主にヴァルナは生まれに基づくもので、職業も生まれながらに決まっており、祖先の職業を世襲しないといけない、とガンデイーは4ヴァルナ制度の説明として職業の世襲を重視した。
 彼の説得では、「ヴァルナの法は職業の世襲だけでなく、職業に貴賎がなく、全ての職業が善であると教えている」とのことだが、異教徒には到底理解不可能なものだろう。彼に“マハートマー”の尊称を贈った詩人タゴールさえも、カーストや大きな社会問題から逃げていると姿勢を批判した時もある。

 彼の死後、多数のガンディーアン(ガンディー主義者)は途方に暮れたらしい。やはり彼の教えを実践し続けた者は少なく、かえって似非ガンディーアンが幅を利かせたという。ガンディーの後継者のポーズを取り、選挙当選後は影で利権を貪る者さえいたのだ。

-歴史の霧と教科書の仮面に覆われた伝説的、かつほとんど神話的な人物で、その教説は神のそれと同様、実践されるよりも引合いに出されることの方が多い。7億の子供を持つが信望者はいない我らの国家の父(『イラストレーティッド・ウィークリー・オブ・インディア』1985年8月号より)。
  ガンディーを20世紀の釈迦と言った人がいる。確かに国内よりも国外で支持と尊敬を集めているのでは似ている。

関連記事:映画ガンジー


最新の画像もっと見る