「無慈悲な笑顔」感想Part1:誰かが泣いたお話(ネタバレあり)
皆様こんにちは、とうえんと申します。
今回は「ツノウサギの家」の「やかろ」様が制作された「無慈悲な笑顔」の感想を書いていきます。
今回は作品の全体的な紹介と1話のネタバレありの感想となります。
非常に長文となっておりますので、時間があるときにでもお読みいただければ幸いです。
無慈悲な笑顔とは(ネタバレなし)
まずはこの素敵なタイトル画面をご覧下さい!!
手書きのタイトル文字もいいですね。
またここのタイトルでのBGMを含め、いくつかオリジナルBGMも使われています。
とてもかわいい2人の少女が仲良く談笑しているのに、血が付いている不穏さ。シアワセソウデスネ。
そのギャップに惹きこまれます。
この作品を知ってから、1年間ずっと脳裏から離れることがないほどに中毒になりました。ここまで長い時間1つの作品(もしくは作品群)にハマったのは初めてかもしれません。
まずは「ネタバレなし」でこのゲームの概要と魅力を語ります!
このゲームは基本的には章立てされた「探索型アドベンチャーゲーム」で、徐々に変化していく探索箇所を読み進めながら、「進展していくストーリーを楽しむゲーム」になります。
そのストーリーにはやや悲劇的な部分も多く、ツノウサギの家様のモットーとして「心に刺さるゲームを」という言葉がぴったりです。
他の方の実況を含め、ストーリーを数十周していますが、いまだにうるっときます。
ストーリーを知っていても、その魅せ方と演出がまたいいんだぁ…
そして、メインストーリーの展開も非常によくできていて、「起承転転転転結」とでもいうほどに予想のできない展開がされています。プレイ時間としては5~6時間ほどの中編ゲームにも関わらず、ここまでのストーリー展開が詰め込まれているのは本当にありえないです。
時間に対してのコストパフォーマンスが素晴らしい、中弛みがない作品です。
そのような驚天動地なストーリー展開にもかかわらず、その「転」の部分が不自然にならないように、伏線構造が非常によくできているのです。
ですからミステリーが好きな方も楽しめると思います。すこしずつ明らかになっていく真相がなんなのか推理するのもこの作品の醍醐味です。
むしろそういう遊び方をしないともったいないと思いますし、探索を楽しまないとも思うのです。
そして「無慈悲な笑顔」というタイトルが、どのように回収されるのかを見守るのも楽しみの1つです。タイトル回収に鳥肌が立つ方は楽しめます。
またRPGツクール製ですが、デフォルトの設定からいろいろとユニークな変更が行われており、演出にとても力を割かれています。よく動くドット絵や文字の表示の仕方にいたるまで非常に作りこまれているので、ストーリーへの没入感が非常に高いです。
演出の面だけでも満点レベルの作品です。
ゲームプレイとしては、多くの場合は1章につき1つのマップの中を探索します。そして、各所を調べて情報を集め、フラグを踏むことで時間が経過し、再び探索を開始する、という流れになっています。
なお、こちらの作品はやかろ様が製作された2つめのゲームとなっております。デビュー作であったオロホスの家とは異なり、ホラーではないです。
ええ、作者様が言うにはホラーではないんです。
きっとフリーホラー作者様としての遊び心が出ただけでしょう。
実際、ホラーが中心の作風ではなく、物語を読み進めて真実を解き明かしていくお話になります。ホラー風味の演出がいくつかありますが、突然目の前に化け物が現れるなどというジャンプスケア要素はありません。
したがって、ホラーが苦手な方でも安心してプレイできると思います。
第1話 「誰かが泣いたお話」プレイ日記よりの感想(ネタバレあり)
以降ネタバレありで各エピソードのプレイ記録風味に感想を書いていきます。なお1話のみのネタバレに抑えます。
今回は1話の「誰かが泣いたお話」から。
なおYouTubeで実況動画も公開しております。
場面ごとの感想(OP~謎の美少女の登場まで)
まずはこの表紙を見てください。
ゲーム開始時から0話から5話の表紙を見ることができます。
右から左へページを繰るように左矢印で次のお話に進みます。
本のように装丁されているのが素敵ですね。
また、左下にそのお話を読む際の条件や推奨が表示されています。
「私達は神様に命を捧げ続けた
降り続ける雨を止めるために」
各お話の表紙のこの導入がまたいいのです。端的でありながら不穏さを煽り、謎を残す表現。ここからどういうお話が進んでいくのか、というワクワクがとまりません。
その興奮を胸にお話を始めると…
かわいらしい少女が青い空を見て笑顔で喜んでいます!なんて可愛いのでしょう。マップの窓から見える空もとても綺麗です。
でも、おかしいですね、この表紙には「雨が降り続けた」とありましたが…。
と読み進めていくと、突然水の音が流れ、「雨を止める」儀式の為に遺跡に閉じ込められる女の子。
この物語の主人公である雨(うるる)の登場です!
途中で雨竜という名前も一瞬登場しますが、作者様はBLEACHがお好きなようです。
1話ではこの子を操作して遺跡の中を調べていくことになります。
そして、このゲームの1つの魅力であるヒントや伏線について具体的に語っていきたいと思います。
最初から提示されている重要な情報は3つ。
「空は神の心を映す」と書かれた石板、
「泣いているように見える」神の像、そして
「涙の遺跡にて数日、 と語り合え。その後黒布を被り、 を捧げよ。さすれば は恵みの を捧げる」と書かれた石碑。
1話に関しては比較的推理が容易なお話で、最初の2つから「神が悲しんでいるからいま雨が降っている」ということが分かるのですよね。
また、中央の神の像がオープニングに出てきた子と似ていることから、オープニングでの青い空はあの子が笑顔だったから、とも推測できます
。
したがって、雨を止めるには神を笑顔にさせる必要がある、という推測も立てられるわけです。
一方で不穏なのは石碑で、この時点でも「表紙」の内容から
「涙の遺跡にて数日、「神」と語り合え。その後黒布を被り、「命」を捧げよ。さすれば「神」は恵みの を捧げる」
というところまでは読めると思うのですよね。ところが今欲しい「晴れ」というセリフは最後の空欄1文字には合わないのです。
そして、雨が止んでもそれで解決するわけではないことも読み取れてしまったのですよね。だって空は神に支配されているのだから。
このように考えればわかる伏線やヒントがあるので、推理しながら読むのが本当に楽しかったですね。ただここまで推測できてなおこの1話に心を奪われたのは「演出のすばらしさ」や「予測をさらに上回る展開の見事さ」があったと思います。後程述べたいと思います!
さて、雨(うるる)が探索を一通り終えてひと眠りすると、遺跡の雰囲気が変化します。具体的には中央の像が消えて、奥に一人の少女が出現します。
この子の名前は…
照(てる)。
その名前に似合わずどうやら泣いている様子。その理由を聞くと「てるてる坊主」と述べるのみ。
この遺跡、てるてる坊主が沢山つられており、雨(うるる)も「てるてる坊主」をみて「私もこうなるんだよね」と発言するのです。
だから「てるてる坊主」とは儀式に命を捧げた子達の末路。
したがって、雨(うるる)はどうやら照を「同じく儀式に参加させられた子」と認識したようですが…
どう見てもこの遺跡に祀られた神です。本当にありがとうございました。
雨の弁護(雨は鈍くない、はず)
ここのシーンとかが、照の正体に気付かないのがよく雨(うるる)が鈍いとか言われる理由ですが、ここで私は雨(うるる)を弁護したいと思います。
まず一点目として、我々プレイヤーは「非正常性バイアス」という言うべきものにかかっているのではないでしょうか。
ゲームになっているということはいかに非現実であろうと受け入れられるのがプレイヤーとしての立場です。だって画面の中の出来事なのだから。
さらに言えば、主人公の前ではなにかしら「珍しいこと」が起きるのは当然なのです。そうでなければ基本的には描く必要がないのですから。
だから我々は現実にその世界を生きている雨(うるる)と比べて、「非日常」を受け入れやすい下地があるのです。したがって、像が急に消えて照が出てきた時に、この2つを紐づけて受け入れられるのです。
考えても見てください、現実にこのようなことが起きれば、まず自分の夢だと思うのではないでしょうか?
二点目はまさしく、この「夢」。
雨(うるる)が照に出会う前後で雨(うるる)は寝ているのですよね。寝て起きたら、像が消えて少女が出現し、目が覚めたら少女は消えて像が戻っていた。
このようなことが現実に起きればそれは「夢」だと思いますよね。実際に雨としても「夢で出てきた照って子」という発言があります。
神様かも?と一瞬思いつつも自分の夢に過ぎないだろうと流すわけですよね。
でもこの時点だとまだ「待ってくれ、とうえん」と思うかもしれません。
神の奇跡が信じられている世界観では、このような経験を「神の顕現」だと思ってしかるべきなのかもしれません。
ただの村娘であったジャンヌ・ダルクが「神のお告げ」を聞き、その身を戦火に投じたように。
ここで3点目。雨(うるる)さんってあまり敬虔な信仰心もってないのですよね、恐らく。その証拠として2つ挙げます。
1つ目は遺跡に備え付けられている「雨の絵」を「晴れの絵」に描きかえようとしたこと。
考えても見てください。皆さま、神社などにお参りに行ったときに器物損壊できますか?現代日本人として信仰心がそこまで強くないであろう我々ですら躊躇うのです。
それを「描きかえよう」と考えたり、最終的には実際に破壊してしまう雨(うるる)さんなのです。やべーやつなのです。
もう1つの雨(うるる)が神に対する信仰心なり畏怖なりを抱いてないと思うのは言葉遣いですね。
確かに雨はまだ少女ではありますが、10歳を超えていればここら辺の言葉遣いを変えることができるくらいの年齢ではあると思うのですよね。皆様もこのくらいの年齢だと学校の先生に敬語使ってましたよね?使ってなかった人はきっと「使えなかった」のではなく「使ってなかった」のでしょう。
では、雨(うるる)の神様に関連する言葉遣いを見てみましょう。
まずは一度晴れたのに、再び雨になってしまったシーンより。
本当に心から敬っているとこういった発言にならないと思うのですよね。たしかに子供らしくて私は好きな表現なのですが、神様がその場にいて聞いているかも、と思うような神聖な場所でこのような発言がでることに、神様に
対する非現実感を感じます。
次のシーンは、雨(うるる)の優しさが垣間見えるシーンですが、貴重な食糧であろうパンを中央の神の像にお供えするシーンです。
ここのシーンに関しては「神の実在」を信じている、とも取れるシーンですが、私はそうとってはおりません。
現代の一般的な日本人が、例えばお墓にお供え物をしたり神社にお賽銭したりする感覚に近い、のかと。ここは本当に神の顕現を信じられるレベルで敬虔な信仰心があるのであれば、「分けてあげよう」という表現にはならないと思うのです。それこそ「神様、本日の恵みをお供えいたします」とか、そういったような表現になると思うのですよね。
ここら辺の雨(うるる)の態度を見るに、現在の一般的な日本人の宗教観とそこまで変わらないというか、「神の顕現」を信じるほどの信仰心はないと思うのですよね。ですから、「神の顕現」のような出来事があくまで夢の出来事としか思えなくても仕方ないのです。
長くなりましたが、何が言いたかったかというと、「雨(うるる)は鈍くない(多分)」という弁護をしたかったのです。むしろ我々プレイヤーが画面の向こうのことに鋭すぎるだけです。
………………………
雨は「それ、神様にあげたパンだよ。罰当たりなことするなぁ」と伝えますが…
……………やっぱり鈍いのかもしれません。
場面ごとの感想(二人の約束)
このあと物語は雨(うるる)の姉である「雨心(あまね)」のてるてる坊主を見つけたり、照の「てるてる坊主」へのトラウマを見たり、照が「もう、この場所で誰かが死ぬのを見たくない」というのを聞いてどうやら「命を捧げる儀式」が逆に照を悲しませることに繋がっていることに気付いていくわけですね。
そして一緒に時間を過ごした二人の少女たちが交わした、大事な約束。
ここが本当に美しいと思うのですよね。
雨(うるる)は自分自身が「てるてる坊主」として命を捧げる為にここにいることを知っています。
だから、これは、彼女にとって「叶わない約束」。
それでも、確かに交わした、約束。
プレイヤーとしてはこの約束を果たさせてあげたい、と思うのですよね。
さて、照との交流を深める中、唐突に画面がセピア色に染まり、雨は過去空間に飛ばされます。
ここの過去空間の存在に関しては1話では考察のしようがないので、後回しにします。ここではさらに情報の掘り下げが行われ、儀式の内容が「命を捧げる」ことだと明示されるわけですよね。ここに関しては雨(うるる)はもともと知っていたことですが。
そして過去にてるてる坊主になった生贄の子が言う「間違い」。これに関してはこの時点ではここまでの情報を合わせると「命を捧げることで照を悲しませてかえって雨が降ってしまう」という推測になったかな、と思います。あとから振り返ると彼女の言う「間違い」はもう少し意味が深かったわけですね。
場面ごとの感想(彼女の正体と雨の決意、そして。)
不思議な空間から帰還すると、いよいよ村の人が現れ、雨(うるる)に儀式を実行するよう伝えます。
雨(うるる)はたとえ一人でいるときには「私はまだ、死にたくないよ」と発言しても、覚悟は決まっている子なのです。
だから、きっと何もなければそのままその身を捧げたのでしょう。
でも、雨(うるる)は重要なことを村人から聞くのです。
それは
この地に祀られている神の名前が
照(てる)
であること。
だから目の前に現れた照に、雨はこう問いかけます。
「照は神様、なの?」
そして照はーーー
照こそが「生贄に涙を流して雨を降らせてしまう神様」である、と真相に辿り着いた雨(うるる)は決意を固めます。
壊れゆく村を救う為に。
自分の命を守るために。
そして何よりも照と交わした儚い約束を守るために。
「私はてるてる坊主にならない。死なない!」と。
それでもそんな雨(うるる)の必死の言葉は大人たちの耳には届きません。
儀式を前に怖気づいている、と。
「無慈悲に笑う」と伝えられる神様なのだから生贄を差し出さないと村は滅びるんだ、と。
だから、雨(うるる)は必死に抵抗します。
「絶対に、晴れにしてみせる!」と雨の降る空に誓い。
照の像に「絶対に死なない…!」と誓いながら。
狭い遺跡の中を必死に逃げ回り。
掴まれたときには子供の幼い力で何度も抵抗します。
でもどれだけ逃げても状況は好転しません。
大人も大人で村が滅びる瀬戸際だと信じているのですから。
そして、幼い抵抗も尽き、ついに雨(うるる)は捕まってそのまま…と思った瞬間。
今まで人に姿を見せようとしなかった照が、雨を守るために声を上げ、彼女の怒りによって雷が落ちるのです。
ここまで流れを邪魔したくなくて感想が書けなかったのですが、ここの見せ場が本当にアツい展開なのですよね。
真実に気付いた雨(うるる)が抵抗し、追いかけっこが始まると、プレイヤーとして必死に雨を応援しどうにかこの場を切り抜ける方法を探すのです。でも、閉じ込められた空間で少女が大人から逃げきれるわけもなく、捕まってしまうときの「何か選択ミスした?」感。
そして、照が雨の為にその声を上げ、雷を落とすときに興奮。
まさしくクライマックスですよね。
そして雨(うるる)と村人は儀式を中止し、遺跡を離れます。
(ちなみにこの時の2人で一緒に村まで帰るのめっちゃ気まずくないですか?むしろ神の寵愛を受けた子に手を出しちゃったわけだから怖いよね。)
すると
「雨は降らなくなった」のです。
この物語の主目的であった「降り続ける雨を止める」ことが達成された瞬間です。
これはハッピーエンドですよね!
雨と照が交わした「晴れたら一緒に笑いながら遊ぼう」という約束も叶うんです!
…………
………………
でも…「青い空」を喜ぶオープニングの照のシーンが流れた後の照の様子がおかしいのです。
そこにあるのは寂しそうな、照の姿。
ちょっとちょっとちょっとちょっと、なんで雨(うるる)さん来ないんですか!さすがにあの子はそんな不義理なことしないと思うんだけど…と混乱している中、表示されるBad Endの文字。
ここはものすごく混乱しましたね。あそこまでクライマックス感を出しておいてまさかのBad Endだと。
場面ごとの感想(隠された真実は甘いものとは限らない)
いや、確かに照がいる限り天候がコントロールされるから、雨が降らないのはそれで困りそうなんだけど、なぜにこの終わり方?雨(うるる)は何してるの?と疑問があふれる中、真相へのヒントが表示されます。
ここのヒント、皆様はどう感じましたか?
私個人としては分かりやすいな、とも思ったのですが、0話と勘違いすることもあるのかもしれませんね。
とはいえ0話なり2話のの左下なりをみると「1話のTrue End」を見た後に読むことを推奨されているので、どちらにしても1話に戻ってくることになりますね。
ここでいう過去とは「雨(うるる)が途中で飛ばされたセピア色の涙の遺跡」のことです。そして現在と過去の異なるところはどこだったでしょうか。
しっかり読んでると作者様がいろいろヒントは下さっているのですけど、あまり触れられてないなーと思うのが逃走中のシーンででてくるヒントです。
きっと皆さま逃走イベントではいろんなところを調べて何も起きないことに絶望したと思うのです。
でもちょっと待ってください、こんな分かりやすいヒントがあったのです。
こういった言葉の違和感に気付くことがこの作者様のゲームでは大事ではあるのですよね。個人的にはこういう一言が大好物です。
また、製作者様のやさしいところは、「End分岐のあるところ」「Bad Endになる可能性があるところ」には必ずセーブ画面が自動的に開くようになっているのですよね。
これは作者様のデビュー作である「オロホスの夢」でも「Bad Endが確定するとセーブができない」という優しさがありました。作者様は優しくて親切、間違いないね?
基本的にこの作者様の作品は自発的にセーブしなくても自動でセーブ画面が開く所のみセーブすればよい、という大変ありがたい仕様になっています。とはいえ、セーブ画面にも遊び心がたくさんあるので、ついつい無駄セーブをしてしまいますが。
またてるてる坊主が吊るされていたり、雨が降っているのも素敵な表現。
そしてセーブ画面の名前が「忘 れ な い」なのも印象的。
というわけで作者様の親切によるセーブデータをロードして「現在と過去の異なる部分」である「雨の絵」と「脇の石像」を調べます。
雨の絵を調べると、遺跡の構造的に絵の後ろに空洞があることに気付いた雨が「丸い石」を使って雨の絵を破壊します。Bad Endごとぶっこわせー!
そうすると出てきたのは古びた書物。
そこにはこの遺跡で行われてきた儀式の歴史が書いてありました。
そこに書かれていたのは…
笑い続ける神のもとで日照りと干ばつに苦しむ村人の姿。
そんな彼女の姿は、きっと「無慈悲に笑う」神様。
そう村人たちには見えたのでしょう。
そして耐えきれなくなった村人たちは、遂にその命を、てるてる坊主のように差し出し…
そして、雨が降ったのでした。
それは長い年月の中で忘れ去られた真実。
昔は雨を求めて、照を泣かせるために、己が命を差し出していた。
そんな悲しい、真実。
きっと年月を経て、「望む天気にするために生贄を出す」程度でしか伝わらなかったのでしょうね。
嫌な、予感が、してきましたね。
そして、もう1つの隠された真実は、泥に汚れた石像に。
てるてる坊主からとった黒い布で石像を綺麗にすると、出てきたのは。
ちなみにこの2箇所両方を発見しないと新たなルートはでてこないのです。これは途中で「てるてる坊主を解体して手に入れたアイテム」である「黒い布」と「丸い石」の2つもヒントになっているのですよね。使わないアイテムに意味はないのですから。
昔と今の人々の矛盾した願い。
ここでも昔は日照りで苦しんでいて雨を、水を求めていたことが明かされます。
そして、雨(うるる)が儀式の真相を知ったうえで再びエンディングへ向かうと…
「は」と「が」の1文字が変わっただけでここまで意味が変わってしまうのです。
今度は「雨 が 降らなくなった」、と表示されます。 そう、今度は雨が一滴も降らなくなってしまったのです。
雨(うるる)が助かって、照が喜んでいるから。
そう、たとえ照の悲しみを払い、その涙を止めたとしても、この地は「命を捧げなければ滅んでしまう」のです。
だって、照の笑顔は、「無慈悲な笑顔」だから。
だから、だから。
この場所は、この遺跡は。
「無慈悲に笑う照に涙を流させる場所」。
このタイトル回収、衝撃でした。
そして、涙を流させるためにはどうしたらいいのか。
この遺跡を再び訪れていた雨が手に持っていたのは「黒い布」と「縄」。
雨を願うため、黒い布を被り天と神に見えるように
「黒いてるてる坊主」は雨を願って吊るすもの。
それは「黒いてるてる坊主」になるためのもの。
過去にその命を散らしていった人たちと、同じように。
そうでなければ村は滅びてしまうから。
そして、その失われる命をすこしでも有効活用するために、村はある決まりを儀式に盛り込んだのです。
それは「数日間神と過ごすこと」。より深い悲しみを照に与えるため。
これは初めて読んだ時はとても残酷に感じました。照があまりにも可哀そうだと。
でも、仕方がないのです。奥に吊るされているてるてる坊主の数を見れば。
ちなみにこの画像はBad Endの方から持ってきているのですが、ちゃんとTrue Endの方では雨の絵は破壊されています。そして、オープニングの方でも雨の絵は壊れているのですよね。
照には申し訳のないことだけど。この地は照がいる限り、命を差し出さなければ滅びてしまう。だから、少しでもその命を効率的に散らしていった。
私には村人たちを責めることはできません。
きっとこのような文明レベルではなかなか移住というのも大変だったのでしょうし、「この地」という照の権能が及ぶ範囲も分かりませんしね。
そして、また悲しいのが神としての照の感性の違い。
照の元に辿り着いた雨(うるる)は村の窮状を訴えかけます。
照。今、私たちの村はね。
雨が降らなくてみんなみんな、死にそうなの。
そんな雨(うるる)に対しての返答は。
とても軽い照の一言。この遺跡で過ごしている照にとっては、この遺跡こそが世界。「この場所で」誰かが死なない限り、照にとっては他所でのこと。
そして雨(うるる)に一緒に笑いながら遊ぼう、と問いかけるのです。
かつて約束をしたように。
そんな照に雨(うるる)は告げます。
「あなたの笑顔を消しに来た」と。
村を救う為に。
それでも雨(うるる)は照とも友達なんです。一緒に笑いながら遊ぼうって約束もした。
だから「枯れちゃった」はずの涙を流して雨は「ごめんね」と照に謝るのです。
このシーンが一番雨(うるる)というキャラを表しているのではないかな、と思います。
他者への感受性が強い、非常に自己犠牲の強い子なんだな、と。
2人で交わした儚い約束。
それは本当に果たすことができない約束になってしまいました。
そして、物語は本当の終わりを迎えます。
照にとっては人前に一瞬であるけど姿を見せて、怒りを見せてでも救いたかった友達。
その友達が死んでしまう。それも照のせいで。
涙の遺跡の本当の意味と共に、雨(うるる)はその命を散らしました。
だから、この物語で見つけた「無慈悲な笑顔」は。
「青い空」をみて無邪気に笑っていたあの子の笑顔は。
晴れをもたらす「雨(あめ)を殺す笑顔」でもあり、最終的には「雨(うるる)を殺す笑顔」ともなりました。
そして、これがこの物語の真実。
…こうやって感想を書くために物語をまとめなおしていても未だに鳥肌が止まりませんし、うるうる来てしまいます。これは確かに「心を刺すゲーム」でした。これでまだ1話なんですが。
まとめていたら、途中から自分の感想が邪魔に感じるくらいストーリーが良すぎて、画像の下にその場その場の感想を書きつつしのぎましたが、語彙が消失するレベルで最高の物語でした。
さて、全体的な感想を述べましょうか。
全体的な感想(ストーリー)
1点目はやはりストーリーから。
このお話は普通にプレイすると30~45分程度だと思うのですが、その中によくここまでコンパクトにまとめたな、と思います。
雨と照の交流と約束。過去の儀式で犠牲になった人達。照の正体と雨が降り続けている理由。この遺跡と儀式の本来の意味。そしてこの物語の本当の結末。
思いついたものを列挙するだけでこれだけのものが詰め込まれていたのですよね。
ストーリーとしてはやはり「雨(うるる)と照の約束」が非常に重く響いていたと思います。
最初は、選ばれた者としてその身を捧げる為にこの場にいる雨(うるる)にとっては「叶わない約束」と描かれます。だからこの約束は儚いのです。
しかし、雨が降っている理由に気付いた雨(うるる)は、村の人に真相を告げて儀式を止めれば、この約束が「叶う」と、と照に告げるのです。希望が出てくるのですよね。
ところがラストにおいて、この約束は今度は「果たせない」ものとして描かれます。そう、「叶わない」のではなく「果たせない」のですよね。
雨(うるる)はきっと村を犠牲にすれば、照と一時的には一緒に遊ぶこともできたのです。この未来では最終的に雨(うるる)の身も滅びるでしょうが、結局雨(うるる)に未来はないのですから。でも、きっと雨は笑えない。
雨(うるる)は「選ばれた者」として、照を傷つけて村の未来を選んだのです。その結果、照との、友達との約束を果たせなかったとしても。
たとえ自身の母や姉の命を儀式の生贄として奪った村だとしても。きっと村にも友達がいたりしたのかもしれませんね。
あとは「照によって生贄になるところを助けられた」雨(うるる)が結局は「照の笑顔を消す為に」その身を捧げなければいけないストーリー構造もよくできていると思うのですよね。こういった皮肉さといいますか、虚しさは好みです。
…いや、正確にいますと、ツノウサギの家様の作品をプレイしているうちに好みにさせられました。一生忘れられない傷跡をつけられたので、責任取って今後も素晴らしいゲームを作ってください、応援しています。
ここはプレイヤーの感情の管理もよくできていて、一度助かった、という安心感があってからの急降下なのですよね。当初直面していた問題が解決した、と思いきやまったくそんなことはなかった、という台無しの仕方もいいですよね。
そういった意味で表紙の前書きで当初解決するべき問題を示していたのもよいスパイスだったのだと思います。
全体的な感想(演出や表現)
2点目は演出や表現。
こちらに関してはストーリーとも切り離せないところではあるのですが、ストーリーをより深めてくれる要素となります。
ツノウサギの家様の作品はこの演出にとてもこだわりを感じます。
例えばそれはいろいろ動くドット絵の細かさであったり、立ち絵の豊富さであったり。
テキストの表示の仕方であったり、繰り返し時折変化する言葉であったり。重要な単語の使い方であったり。
具体的に見ていきたいと思います。
まずはドット絵ですね。キャラや背景などで自作のドット絵を使用されているのですが、本当に細かいところまで作られているのです。
背景で言えば「涙の遺跡」の壁や床に描かれた絵であったり、キャラで言えば眠りから目覚める雨(うるる)のドット絵であったり。こまかいところまでこだわりをもって製作していることが伺えて本当にすごいのですよね。
次に立ち絵ですが、これも素晴らしいですね。イラストが素敵なのももちろん、様々なバリエーションが用意されています。
一番感動したのは、先にも述べましたが、雨の泣いている立ち絵。この立ち絵は照に対して「ごめんね」と、「約束を守れないこと」に対して謝罪をするときにだけ使われるのですよね。
具体的な言葉にしなくてもこの立ち絵1つで雨(うるる)というキャラクターの性質が浮き彫りにされているのは本当に見事だと思います。
次は言葉の選び方や表示の仕方です。
まずはそもそもの「雨」と「照」という名前がよいですよね。明らかに意図を感じる名前なのに、物語当初は逆なのです。
「雨を見るのが嫌いな」雨(うるる)と、晴れを見たいのに泣いてばかりで「雨を引き起こしてしまう」照。
こういった名前との矛盾に違和感を覚えますよね。
それがラストシーンではまた逆転して解決するのです。名前の通り「晴れと日照りを引き起こした」照と「雨乞いの儀式」を行う雨(うるる)。
このように名前の違和感に対する解決が行われるわけです。本当にいい。
残りの部分に関しては、時系列順に書きます。
まずは「雨を泣かせる人間は許さない」という表現。この「人間」という言葉1つで照の「神」としての立場を表しているのですよね。ツノウサギの家様の作品はこういった単語1つ1つがよく考えられているな、と感じます。
そしてTure Endの開始での
雨は降らなくなった。
………
………
雨 が 降らなくなった。
という表現。ここは最初の1文で、「あれ、フラグを踏んだはずなのにまたBad Endなの?」と思わせておいて、「……」というところで注意を引くのです。ここもあえて同じ始め方をする、という面白い表現ですよね。
そして、注意を引いたうえで出てくるのは赤文字の「雨が降らなくなった」という表現。ここはポーズを使って、ゆっくりと表示されます。
文としてははたった1文字変えているだけで、普通に読んだら気付かないかもしれない表現(この言葉選び自体も見事ですが)を、それを「色と間」を使って印象付けています。
不穏さとも相まって、ここの文を読んだ衝撃は忘れることができません。
ここに関してはここまでの推理具合でも結構印象が変わりそうなのも面白そうですね。「晴れても問題」ということに気付いていると、「やはりそうか」となるのですが、そうでないと「一体どういうこと」となりそうですね。
そして、ここに関して私は「やはりそうか」勢だったにもかかわらず、印象的に残っているのです。展開を読めてなお、印象を残す演出は本当に素晴らしいと思うのですよね。
そして、演出として外せないのがタイトル回収。
それまで村人が言っていた「無慈悲に笑う」神様の真相が明らかになる瞬間はたまりません。確かに照の笑顔は無慈悲でした。それが一番わかりやすいのは
「ここは無慈悲に笑う照に涙を流させる場所」
というところですね。そしてその無慈悲な笑顔は、先も述べましたが、
雨を殺す笑顔
であったわけです。
このダブルミーニングのセンスもすごいですよね!語彙力がたりません!
個人的にはタイトル回収だったりこういった複数の意味のある言葉遊びは大好物なので、ここから「無慈悲な笑顔」という作品にドハマリしました。1話という導入部にしてこのクオリティ、脱帽です。
こういった言葉遊びであったり、仄めかした言葉の選び方であったり、そういった方面においてはこだわりを感じます。
そして、ラストシーンの雨(うるる)と照が同時に話すシーン。ここの演出がまたいいんだぁ(語彙力消失)。
感情を押し殺して「選ばれた者」として粛々と儀式を進める雨(うるる)の姿とそれに取りすがって止めようとする照。スチル無しでもこの二人の姿がこんなにも鮮やかに出せるものなんですよね。
いや、スチルがない、二人の文だけの表現だからこそ、いいのかもしれません。ここはリメイクで声優さんの声があてられるのが楽しみな場所でもあります。ここの雨(うるる)と照の2人の感情がどう表現されるのか、本当に楽しみです。
全体的な感想(伏線や推理難易度)
3点目は伏線構造や推理難易度について。
1話に関してはわりと明確な伏線が貼られ続けていたので、推理難易度に関しては低めに抑えてあったのではないかと思います。ツノウサギの家様の作品は毎回少しずつ伏線が貼られていき、その謎を解き明かすような楽しみがあるのですが、「ウワガキアイ」や「Human killing」などの真相と比べても1話は分かりやすかったと思います。
Human killingは本当に難しい。だからこその+αスタイルだったのだと思いますが。
そして、ツノウサギの家様の作品は割と最初から結構大きい伏線が貼られていることも多いのももう一度読み直して面白いところです。なんでそんな目立つものがあるのに当時気付かなかったんだろう、って本当に感心します。
さて、「無慈悲な笑顔」の1話に関しては「空は神の心を映す」というのが最初から最後まで貫き通された真実でした。
だからすくなくとも「何故雨が降っているのか」ということに関しては容易に推測ができるのですよね。照が悲しんでいる理由に関しても、序盤で「てるてる坊主」であることが明かされます。
だからこそ、なぜ「無慈悲に笑う」神様と呼ばれているのか謎が残るわけですよね。
もちろんここで照は本当は性格の悪い神様である、と疑うこともできるのですが、実際に照の姿を見てきているわけですから。
とはいえ、すこし視点を変えれば、今は「雨が降って困っている」ということを裏返せば「晴れが続いても困る」ということに気付けるのですよね。
ここに気付いてしまえば真相までは一直線なわけです。
しかし、実際に最後に雨(うるる)が雨乞いの儀式を行うとは思っていませんでした。何かしら解決方法があると思ってたよ…。
というのは、ここら辺に関しては、おそらく1話だけだとある程度疑問が残るはずなんですよね。なぜ他の方法で照を泣かせることができなかったのかって。
そこら辺の謎が全部解決するにはもう少し後のお話も読む必要があります。
個人的にはそういった疑問点が最終的に解決されていったのも、よく設定が練られていて素敵だな、と思いました。
あとは、若干分かりづらかったのはBad Endの意味ですね。
恥ずかしながら作者様の解説配信を見るまで、なぜあのエンディングがBad Endなのかわからなかったのです。
作者様によると雨(うるる)が「真相」に気付いていない状態では、村が日照りによって滅びてしまい、その結果、照の笑顔は周囲を滅ぼした「孤独な笑顔」になった、とのこと。
こちらも鳥肌ものですね。だからこそ解説を見ずに気づきたかった。
このBad Endの本当の意味に気付かなかったのは、私の落ち度ではあるのですが、一応2点ほど言い訳をさせてください。
まず「神は空の心を映す」という言葉で「笑顔になって晴れても困るよな?」という所に辿り着いちゃったから、雨(うるる)もその内気付くと思ったんです!この時点だと「真相ルート」見てなかったですし。
あと、雨(うるる)が来なくなったら、照は寂しくなって泣くかも、とも思ったんです。
ただ、神と人の感性や時間の感覚は違うのでしょうから、きっと照が寂しくなって再び泣いてしまう前に、村は滅びてしまうのでしょうね。
この2つの言い訳も正直弱くて、もう一度クリア後にしっかりBad Endの意味を考え直せばわかったのだと思うのですが、あとは一度クリアした後にBad Endのことを忘れていて、解説配信見るまで考えてなかったんですよね。もっともっと味わっておくべきでした。
ここ私の感想に辿り着く方で、作者様の解説配信を見ていない方はほぼいないと思うのですが、もしまだなら見てください。解説配信をみてこそ出てくる鳥肌があります。
あの方のこだわりと意図を見てこそ、この作品を楽しみ尽くしたといえます。
全体的な感想(ゲームプレイ)
さて4点目はゲームプレイに関してです。
こちらは探索型のゲームになれていないと、どうしてもいろいろ探索してストーリーがすすまない中弛みがあると思います。
しかしそこで追加されたのが「簡易探索モード」。
これがまた素晴らしいのですよね。ストーリーが進むのに必要な所はしっかりとマーカーを付けて下さっています。
そして、これには裏の使い方があります。
マーカーが付いたところを調べたら先に進むということは、そこさえ調べなければ先に進まないということです。
つまり、先に進むところを後回しにして探索ができるのです。
これには宝箱を全部開けてから進むタイプのRPGプレイヤーは大歓喜でしょう。ヒンメルさんも大歓喜。
また、トゥルーエンドに行くために必要な条件はこの簡易探索モードでは示されない代わりに「ヒント」という形で表示されます。
このヒントも「謎」を残しつつも分かりやすい表現で、適切な難易度じゃないかな、と思います。困ったら作者様のホームページに攻略もありますからね。
操作周りに関しては普通のツクール作品ですが、UIは独自のものになっており、シンプルなため分かりやすいです。そしてメッセージウィンドウやセーブ画面もおしゃれなものとなっており、みていて楽しいですね。
また先に述べたように分岐の個所でセーブ画面を開いてくれるのも親切です。ここできちんとセーブすれば、最初からやり直す必要がないわけですよね。
こういったゲームをプレイし慣れている層からすれば、こういった作者の意図にも気づきやすいので、分岐もここからロードすれば問題ない、ということもわかるでしょう。
このような観点から「探索ゲーム」という性質上の欠点を抑える工夫があり、非常にプレイのしやすい作品であると思います。
最後に
というわけで非常に長くなりましたが、ここまで読んでいただいた方は本当にありがとうございます。
この作品が好きすぎて熱量が抑えられませんでした。語っても語っても語り切れない重いです。これでまだ1話ですと?
よく考えると後半の全体的な感想は1話に限らない部分も多かったですが。
感想が書きあがり次第、つづきも投稿していきたいと思います。
改めて読んで下さりありがとうございました。
とうえん (2025年8月26日)



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