メガテニストはディストピアでもヘコたれない。   作:はめるん用

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アンサング:7

 俺は、なにも、知らない。

 

 故に、なにも、聞かない。

 

 

 特務少尉なんて肩書きがあっても所詮はDクラス帝国市民の成り上がり、危険な情報を共有する権利なんて存在しないのさ~。

 ちくせう、俺にもっとこう語彙力や表現力があれば、もっとこう、イイ感じにもっとこうほら、アレしたりできたかもしれないのに! 

(母国語ロール失敗)

 

 ま、どうにもならないこと嘆くより出入り口の確保が出来たことを素直に喜んでおこう。なぜメシテロ集団がターミナルを放置しているのかは気になるところだが……どうせアレだろ、それどころじゃないようなトラブルとか起きてんだろ? 

 ダイン系魔法が使える悪魔合体メシアンが人造超力兵に簡単に押し切られるとは思えないし、正体不明の敵とやらに強力な悪魔がいる前提で動くのが正解かな。ダイン系魔法が気軽に使える代物ではない可能性もあるっちゃあるが。

 

 

 ◇◆◇◆

 

 

 俺が配属されたチームの役目は生活エリアの調査だ。司令部とかの重要かつ見たくない情報が転がってそうな場所や、空気や熱を生産するための動力系の確認に比べればだいぶ気楽な割り当てだろう。望んで大きな責任なんて背負いたくないからね、ちかたないね。

 もっとも、ダメな方向性のフラグという意味ではそんなに変わらないけど。テロリストに襲撃された結果、謎の植物に汚染された宇宙基地の居住空間だぜ? むしろ、これで何事もなく平和に調査が終わったりしたら逆に不安になるレベルだわ。

 

 しかし、なんというか。惑星型要塞というだけあって、通路が大型トラックも余裕ですれ違えるぐらい広いのはいいんだけど……どこもかしこも植物の繁殖がどえらいことになってるからジャングルの中を歩いてるみたいに感じまして。

 

「異常な光景だ、ということは理解しているつもりなのだが。どうにも生々しい浸蝕をされているコロニーと比べると、視覚的にはまともに感じてしまうな」

 

 それな。

 

「気持ちはわかりますがホノカさん、僕たちはこんなふうに薄暗い環境で戦った経験はありませんからね。油断はできませんよ。ヨモツイクサ以外を相手取るのも初めてなんですから」

 

「わかっているよ。なに、その辺りの加減は頼れるリーダーの指示に期待するさ。イミナ中佐殿から話は聞かされている、なんでも陸軍に遊びに行っているときに、ずいぶん派手に暴れたらしいじゃないか?」

 

 派手に暴れたのは事実かもしれないが、勝ち負けで判断するなら負け戦だと思うんですがそれは。

 俺はいいよ、個人的な話なら生き残ることが目的なんだから。でも巫女が大勢連れ去られて、テロリストたちの目的は果たされているワケだから軍人としては敗北そのものだろう。

 

 言えないけどね。

 

 いや、別に見栄とか恥の問題じゃなくて。メシテロ肉天との戦いは無かったこと扱いだし。イミナ中佐がふたりに話した内容がわからない以上、曖昧に誤魔化す以外にできることありゅ? 

 

 

 そんなモヤモヤと葛藤を抱えつつ、それでも周囲の警戒を続けながら進む俺。

 

 工作兵の人からの警告はいまのところ特に無し。相変わらず謎の植物たちが空気をキレイキレイしてくれているらしく、変化が起きてから報告したほうが邪魔にならないだろうと静かになっちゃったよ。

 ただ、この辺もどうやら1度なんらかの毒性を持つ有害物質が溢れ出した痕跡があるらしく、生存者がそれらの影響を受けている可能性もあるかもしれないとのこと。

 

 なるほど、それは大事な情報だな。俺たちの任務には民間人の保護も含まれているからな!

 

 そのせいで慎重に進みたい派と駆け足で進みたい派で衝突が起きてるけど仕方ないよな!

 

 うんうん、正論同士の衝突ほど厄介なモンはそうそう無いよな! あぁ~、仲間の割れる音ぉ~。

 民間人の保護を急ごうって主張したくなる気持ちもわかるのが辛いところだな。毒で苦しんでいるかもしれないってのはもちろんだが、戦闘も起こらず酸素も問題ない状態が続いていると警戒する時間がもったいなく感じるのもわかるよ? 

 

「僕も素直な気持ちとしては、一刻も早く民間人の救出を急ぐべきだと思います。こうして時間を浪費している間に、助けられたはずの命が失われてしまうかもしれないのですから」

 

「そして走り出した先の曲がり角から奇襲を受けて全滅してしまうかもしれない。ここまで戦闘が無かったからといって、この先も発生しない保証はない。それに、通路の安全確保を蔑ろにした結果、民間人を連れ帰る最中に襲われる可能性もあるだろう」

 

 冷静に語りつつもシールドの向こう側では渋い表情のマモルと、冷静に分析しつつも忌々しいと言わんばかりに舌打ちするホノカ。

 主張が反対なのは相変わらずだが、相手の意見をちゃんと聞けてるのは偉いゾ☆ 互いに罵り始めたほかの連中も見習って、どうぞ。

 

 まぁ~イライラする気持ちもわかるんだけどさぁ~? 仲間同士でそこまで言い争うことないでしょ~? いうて俺も精神が昂っている感覚はなんとなくあるし、攻撃的になっちゃうのもこんな状況では弱腰になるよりは頼もしくも──待て。

 

 

 

 

 マモル、ホノカ。頭を切り替えろ。戦闘だ。

 

 

 

 

「──ッ!? 了解ですッ!」

 

「了解だ。それで、リーダーはなにを気付いた?」

 

 前に同じことがあった。たぶん全員が精神に影響を受けている。そしてすまないが、詳細は話せない。Aクラス帝国市民の上官が問答無用で処刑された案件だ、と言えばヤバさは伝わるだろう? 

 

『『────ッ!?』』

 

 ヒューッ! さすが、こんな任務に参加しているだけあって皆さんも切り替え早いねぇーッ! 全員が一斉に武器を構えて背中合わせに周囲を警戒してますよ。こういうのでいいんだよ、こういうので。

 

「F8492特務少尉、なにを知っている? いや、違うな。それは……上級中尉であるオレの権限で聞ける内容か?」

 

 はい、いいえ上級中尉殿。佐官でさえも詳細を知らされることなく黙るよう言われる案件であります。……ウソは、言ってないヨ? 

 

「チィッ!! クソが、上級大将閣下の高尚なるお考えなんぞ、オレらみたいな下っぱ兵士にゃもったいないってか?

 ──あぁッ!! クソッタレがよォッ!! 全員、優先順位を確認するぞッ!! 部隊の生存、そして調査だッ!! 民間人は……民間人のことは、最悪を想定、いや前提として動くぞッ!! クソがッ!!」

 

 うん、この上級中尉殿は間違いなく善人だな。そしてきっと優秀な人なんだろう。こんなふうに命令されたんじゃ、全員が従うしかないじゃない。

 

 やっぱ出世なんてするもんじゃねぇな? こんなプレッシャーに常にさらされるとか想像するだけで胃腸がブギウギしちゃう。

 ふたつの意味でハチノスです、なんてなッ! ガハハッ! 

 

 

 ◇◆◇◆

 

 

 一体感と安心感がしゅごい。状況はなにも良くなっていないが、少なくとも当面はアライメントの違いによる衝突は起きないだろう。

 俺たちはいま生きるか死ぬかの瀬戸際を歩き続けているんだ。仲間割れのリスクが減った、それだけでも充分過ぎるほど助かる。

 

 こうなると……やっぱり一番の問題は正体不明の敵だな。俺の予想通りそいつらが悪魔だった場合、全員がメンタルにデバフを食らっている状態でのエンカウントは最悪と言っていい。

 いやまぁ、悪魔合体したテロリストが魅了魔法のマリンカリンや混乱魔法のテンタラフーを使ってくる可能性もあるんだけど。そういう意味では単純な暴力に特化しているであろう人造超力兵よりメシテロどものほうが厄介かも。

 

「──ッ!? MAGの異常反応ッ!! 左前方、1ッ!! 通路の奥から来ますッ!!」

 

 噂をすればなんとやら、ついに現れたかッ! 工作兵の持つ機器に反応があるってことはつまりッ! ……え? どれ? なにが出てきてもMAGの反応はあるよね? 

 

 

 

 

「ヒッ、ヒヒッ! き、き、来やがったなぁ……ほ、星を、星を食い荒らす、寄生虫どもめ……ッ! にほ、日本人の、クセにぃ、自然への、自然へのォッ!

 敬意をぉ、忘れたおろ、おろ、おろおろ愚かな愚か愚かなかなか忘れた寄生虫どもが来たんだよなぁ……ッ!!」

 

 

 

 

 うーん。見た目はまだ人間だけど、青いローブ着て愚かって単語が好きなあたり彼はメシアンですね。

(確信)

 

 ここで先手を取って突撃かまして斧で頭を叩き割れれば楽なんだけど、迂闊に飛び込んだところに反撃でザンダイン使われたら俺普通に死んじゃうからムリだな。

 魔法反射のマカラカーンなんて贅沢は言わないから、せめてラクカジャ使える仲魔との出会いぐらいは認めて欲しいないい加減に。

 

 

「抵抗は無駄だッ!! 大人しく投降しろッ!!」

 

 命だけは助けてやる、とかは続かないんだな。そりゃ自国民でさえ普通に使い捨てられるのに、敵対組織の人間なんて生かすワケないか。

 

「バカめ。バカめバカめバカめバカめェェェェッ!! ヒィ、キヒィ、ギヒヒャァッハッハッハッ!!

 ただの人間から離れられないお前たちなんかにィッ!! 救世主として選ばれた我らを止めるとなどできんのだよバァカめェェェェッ!!」

 

 テンションアゲアゲで得意気に喋りながら、自称メシアの男がMAG結晶体を取り出す。やっぱお前も変身するんすねぇ~。

 

 

 知ってた。──ホイッ!! 

 

 

「…………は?」

 

 

 仮面ライダーや戦隊レンジャーの変身シーンじゃねぇんだ、黙って見てるワケねぇだろ。

 MAG結晶体を食われる前に、投げナイフで先に砕く。実は腕を狙ったんだけど、結果的にMAGモグモグを防げているのでヨシッ!

 

 ……デモニカスーツ着てる間は投擲、失敗する前提のほうがいいかも。

 

 

 

 

「ギ、ア、ボ、ヒィッ!? きさ、キサマッ!! キサキサキサキサ愚かキサマ寄生虫の分際で救世主のバカめお前たち選ばれた自然への人間が愚かな敬意をキサマの救世主が自然を選ばれた寄生虫の分際でェェェェッ!!」

 

 

 

 

 あ、変身そのものはMAG結晶体を食べなくてもできるのね。前に戦った連中と比べるとあからさまにビジュアルが出来損ない感丸出しだし、無意味ってワケじゃなかったと思いたいところだ。

 ただ肉の塊とまではいかない辺り、MAG結晶体を使った悪魔合体とは別のルールがなにかあるんだろう。

 

 どのみち視覚的攻撃力は高いけどな。上半身は皮膚が裂けるほど膨れ上がってボコボコしてるし、下半身は完全に弾けて肥大化した内臓で這いずってるし。

 なんかナメクジとか軟体生物のキメラのような……ホントにお前らそんな見た目でよく救世主なんて名乗れるな? どんだけナルシストなの? 自己愛のメンタル強すぎるだろ。

 

 

「器、器なんだよ我らは器なんだ新しい世界を構築するためのォッ!! 苦ヨモギを掬い上げた器は蜂蜜酒で満たされ、塩の柱に捧げられるのだァッ!

 月の道標をォッ!! 聖大天使様がお通りになられる月の道標が必ずそこに現れるッ!! それを邪魔をするなどォォ赦されないんだよゴミムシどもがぁぁぁぁッ!!」

 

 ハハッ、なに言ってんのか全然わかんねぇ。

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