メガテニストはディストピアでもヘコたれない。 作:はめるん用
いままであまり気にしていなかったが、今回の潜入任務で改めて理解したことがある。この世界では通信機器の扱いが恐ろしく制限されている、ということだ。
通信が可能なのは専用の装備を持たされた工作兵だけ。それ以外の戦闘員が着用しているデモニカスーツに通信機能は備わっていない。
もちろん、そのことに疑問や不満を持つ者は誰一人としていないのだろう。何故ならこの世界の人間にとって、少なくとも日本帝国宙域で生活する日本人にとっては、通信手段とはそういうモノであるのが常識だから。
ひどくなぁい? 伝説のヘビのおじ様だって無線通信でのサポートありでミッションこなしてたんだよ? 俺にそれよりも悪条件で仕事しろってのか。
しかしここで下手に文句を言うワケにもいかんだろう。何故なら俺はDクラス、物知らずの人間が個人向けの携帯端末とか存在しない道具についてポンポンとアイディアを出すのは不自然だからさ!
一応、無理やり好意的に解釈をすることもできる。女神転生シリーズに登場する悪魔って電子生命体みたいなところあるから、なんらかの事故が大昔に起きた結果としてギチギチに締め付けるしかなくなった……とか。
それはそれで工作兵が扱う通信機器に異常が起きないか心配だけど。怪談話みたいにノイズかと思ったら悪魔の声(ガチ)が聞こえてきたとかさ。アレ? コレ普通に洗脳とか憑依の危険性あるんじゃね?
やだぁぁぁぁッ! 小官ヤダァァァァッ!!
ポンポン痛いのぉぉぉぉお家帰りゅぅぅぅぅッ!!!!
そういえば俺って培養液で満たされたシリンダーの中で産まれたから帰る家なんかなかったわ。こりゃうっかりうっかり。わっはっはッ!
アホな冗談はさておき。実際のところ、どんな対策すればいいのか見当も付かんな。これがペルソナシリーズであれば神経無効とか精神無効みたいなスキル持ちを装備すればいいだけの話なんだけど。
いっそのこと拳で解決できないか試すか? 精神鑑定(物理スキル)で正気を取り戻せれば儲けもの、ダメならそのままミッションが終わるまで、もしくは宇宙が終わるまでオヤスミナサイしてもらえばいい。
どうにもならないと判断したら、思いきって正体不明の敵が暴れてるってことにして通信機器をブッ壊すのもアリだな。通信手段に制限がかけられているからこそ、封じ込めを狙うにしても現実的な対処が可能だろうし。
うん? その理屈でいうなら俺の生存戦略にとって不都合なことがあったときの口封じも楽なんじゃね? 情報の拡散さえ防いでしまえば、あとは全部正体不明の敵とやらに責任を押し付ければ問題は解決じゃん。
オイオイオイ、勝ったわこの任務。なんとまぁ俺に都合の良い条件が整ってるとか、やっぱ異世界転生って基本的にイージーモードなんじゃね? いうて2周目プレイみたいなもんだからな! ガハハハハッ!
◇◆◇◆
手早くミーティングッ!
アマラ経絡集合ッ!
そして人造超力兵の案内で宇宙要塞『栄光と忠義と武士道の砦』に繋がる出口までやってきたのだ!
ちなみに名前を付けたのは例の上級大将殿らしいのだ!
ネーミングセンスが抜群過ぎてちょっと頭が痛いのだ!
アマラ経絡内部での遭遇戦は発生せず。実にありがたい。こんな場所で天使バンザイと叫びながら悪魔と融合するような連中と戦うとか嫌な予感しかしねぇもの。
姿形が見えない呼び声たちがどんな反応をするのか怖いもの見たさって部分も……ないな、うん。巻き込まれたら命が危険なことになるの確定でしょ。
で、だ。
突入役の人たちが、待ち伏せを警戒し出口に何発か閃光弾をブッパしてから乗り込んでいったワケなんだが……なかなか戻ってこないねぇ?
いやいや、まだ慌てるような時間じゃない。緊張しているときの待機時間なんて長く感じるものさ。きっと周囲の安全確認をするのに手間取ってるだけで、もう少しすればひょっこり顔出して戻って──来たッ! これで勝つるッ!
「戻ったか。中の様子は?」
「それなんだがな。テロリストも正体不明の敵とやらも、暴走した人形どもの姿も周囲には見当たらなかったんだが……状況は、良くないかもしれんな」
「なにがあった?」
「草だよ」
「は?」
「だから、草が生えてんだよ。そこらじゅうにな。信じられるか? 金属で出来た床やら壁やらに雑草が根っこをはってるんだぜ? なんなら、オレの身体よりも太い木の枝だか幹だかみたいなのが壁を貫通しているところもあるぞ。
幸いにして、と言っていいのかわからんが隙間は流体金属で塞がっているから、面倒なガスやら液漏れの心配はしなくていいかもしれないが……あんまりのんびりしていると、要塞全体が植物に侵蝕されてブッ壊されちまうかもな」
まぁ、生命の神秘ね! コンクリートに咲く花のように健気な美しさを感じちゃ~うみたいな~余裕なんてあるワケないだろいい加減にしろッ!
俺知ってんだからねッ! っていうか体験してるんだからねッ! 本来なら植物が繁殖するような場所じゃないところに緑の息吹が芽生えている光景ってヤツをさぁッ!
もしかしてコレも関係している可能性があるか? 普段は悪魔の姿が見えない人が急に見えるようになる条件に。いや、それなら正体不明の敵がどうこうって話になるのはおかしいよな?
謎の植物の発生プラス、なにかの条件。あるいは条件が満たされる前段階として植物が発生していると考えるべきか。この前のメシテロ戦でもギリギリ仲魔の姿は見えていなかったし、単純にMAGが高まるだけじゃ完全な実体化までは届かない……かもしれない。
相変わらず油断はできないが、こうして少しでも仲魔を召喚するリスクについてヒントが得られるのは素直にありがたいな。要塞内部が悪魔にとって都合の良い環境に変化しているかもしれないって可能性を考えるとゲロ吐きそうになるけど。
◇◆◇◆
「空気の汚染は問題ないようです。どうやらこの植物たちが光合成でキレイにしてくれてるみたいですね。
もっとも……電気系統に不具合が起きてるのか、これだけ薄暗い環境で光合成してるあたり普通の植物じゃなさそうですけど。僅かですが生体マグネタイト反応があるのも気になりますね」
「万が一のときに窒息で死ぬ可能性や、民間人の避難が少しは楽になる……と思いたかったんだがな」
「どこかから漏れ出していたモノでしょう、表面から何種類かの有毒物質が検出されています。それらも取り込んでの光合成ですからね、どう考えても異常ですよ。
なので皆さん。エアー残量には気を付けて、万策尽きるまではフェイスシールドは開けないようにお願いします。民間人の避難誘導時は必ずマスクを装着させて、呼吸器官の検査を最優先にしてもらう必要がありますね」
「検査、検査ねぇ? 港の安全確保に動いてる連中が早いところ仕事を終わらせてくれることを期待するしかねぇ、か。民間人でもアマラ経絡を通して逃がしてやれりゃあ、少しは安心なんだがなぁ」
「出来ないことを嘆いても仕方ないでしょう。ちゃんと身体を鍛えている人間じゃないと、ほんの数分で意識を失うんですよ? 基地まで搬送する間に取り返しのつかないことになったら本末転倒ですから」
ほぇ~。アマラ経絡って、そんな感じの場所だったんスね~。
身体を鍛える、おそらくは保有しているMAGの量がある程度の水準を超えていないと意識を持っていかれるのかな。
そういう話を聞かされちゃうとさぁ~? 移動手段として確立するまでの犠牲とやらについて、あまり考えないようにしたくなるよねぇ~?
あとは……いよいよ追い詰められたらフェイスガード開けても即死の心配は無い、ってのはありがたい。いざとなれば御守りに偽装して持ち込んだソーマの小瓶を一気飲みできるからな。
もちろん工作兵の人の説明を無視するつもりはない。あくまで万策尽きるまで追い込まれたときの話だ。そもそもMAGを含んだ状態で光合成してるって時点でこの謎植物はどう考えてもヤベェだろ。
生体マグネタイトは人間の強い感情の動き、それも恐怖とかの負の感情のほうが強力なエネルギー源になる……みたいな設定があったはず。真・女神転生Ⅲでも似たような性質を持つ『マガツヒ』というエネルギーを絞り出すために拷問が行われていたし。
そんな物質を取り込みながら光合成する植物だよ? 人間の絶望を養分として青々と生い茂り可憐な花を咲かせます~なんて言われたら、そんなん女神転生を知らん人でも近付いたらヤバくね? ってなるわ。
…………。
…………?
え、ちょっと待って。
そのMAGって、何処から発生してんの?