メガテニストはディストピアでもヘコたれない。   作:はめるん用

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アンサング:5

「一応、挨拶の仕方は学んだが……どちらが貴方の好みだろうか? 特務少尉殿」

 

 本当はよくないんだろうけどね。いろんなところから部隊が派遣されてくるワケだし、階級に合わせた態度って組織が組織として運営されるためには大事だとは思うけどね。

 だが俺は敢えてこう言うとしよう。背中が痒くなるから同期の言葉遣いでお願いします、と。

 

 いや、まったく知らない相手ならともかくさぁ? さすがに見知った相手にですますありますで喋られると面倒でしかねぇわ。

 

「リーダーならそう言うんじゃないかとは思ってましたよ。ですが、せっかくですし1度くらいはちゃんと挨拶をしておくのも悪くないでしょう。 ──改めまして、マモル伍長でありますッ! よろしくお願いいたします、F8492特務少尉殿ッ!」

 

「同じく、ホノカ伍長であります。ご指導ご鞭撻のほど、どうかよろしくお願いいたします。なぁ、特務少尉殿?」

 

 異能を使うことができる、勝手知ったる頼れる仲間との合流ですわよ安心感がダンチで捗るゥ~ッ! たったそれだけのことでも、俺の心は嬉しさで9割ほど満たされてしまうのであ~るッ! 

 

 残りの1割? そりゃもちろんアライメントが異なる仲間を連れてほぼ確実に軍事国家の闇が隠されているであろう場所に戦いに行くってお膳立てに対して中指を突き立ててくたばれクソ野郎って言いたいな~って気持ちだよ☆

 なんの成果も得られないまま帰ることになったとしても、それが俺にとっては一番理想的な終わり方まであるで?

 

 なにが厄介って、コイツらタイプは違うけど分類するなら『ヒーロー属性』みたいなところがあるのが困る。手段は違えど困ってる人がいれば助ける性格してるワケだが……ハッキリ言おう。俺は要塞に取り残された人間はもう全員が手遅れだと思ってるし、その前提で動くつもりだ。

 

 前世の記憶から甦る数々の定番シチュエーションはもちろん、そもそも1度やってんだよ。見た目は普通の子どもでも、中身は全くの別物との戦いを。いやまぁ、正確に言うなら直接は戦ってないけどさ。

 えー、ともかく! マモルとホノカも似たような体験をしていれば別だが、そうでなければ説明したところで理解や納得が得られるか──違うよ~? 説明することそのものが俺の首を締める危険な秘密かもしれないんだよ~? ウソでしょ……。

 

 

「私たち以外にもDクラス出身者の戦闘員がそこそこ参加するらしいな。ヨモツイクサとの遭遇戦に慣れている我々なら、正体不明の敵との戦闘も心配ないだろう……だ、そうだ。

 軍の人間とは面白い冗談が言えるのだなと感心したよ。その言い方だと、まるでDクラス出身者ではない軍人たちは戦闘に慣れていない者ばかりのように聞こえるじゃないか、とな」

 

「設備の復旧や人命救助を担当する人たちの護衛も僕たちの任務に含まれていますので、単純にそういった人たちは戦闘よりも専門的な知識や技術に優れているのだと思いますよ」

 

「だといいがな。私たちDクラス出身者を集めて意気揚々と説明をしているヤツに対して、何人かの将校が冷めきった目で見ていたのも事実だぞ?」

 

「それは……まぁ、僕も正直なところそんなに重要な任務なら、もっとちゃんと教育を受けた正規軍人を中心にするべきなのでは? とは考えましたが」

 

 なーほーね? どうやらふたりの正規軍人に対するイメージはブタ玉のときに逃げ出した連中からあまり更新されていないようだな。

 俺なんかはメシテロ肉天との戦闘もそうだが、上官ふたりにテッセン曹長、それに新兵教育をしていた大尉さんなど頼れる人たちはバッチリ頼りになるもんだと考えを改める機会に恵まれたんだが。

 

 要するに、玉石混淆というヤツなんだろう。そしてそれはきっと、平和な世界だろうとディストピアだろうと組織が人間の集まりである以上どうにもならない問題だ。

 今回の作戦にも大真面目に民間人の救助を使命に燃えている人もいるだろうし、大真面目に要塞の奪還に尽力するべく備えている人もいるはずだと俺もわりと本気で信じてはいる。

 

 もちろん自信家の無能が芸術的センスを発動してチャンスをピンチに変えてくれるに違いないとも覚悟していますよ? 反論するヤツがいるなら逆に聞きたいよね、この手のシチュエーションでそういうアホが参加しない可能性なんて残ってると思うのかって。

 

 

 ◇◆◇◆

 

 

「デモニカスーツは2000年以上も昔、まだ人類がひとつの惑星の周辺に玩具のようなちっぽけな人工衛星を飛ばすことしか出来ないような時代から続く由緒正しいテラフォーミング装備です。

 大抵の環境には耐えられますし、デモニカスーツで対応できないような状況になっているのであれば、それはもう要塞を奪還するより解体して新造したほうが早いぐらいですよ。

 あぁ、そんなデモニカスーツですが弱点もありましてね。食事をするときにはヘルメット前面のカバーもシールドも全部開けなきゃいけませんし、排泄パックの使い心地はどれだけ改良を重ねても不評のままです。そこは諦めて、要塞のトイレが使えることを祈っててください」

 

 やっぱりトイレ問題は深刻かつ人類にとって永遠の課題なんやな……って。さすがは技術班、ちゃんとその辺りも日々研究してくれてるんだなぁ~。生理現象が一切考慮されていない特殊MAGコートの開発者たちにも是非とも見習ってほしい。

 

「それと、潜入作戦に参加する将兵全員分の新しい試作MAGコートが届いています。防御力よりも、デモニカスーツの中に着込む前提ってことで運動機能のサポートをメインに開発されたヤツのようです。

 今回の戦闘で使い心地が良ければ本格的な改良と量産計画が始まるらしいですが……テストをするならもう少し安全な環境で試してほしかったですけどね。

 カタログだけ読んで誰が納得したのか知りませんが、それでいきなり現場で使わせるなんて、技術屋としてはふざけるなって怒鳴り付けたいぐらいですよ。もちろんそんなことはしませんがね。自分はまだ死にたくないんで」

 

 なんとまぁハッキリと物を言うことで。俺は好きだけどね。下手に気を遣った結果、大事な情報が伝わらなくてあとから困るとか嫌だし。もっとも、世の中には知らないほうが長生きできる話もゴロゴロしてるけど。

 まぁ俺としては扱いに慣れているMAGコートよりも、今回が初体験となるデモニカスーツをどれだけ初見で使いこなせるかが問題なワケだが。なにせ知識も経験もサッパリだもの。

 

「道具なんてのは、誰がどう使ってもそれなりに効果があるように設計するモノでしょう。そんなことすら知らずに、やれ才能がどうだとか適性がこうだとか言って半端な代物を作るオカルト屋にはわからんのです。

 気休めにしかならないでしょうけど、Dクラスからの叩き上げである特務少尉殿ならきっと上手く使いこなせますよ。少なくとも式典に並んでいる、装甲の上からでも恰幅の良さがわかるような高級将校閣下たちよりは安心して送り出せますから」

 

 ありがとう、名前も知らないメカニックのお兄さん。何故かわからないけど生き残れそうな自信が出てきたわ。

 

 

 で、そのためにも携行できる武器もしっかり確認せねばならんワケなんだがね。とりあえず施設を破壊する危険性があるから銃火器の使用禁止ってのはアレか、例の上級大将閣下が押し付けてきた条件なのかな? 

 俺の声が聞こえたのか、イミナ中佐よりちょこっと豪華な階級章を身に付けたおば様がものごっつ渋い顔して天を仰いでいるあたり……うん、正解っぽいな。縛りプレイが加速して危険な領域に以下略だよもぉぉぉぉッ!

 

 あ、でもグレネードランチャーは使わせてもらえるのね。ふむふむ、閃光騒音弾とな? なんかパラサイト・イヴでそんな武器あったかもしれん。ライオットだかエアバーストだか忘れちゃったけど。

 あとは投擲用のナイフ類にサーベルやら斧やらハンマーやらの接近戦用の武器をご自由に、ね。宇宙世紀で宇宙要塞にハイテク装備してワープ装置使って潜入するのに戦闘方法は実に原始的だなオイ。いや、異能を使えることを考えると中世系ファンタジーに近いかも。敵もたぶん悪魔なワケだし。

 

「あとは……そうですね、戦闘に関しては特務少尉殿がプロフェッショナルかもしれませんが、それ以外の場面では情報屋の連中に従うようにしてください。

 自分たちも様々な薬液なんかを使いますが、中には臭いを嗅いだだけで肺が焼け爛れるような危険物もありましてね。個人が使う装備の開発やメンテナンスですらこれですから、宇宙要塞なんて人間なんか簡単に死んでしまうような物質も使われていることでしょう。鼻先が痒くなったからといって、うっかりシールドを開けたりしないでくださいよ?」

 

 ねぇ知ってる? そんな危険物がどこから噴出するかわからない場所を正体不明(推定悪魔)の敵が闊歩していて人造超力兵が暴走しているんだよ? 

 戦闘の影響で下手に壁の1枚壊れただけでも大惨事ガチャの始まりだな。いや、仮に悪魔が大人しくしてたとしても民間人の救出とか普通に無理だろコレ。

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