メガテニストはディストピアでもヘコたれない。   作:はめるん用

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アンサング:4

 さすがに記憶の中にかすかに残るデザインとは違う見た目ではあるが、渡された資料に写っている子ども受けしなさそうな地味で渋い雰囲気は実にデモニカスーツしてる。

 なんとなくエンジニアがプラズマカッターとかの工具で戦っている光景が脳裏に浮かんだが、人間の常識が通用しない化け物が相手という意味ではそこまで大きく違ってはいないだろう。

 

 

(ねぇ、コレ。大丈夫なの?)

 

 うん? ピクシーさんなにか気になることでも……あぁ、そうか。たしかに頑丈そうではあるけれど、これがダイン系の強力な魔法に耐えられるかは別問題だもんな。

 連発されたワケでもなく、頭に『マハ』が付かない単体をターゲットにした一撃だったのに。それでも余波でその場にいた軍人がほぼ壊滅状態まで追い込まれてるからなぁ~。破損した装甲が内側に捲れて内臓を貫いた、なんてことになったら簡単に死ねるかも──。

 

(そうじゃなくて。いや、それも大事なことではあるんだけど。そうじゃなくてね? こんな全身をガッチリ包むような装備して、アタシたちを召喚って……できるの?)

 

 え? 

 

(だって、アタシたち姿は見えなくてもモノには触れるのよ? 壁を通り抜けたりできないのはアンタも知ってるでしょ? そりゃ、いままでだってキッチリした服は着てたけど、あんなのスキマだらけなワケじゃない。

 そうじゃなくて、こんなにギチギチに硬そうな服で全身まるっと包んだ状態じゃあ──アタシたち、アンタの心の海から出てこれないんじゃない? このなんとかスーツってのにぶつかってさ)

 

 は~、つっかえッ! 辞めたら? デモニカスーツ。着用者の悪魔召喚を邪魔するとか、お前女神転生に登場する人間装備として恥ずかしくないの? 

 

(まぁジオ系とかは使えなくても、いまのアンタのMAGならスクカジャなんかの補助魔法ぐらいは中から使えると思うけど。

 それに外に出れないってことは、姿を見られちゃうことも無いってことだし。ちょっと窮屈ではあるけど、アンタにとっては安心して戦えるかもね~)

 

 神装備、降・臨ッ! やっぱり後にも先にもデモニカスーツしか勝たんわ~。パッケージにも使われる装備だけあって着用者のことを完璧に守護ってくれるとか誇らしくないの? 

 

 

 ◇◆◇◆

 

 

 さて、情緒のバランス調整も終わったことだしイミナ中佐から少しでも情報を引き出して生存確率を高めることにしよう。状況的に人造超力兵に関する質問をしても不審には思われないはずだ。

 

「うん? 聞きたいことがあるなら遠慮なく質問したまえ。もちろん私の権限とキミの階級に合致しない機密を教えることはできないが、今回は事情が事情だからね」

 

 ハッ! ありがとうございます中佐殿ッ! 

 

 では早速。過去にも人造超力兵が暴走事故を起こした事例はあるのか、それは最新型であるイザナミ式でも発生しているのか、このふたつについて教えていただきたいのですが。

 

「ふむ……。詳細については知らないが、佐官教育のときに聞かされた覚えがあるな。アラヤン式の事故から改良を重ねて設計されたのがオルギア式であると。

 イザナミ式に関しては、すまないがよくわからない。それこそ将官クラス、それも帝都惑星クニヌシや近辺の基地を任されているような者でなければな」

 

 いまの説明を都合よく解釈するのならこんな感じかな? 過去にも悪魔が実体化しアラヤン式人造超力兵が悪魔送還プログラムを起動したことがあり、その無差別攻撃の被害を受けて機能を排除して量産されたのがオルギア式人造超力兵である……みたいな。

 宇宙時代の過去話なんてそれこそ百年単位でも当たり前だろうし、詳細が残されていたとしても──帝都惑星に関係する人間、Aクラス帝国市民、少将以上の軍人、日本帝国魔導院。この辺りに関係している人間は例外なく警戒するべきか。少なくとも俺にとって危険なのは間違いないはずだ。

 

 

 おっと、考え事に没頭する前に誤魔化しておかんと。えー、つまり過去の事例を参考にして人造超力兵の正気を取り戻すのは不可能である前提で動くしかないワケでありますね。

 すまないなヤスツナちゃん。お前さんの姉妹を救ってやるのはちと絶望的かもしれん。もちろん可能ならば説得は試みるが、俺も死にたくないんでね。あまり期待はしないでくれ。

 

「──ッ!? 少尉殿……ッ! はい、いいえ特務少尉殿ッ!! そのお心遣いだけでも充分すぎるほどの僥倖でありますッ!! 少尉殿のようなお方に最期を看取っていただけるのであれば、姉妹たちも本望でありましょうッ!!」

 

 あ、痛い。ヤスツナちゃんのキラキラとした瞳の輝きがものスゴく痛いよ? 思ったよりも何倍も心にザクザク刺さるわコレ。あとどちらかと言えば俺のほうが看取られる側になる確率は高いと思うよ? 

 ヤベェなコレ俺ちょっと誤魔化す方向性間違えたクセェなオイ。下手するとなんか変なフラグとか立っちゃうかもしれんぞ。どうしよう、今度から特別にアラヤン式の人造超力兵をふたり副官として抱えていいぞとか言われたら。

 

「まぁ、優先順位だけは間違えないように頼むよ。ヤスツナ、F8492特務少尉と小隊との顔合わせの準備を。私はまだ彼と話すことがあるのでね」

 

「ハッ! 失礼しますッ!」

 

 元気よく返事をして部屋を出ていくヤスツナちゃん。ちょっとアホの子っぽい彼女もトリガーが引かれた瞬間にニコニコ笑顔で「これもみな、帝国の平和と未来のためなのであります!」とか言いながら襲い掛かってくるのだろうか。

 そんなヤスツナちゃんの背中に向けたイミナ中佐の視線は少し厳しいような雰囲気だ。これから話すことに関連しているのであれば、人造超力兵についての楽しくないお話が待っているかもしれないワケで。

 

 

「少尉。アレらは便利な道具であると割り切ったほうが身のためだよ。あぁ、勘違いしないでもらいたいのだがね、別にキミの心の在り方にケチを付けようという話ではない。

 過日、キミがトラブルに巻き込まれた資源惑星五○一番タタラに海軍の情報部の人間が……まぁ、キミの副官の遺体を回収しに行ったのだがね。もちろん原因の調査が主な目的だが、私とて真面目に働いている部下に少しぐらいは気を遣うことだってする」

 

 あー、うん。思うところはあるけれど、そうしてくれたなら俺は確実にイミナ中佐に恩義のひとつぐらいは感じたことだろう。

 どんな形であっても、祈りを捧げることで気持ちが楽になることもある。その部分だけはメシア嫌いの俺だって認めるところだし。

 

「陸軍もそれで我々の介入を終わらせることが出来るなら良しと考えたのだろう。共同で回収作業にあたること、そしてル号採掘基地に巣くうヨモツイクサどもがあまりにも危険であると判断した場合は中止することを条件にね。

 それで、いよいよ日程や人員、そしてヨモツイクサとの戦闘に備えた部隊編成を決めようじゃないかという段階で──日本帝国魔導院からの中止命令が出された。人造超力兵の回収及び調査は彼らが行い、勝手な行動をしようものなら私やキミを含めた関係者全員を国家反逆の意志があるものとして処刑するとまで言われたよ」

 

 おっふ。俺の知らないところで俺が処刑される可能性がフラフラ崖の上をギリギリ落ちそうになりながら進行していた件について。

 

「そんなことがあったものだからね、どうにも今回の要塞奪還作戦についても色々と疑い深くなってしまっているのだよ。なら具体的になにを怪しんでいるのかと聞かれると困るのだが……。

 ともかく、だ。件の上級大将閣下は皇帝陛下の血縁者とも縁があり『天使』の身分を与えられている人物だ。そんな人間が私物化していた要塞など先に説明した敵対存在以外にもどんな()()()が隠されているのかわかったものではない。

 わざわざキミを呼び戻したのも、その辺りに対しての備えという意味合いが強い。どうにか巧く調査隊の動きをコントロールし、そして無理だと判断したら適当な理由を付けてアマラ経絡を最大速度で逃げ帰り──あぁいや、情報を確保して速やかに帰還したまえ。調査隊の仕事は、必要な情報だけを、ただ持って帰ればそれでいい。賢いキミなら……わかるね?」

 

 了解であります中佐殿ッ! はいヤバいときは全力でトンズラこいていいって許可もらいました~、こんなに嬉しいことはないよね☆ そもそも実際に手の施しようが無くなったときに逃げる余力が残されているのかって問題はそのときになってから考えよう。

 それにしても……身分の話とはいえ、天使と呼ばれる存在が私物化していた要塞に俺はこれから乗り込むのか。それも悪魔が活動しているかもしれない場所に、民間人が取り残されているというオマケ付きで。ついでに人造超力兵に関する日本帝国魔導院の胡散臭い話を聞かされた後という変なフラグまで添えられましたよ? 

 

 懐に隠してあるソーマが俺にとっての末期の水になるかもしれへんな……。打つ手無しまで追い込まれたら、現地でMAG結晶体を大食いして派手に暴れたろ。なにやってでもゼッテェ死なねぇからな俺はァッ!!

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