メガテニストはディストピアでもヘコたれない。 作:はめるん用
苦楽を共にした仲間との別れ、そんなものを惜しむ暇なんて下っぱ兵士には存在しませんよ。ファンタジーやメルヒェンじゃないんですから。
少し寂しいとは思いつつ、そんなところで特別扱いされても変なフラグが立ちそうだしこれはこれでアリかなと納得することにした。コレオ伍長は頭ヒーホーだからともかく、真面目な軍人であるテッセン曹長は別れの言葉が予言に化けかねんからな。
アマラ経絡の移動は今回も平和に終わった。相変わらず真・女神転生Ⅲとは方向性の違う不気味さがあり、見えない何者かにまとわりつかれる感覚はあったけど。
ただ2回目ということで前回よりも心に余裕があるからなのか、連れていかれるというよりは単純に俺にしがみついているだけのように感じた。いや、それはそれでホラーしてるから嬉しくはないですよ?
ほかに気になることといえば、ヤスツナちゃんがバイオハザードに出てくる人語を話すゴリラが背負ってるようなガトリングを装備していたことぐらいかな。
なんでそんなゴツい装備をと聞けば、特務少尉殿の護衛を完遂するためでありますッ! と爽やかな笑顔で返された。そんなふうに言われたら、俺はありがとうと言うしかないじゃない。そのガトリングが活躍する事態がアマラ経絡内部で発生する可能性があったのなら教えて欲しかったけどねッ! いやマジでさぁ、便利なのは理解したけどできればもう通りたくないよアマラ経絡ぅ。
◇◆◇◆
「ご苦労だったね、特務少尉。キミがいろいろと活躍してくれたおかげで、気持ち程度の成果ではあるが海軍の利益へと繋がったよ。詳細について説明することはできないが……キミはそういう話を聞きたがるほうではないだろう?」
はい中佐殿ッ! 海軍所属の軍人として、組織と日本帝国に貢献できたのであれば本懐であります中佐殿ッ!
「結構。さて、正規の手続きを省略してまでキミを呼び戻したのには相応の理由があってね。現場の判断で臨機応変に動ける兵士がどうしても必要になったものだから少しばかり強硬手段を取らせてもらったよ。
実は、反体制組織の中でも大規模なグループの活動が目立つようになってきてね。自らを救世主であると嘯き秩序を乱す怪しからん連中なんだが……どうやら日本帝国宙域だけでなく、銀河各国でも無視できない被害が出ているらしくてね」
自らを救世主、ねぇ。つい最近そんな連中と戦ったばっかりですわ。もしかしてその大規模なグループとやらも、全体的に青色で統一されている集団だったりするのかしら?
「なるほど、陸軍でも被害が出ていたか。知っているのであれば話も早い。キミの任務はそのテロリストどもの手によって機能不全にされた惑星型要塞の調査だ。
もちろんキミひとりに要塞全てを見回れなどという無茶は押し付けないよ。調査隊そのものは相応の規模で派遣される予定だからね」
へぇ~、そりゃありがたいや。これがゲームやラノベのテンプレなら重要な任務とかって前置きがあるにも関わらず、何故か経験の浅い主人公と取り巻きの女の子だけのチームで頑張らなきゃいけなくなるところだ。やっぱモブの立ち位置こそが最高にして至高だわ。
それで中佐殿、本命は何処にあるんですかね? それなりの規模とやらの作戦行動に、権限があやふやで指揮系統に乱れを引き起こしそうな特務少尉なんて異物をわざわざブチ込むってんですから、そのリスクに見合うだけの仕事を俺に命令する腹積もりなんでしょ? 少なくとも俺ならそれぐらいは考えるぞ。
「賢い部下は会話が楽で助かるよ。莫迦は話を聞かず理解しようともしないのに文句だけは多いから困ってしまってね。それが無駄に階級だけは立派な相手だったりすると面倒で面倒で仕方ない」
ほ~らね☆
「さて、理解力のある部下にこそなるべく丁寧に説明してやりたいところだが……そうだな、先に結論から言ってしまえば無能な上官の指揮で将兵たちの命が無意味に消費されないよう下準備をしてほしいのだよ」
中佐殿の詳しい説明は次の通りだ。
Aクラス帝国市民出身の上級大将が私物化していた要塞がテロリストに襲撃をされちゃったよ!
そしたら閣下は自分の安全だけ確保してスタッフや民間人を見捨てて逃げ出したよ!
でも閣下は偉い軍人さんだからテロリストの卑劣な襲撃に屈することなく奪還してみせるって張り切ってるよ!
人員や装備を集めて準備するだけでも時間がかかるけどそんなのはお構い無しに3週間以内に奪還するって宣言したから安全よりスケジュールを優先するよ!
だから要塞内部に残っているテロリストのことはもちろんスタッフや民間人の状況がわからなくても兵士たちを特攻させるよ!
あとは全部終わって安全が確認できたら上級大将閣下自らが要塞に乗り込んで勝利宣言をして終わりだよ!
以上ッ!
「……と、いうワケだ。実に頼もしいことだろう? 説明を聞かされたキミも頭が痛むかもしれないが、こんなことを上手く誤魔化しながらそれぞれの部下たちに説明しなければならない上官たちの立場と苦労も少しでいいから理解してやってほしい。
それで、だ……何人かの将校が言葉を尽くしてなんとか調査隊を派遣することを認めさせた。万が一のことがあれば責任を取って腹を斬ることを条件にアマラ経絡の使用許可も得ているので、潜入そのものは苦労しないはずだよ。潜入するまでは、だがね」
そうだね、潜入した先でテロリストに出待ちされてる可能性は特盛だよね。だって俺がテロリスト側なら真っ先にアマラ経絡の出入口は制圧するもん。
別に武器を持って待ち構える必要すらない。地雷のようなものを仕掛けるか、毒ガスのようなものでエリアを満たしてもいいし、逆に真空状態にしておくのもアリだろう。地上では難しいかもしれないが、宇宙要塞ならそれぐらいのことはできるんじゃないかな?
「もちろん部下を死地へ送り出すのだ、最大限のサポートは行うよ。アメリカ星団国が中心となり銀河各国が協力して開発した特殊兵装『デモニカスーツ』の比較的新しいモデルを調査隊全員に預けることが決定している」
デッ!
モッ!
ニッ!
カッ!
スゥゥゥゥトゥッ!!
フゥ~↑↑↑↑ ここに来てテンション爆アゲ要素キタコレッ!! 興味の無い人にはダサく見えても好きな人にはたまらないゴツゴツしたあのデザインに近いと嬉しいなぁ~ッ!
というか共同開発ってことは外交は普通に良好なのかな? こんな世界観じゃあどの国も似たり寄ったりの格差社会してそうだけど。スラム街ならぬスラム惑星とかスラムコロニーみたいなのもあったりして。
「単純な防御力に優れているだけでなく、環境変化への対応も期待してくれていい。放射線などの──あぁいや、なんと言えばいいかな。とにかく人体に有害な様々な物質からキミを守ってくれるはずだよ。
ただデモニカスーツの性能を過信はしないでほしい。脱出してきた兵士たちが言うには、ヨモツイクサとは違う正体不明の何者かに襲われたそうだ。
この正体不明とは言葉通り、姿がハッキリと視認できないという意味らしい。一応、ソレがいるであろう場所は景色がわずかながら歪んで見えるらしいのだが……戦闘中に呑気に目を凝らしている暇などあるまい」
デモニカスーツと名付けられた装備を身に付けて環境が不明の戦場で見えない敵と手探りで戦うのか……。なんだかそれだけでゲームが1本作れそうな気がするね! なんとなくその正体不明の敵は悪魔かもしれないって予感があるんだぜ!
「それともうひとつ。テロリストどもが何かしらの新兵器を開発したのかわからないが、要塞に配備されていた人造超力兵が暴走しているらしい。
手当たり次第、それこそテロリストも軍人も件の正体不明の敵も民間人も関係なく殺し回っているそうだ。よってヤスツナの同行はアマラ経絡内部に限定される。すまないが、突入支援は許可できない」
は~い神ゲーの雰囲気匂わせから俺だけ超絶難易度1発即死トラップ満載のクソゲー仕様が確定でぇ~すッ! 正体不明の敵の正体は99割の確率で悪魔に決まりですね本当にありがとうございますチクチョォォォォッ!!!!